キマリノジュリツ
ある日、旅人が訪れたのは、木々に囲まれた村だった。
高く伸びる木々の枝が日の光を多く遮り、枝葉の間から溢れる程度しか光源の無い、良く言って綺麗、悪く言って薄暗い道を抜けると、家々の建つ広場のような場所にたどり着いた。
「あら? アナタ、旅人さん?」
旅人に気づいた女性が、近づいて声をかけてくる。
はい、こんにちは 旅人は頭を下げて挨拶をした。
「ちょうど良い時に来ましたね旅人さん、今から儀式が行われるんです。良かったら見ていってください」
儀式ですか、それはいったいどういうものなのですか? 旅人は首を傾げる。
「この村のキマリを決めるんです。ほら、そろそろ始まりますよ」
女性が指差した先には一軒の家があり、今まさにそこから数人の村人が現れた。
最初に出てきた、知的な雰囲気を持った白髪の眼鏡の男性が口を開く。
「本日、新たな村の決まりが5つ制定されました。これより、ジュリツの儀を執り行います」
ジュリツの儀……初めて聞いた言葉を旅人が呟くと、家から出た人々が移動する後を見物していた村人が付いていった。
旅人もその最後尾から付いていくと、木々が囲うように立つ何も無い場所へとたどり着いた。
「これより、ジュリツの儀を行います」
白髪の男性が告げると、共に家から出てきた5人の男女が前へと出て、手に持っていた何かを地面へと埋め、土を被せた。
男女がそこから離れる。
次の瞬間、二本の木が立った。
本来長い年月をかけて育つ樹木が、まるで元々そこにあったかのように一瞬の内に時を経た木が、そこに立っていた。
その光景を見た、白髪の男性は、
「今回のジュリツの儀、決まりとして樹立されたのは2つとなりました。今よりこの2つは村の決まりとして樹立され、守らぬものは罰せられます。内容は明日配布致しますので、本日はこれを持って、ジュリツの儀を終了と致します」
男性が去って行くのと同時、周りで見ていた村人も解散して散り散りになった。
なるほど……ジュリツの儀、ですか 旅人が納得していると、先ほどの女性が隣に立った。
「面白いでしょう? この村の決まりは、種を植えて樹が立ったものだけがなるのよ。この村が樹に囲まれてるのはその為、樹の一本一本が、この村の決まりなのよ」
女性の言葉に、旅人は、なるほど と納得して頷いた。
ある日旅人が訪れた村は、多くの木に、
沢山の立つ木に
ジュリツの儀で植えた樹にジュリツの儀で立ったキマリに
樹立された決まりに、囲まれていた。
決まりが村に反映されるか、村で決まりが樹立されるかは、苗が樹立するかどうかに託されている。
ジュリツされたものが、樹立され、この村は樹立された決まりに囲まれているのです。
旅人さん、前回よりほんの少し長めにをお送りします。
最初に書いた方と比べて、書き方が少し変わっていて、短くなっているのも感じますが、前と変わらずに楽しんでいただければ幸いです。
感想及び何か一言、お待ちしています。
それでは、