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優しい声が呼んでいる。
誰かが頭を撫でて、そっと揺り起こされた。
全身がぽかぽかと温かい。
身じろぎすると、ふかふかのやわらかいものが一緒に動く。
なんだろう、と考えるうちに一気に目が覚めた。
慌てて飛び起きると、そこには昨日と同じ天使様が立っていて、優しく笑っていた。
「よく眠れたかしら」
窓を見ると昨日は閉められていた織物の緞帳が開かれ、外から日差しが入っている。
朝日ではない。
もう高く昇った日の光だ。
大変なことをしてしまったと思った。
働かせてもらうはずが、こんな立派な寝台で寝てしまった上に
寝坊して起こされるなんて。
慌てて寝台から飛び降りて床に跪く。
「もうしわけありません!」
ああでも、床に降りたのは失敗だっただろうか。
白い夜着が汚れてしまっていないだろうか。
下げた頭の向こうに、天使様の衣装の裾が見えた。
「では、そうね。罰として、今日はメアリーの言うことを聞くのよ」
見上げた天使様は、やっぱり笑っていた。
でもそれは、奥様やお嬢様とは違っていて。
なにが違うのか言い表すことは出来ないけれど。




