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朝、夜明けより早く起きて水を汲む。
厨房に火を起こしてお湯を沸かし
旦那様たちが起きるまでにお茶を用意しておかなくてはならない。
前に間に合わなかったときは酷く叩かれた。
それでなくても、旦那様や奥様の機嫌が悪ければ
廊下のすみにいるだけで蹴り飛ばされた。
お嬢様は機嫌が良ければ私を転ばせて遊び
機嫌が悪ければ本を投げつけてきた。
旦那様たちの機嫌をうかがいながら
大理石の玄関広間や窓を掃除しなくてはならない。
私にはもう、なにもない。
前に持っていたものがあったはずだけれど
いつの間にか全部なくなってしまっていて
それがどうしてだったのかもわからないまま漠然と生きていた。




