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13話 再び、未知の世界

 

 翌日。

 僕は睡眠不足のまま、旧校舎へ向かった。

 原因は言いたくない。


「ねえ、もっと速く漕げないの?」

「だって……」


 見えないことを良いことに、僕たちは自転車で二人乗りをしていた。

 重さがあるってどういうことだ。

 幽霊じゃなくて、透明人間かよ。


「なにか言った?」

「なんでもありません」


 そうしてやっと着いた裏門。


「あ、お尻が痛い。次からはクッション用意してね」


 また乗る気かよ。


「あ、うん」


 裏門の鍵を開けて、忍び込む。

 あの世界から、ずっと持ち歩いている鍵は二つ。

 団地の鍵と、なぜか裏門の鍵も。


 以前、朽木先輩――いや、今は笠井淳子から預かったものだ。


「相沢くんの家の鍵だよ」


 そう言われて受け取ったのが、三ヶ月前。

 あのときのことを思い出し、ふと笑ってしまった。


 朽木先輩が住んでいた団地の家が、僕の家になった。

 入れ替わってしまったことに、当時の僕はパニックになり、彼女に慰めてもらったんだっけ。


「なに笑ってるの、キモチワルイ」

「行こう」


 僕が前を歩く。

 これも変わったことの一つだった。


 旧校舎の二階。

 木造建築の古い校舎で、床が軋み、埃っぽさが鼻を突く。


 廊下の突き当り。

 案内板も、プレートもないドアの前で立ち止まる。

 すべてが始まった教室。


 ぐっと来るものがあったが、息を吐いて堪える。


「入るよ」


 声に出してドアを開けた。

 これも以前とは違う。

 彼女が先で、僕が後だった。


 入室すると、ムズムズする。

 古本屋特有の匂い。

 何も変わらない。

 図書室もどき。


 廊下側には窓。

 他の壁には腰の高さの本棚が並び、本が詰まっている。

 そして、天井と壁のあいだに視線を移したときだった。


「え、なんで?」


 声が響いた。

 僕は咄嗟に、彼女を見た。

 僕と同じだった。


「どうして、絵が……」

「すべて揃っている……」


 あの世界では、1989年から続いたこの壁の絵が、五箇所だけ抜けていた。

 空白だった絵から僕はヒントを得て、謎を解いた。

 だが、今は違っている。


 何度見返しても、連綿と続いている。

 いや、継承されている。


「これって、僕が壊したせい?」

「……そう、だと思う」

「こんな未来、あった?」


 笠井淳子は首を振る。

 やはり、この世界は歪んでいる。

 後悔と葛藤。

 逃げ場のない感情が泥のように溜まっていく。


 歯車がギィと音を立てたような気がした。


「どうなってしまったんだ……」

「……分からないわ」


 見ると、彼女は震えていた。

 知らない。

 だから、恐ろしいんだ。


 僕たちは、未知の世界に足を踏み入れたようだった。


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