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短編集

神輿

作者: 豆苗4

 机の前に座ってじっと待っている。神輿の到来を。確率が確率を呼ぶ。もぐらももぐらを呼ぶ。足場が崩れたって昨日までそこが足場だったから安全だ。そんな戯言いつまで続ける気だ。無論いつまででも。十二日後の東京タワーを足蹴にしながら進む。上から見た景色は絶景だ。では下から見た景色は? アホウドリの羽が落ちている。白い。近場の白旗より。切れかけの豆電球より。


 砂浜をしゃくしゃくと歩く。犬が人とボールで遊んでいる。街はようやく目覚めようとしている。明かりがちらほらとつき始めた。十字路に人影が増え始める。舗装された道路。規則的な信号機。ヘッドライトに照らされた車の後部タイヤ。


 やんわりと逃避せよ。あぶれた渡し船にはシロクマが乗り降りする。人々は眺めることをしない。胃袋はオオカミをひと飲み。赤いフードをまとってお婆さんを従える。取り残されるのは行列から切り離された最後尾。レモネードを求めて辺りを彷徨いている。公衆電話に永遠に「もしもし」と言い続ける若い母親。床に散らばっている十円玉は? 受話器は右耳と左耳と正面に3個? くしゃりと潰れてしまった落ち葉。川に水を張るのは4分音符が堕落してから。


 神輿がやってきた。盛大な掛け声と共に。顕現させようではないか。手作りのマフラーを。白くて白いマフラーを。ゴミの山から錆びた遺物の残骸を。天にも届かんばかりの立派なヒノキを。太ければ太いほどいい。丸ければ丸いほどいい。ありふれた街並みを、平凡な道々を、取るに足らない彩りを、ちっぽけな歴史を。ひとつ残らず全て!

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