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私はお皿に手を伸ばした。
まだたった一日だけれど、ここの人たちは
私にあんなことをしないと思えるようになっていた。
指先がベリーに届いて、ベリーの冷たさが指先に伝わる。
その冷たさに驚いたのか、それとも本当に指が届いたことに驚いたのか
自分でもわからない。
つまみ上げた小さな赤い実は、誰かに叩き落とされることもなく
踏みつぶされることもなく私のもとまで届く。
思い切って口に入れたベリーからじゅわっと果汁が飛び出す。
甘さとちょっとのすっぱさが口いっぱいに広がる。
ぶどうはベリーよりも瑞々しくて
お嬢様が自慢していた果実水とはこんな味だろうかと思った。
ふたつ、みっつと食べていくうちに
お皿から減ってしまった果物に手が止まった。
これを取っておけたら、明日か明後日、もう少しだけ味わえるかもしれない。
残しておきたいことを伝えると、メイドさんの一人が部屋を飛び出した。
メアリーさんは後ろを向いてしまった。
天使様は胸を押さえて深呼吸したあと、扇子を掲げたまま笑った。
「まだあるから、それは今食べておしまいなさい」




