表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

読んでいただきありがとうございます

アンジェリカの虜になった僕は勉強も剣もマナーもダンスも手を抜かず頑張った。商会を大きくして安心して暮らして貰おう。

いずれ外国へ旅行に行くのも良いな。何処に行こうか。

いやそれより女の子の喜びそうな王都の店やレストラン、カフェやドレスショップも知っておかなくては話にならない。



学院で人脈作りも大事な仕事だ。皆将来の貴族家当主や宮殿で高い地位に就くのだろうから。








僕の見目は女子受けするらしい。アンジェリカという婚約者がいるのに近寄って来ようとする者が後を絶たなかった。まあ興味が無かったので無視をしていたけど。



僕達が教室を移動しようとして二人で歩いていた時、目の前で転びそうになった女子生徒がいた。咄嗟に身体が動き助けてしまった。


「あ、ありがとうございます。慣れなくて前をよく見ていませんでした。すみません、助かりました」


僕の目をしっかり見てお礼を言った女子生徒はかなりの美少女だった。

アンジェリカが清楚系なら彼女は年の割に色気のある美少女だと頭の片隅で思った。


学院中の男子生徒が注目しているらしい。隣国からの留学生で卒業後は結婚するので、箔付けの為にやって来たとか、見聞を広めるためだとか色々な噂があった。


 「噂の人ね、どう思った?」

アンジェリカが不安そうに聞いてきた。

「別にどうってことないよ、僕が見てるのはアンジェリカだけだよ」

「そう、それなら良かった」

ほっとしたように笑うアンジェリカが可愛かった。



アンジェリカはさらに綺麗になった。金色の髪は緩くウェーブし瞳はぱっちりし唇は紅を差さなくても赤くぽってりとして惹きつけられた。


後一半年で彼女と結婚できる。今までも一緒に勉強したりオペラを見に行ったりお洒落なカフェでデートしたり楽しい婚約者時代を過ごした。彼女といると楽しい。

このまま順調にいくのだとその時の僕は思っていた。



セリーヌが近づいて来るまでは。



「こんにちは。この間は助けていただき有難うございました。彼女さんがいらっしゃるから中々お礼が言えなくて」


アンジェリカがいても礼くらい言えるだろう、変なやつ。それに彼女さんなんて言葉づかい可笑しい。


「彼女さんではなくて婚約者だ。礼は一度言われた、もう良い」

「卒業したら結婚されるんですか?私もです。会ったことがない人にもうすぐ嫁ぐかと思うと変な気持ちです。私侯爵令嬢なんですけど庶子だからあまり可愛がられていなくて変な時に留学させられてしまいました」

「そうか、でもそれが何か?」

「親切な方だからお友達になっていただきたかっただけです」

「女子と友達になればいいじゃないか。私では友達にはなれない」

「外国から来ているので皆さん打ち解けてくださらなくて」

「こんなふうに自分から声をかけたらいいんじゃないか」

「やっぱり優しい方ですね、思った通りです」

「婚約者が見ると悲しむ。話しかけないで欲しい」

「いらっしゃらない時なら良いですか?見られなければいいですよね」

「もうすぐ結婚するんだ。変な噂が出ると困る」

「こっそりと見られないところで声をかけさせてください。寂しいんです」


うるっとした目で下から見上げられ思わず頷いたのが間違いの始まりだった。



何処で見ているのだろう、必ずアンジェリカのいない時に声をかけてきた。

男子だけの剣の練習の後が多かった。タオルや水まで持って来る。

「クロード、アンジェリカ嬢という婚約者がいるのにセリーヌ嬢まで弄ぶつもりか?」

「セリーヌはそんなんじゃない。勝手に近づいて来て困ってるんだ」

「ああ?呼び捨てじゃないか。どっちが本命なんだ?婚約破棄するなら俺が立候補しようかな。良いよなアンジェリカ嬢清楚系で。いい奥さんになりそう」

「アンジェリカと別れるつもりはない」

「じゃあ、セリーヌ嬢とは別れろよ。良いな、泣かせたら俺が貰うし狙ってる奴は多いんだ」


セリーヌはあと少しで隣国へ帰る。鬱陶しくて仕方がないが近寄るなと言えば泣き出す。


留学の思い出に何か買いたいというので街に付き合わされた。結局ブローチを買わされカフェにも行った。

皆の憧れる美少女に言い寄られいい気になった罰がこれだ。


いつから言いなり男子になったんだ俺。アンジェリカが泣いているに決まってる。泣かせたいわけじゃないのに。これからはきっぱりと断ろう。


反省してアンジェリカに愛を誓い直そう。決して裏切ってはいないと言おう。






※※※※


アンジェリカに別れを告げられた。ソワレ伯爵が乗り込んできた。浮気をしていると思われていた。もう死んでしまいたい。俺の親も火遊びだと思っていたらしい。誤解だ。ソワレ家との取引がなくなる?アンジェリカを泣かせた罪を償えってことだ。



あの時ちょっといい気になったばかりに家を潰す騒ぎになってしまった。いやきっと潰れる。ソワレ家を甘く見ていた我が家が全面的に悪い。

御免父上、母上。出来の悪い息子で。きっぱりとセリーヌを断れなかった俺が全て悪い。心の底に驕りがあったんだろうな。政略だけどアンジェリカは確かに俺のこと好きでいてくれた。離れていかないと思ってたんだろう。愛していたのはアンジェリカだけだったのに。傷つけて泣かせた。最低だ俺。



いつか何処かで会うことができたら裏切っていなかったと伝えられるだろうか。やってたことは許してもらえないな、流されるままだったもんな。多分平民に落ちるから会う機会さえなくなるよね。爺さんになるまでに伝えることが出来たら奇跡だと思いたい。手も握ってないのに押されっぱなしで情けなかった。


近づけていたのが罪だと何で思わなかったんだろう。ずっと女子生徒には気をつけていたのに。



両親に謝ろう。随分迷惑をかけた。縁を切って貰おう。やり直しの人生として地方の役人試験を受けてみようか。それで両親に仕送りをしよう。コツコツ生きていけばこの罪が償えるのだろうか。



セリーヌを助ける前の瞬間に戻れるなら死んでもいいな。もう決して助けたりしない。計画的だったと今では思う。あれが運命が狂い始めた地獄の瞬間だったのだから。


あざとい女子が書けていますでしょうか?クロードしっかりしろと言いたくなります。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ