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今度は大きな浴槽に入るよう促された。
浴槽にたっぷりと張られたお湯からも良い匂いがする。
きっと香油が落としてあるのだ。
お湯は薪をたくさん使うから贅沢なことのはずなのに
さらに香油まで垂らしたお湯なんてとても自分が入って良いものだとは思えない。
躊躇っているうちに、天使様が言った。
「ちゃんと肩まで浸かって、30数えるのよ」
お湯にはあまり良い記憶がない。
奥様やお嬢様の入浴も仕事ではあったけれど
お嬢様の機嫌を損ねれば浴槽に頭を押し込まれたこともあった。
もし、もし、言われるがままにこの浴槽に入って、沈められたら。
「ゆっくり、息をして」
天使様の声がした。
「そう。吸って……、吐いて……」
天使様は、衣装の裾が濡れてしまうのに、私の横に膝をついた。
「大丈夫。浴槽の底には布を敷いてあるのよ。滑ったりしない。さあ、このまま手をつないでいるわ」




