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「今日は踊りのお稽古があると伝えていたはずですわ」
お姉様は私だけを見ながら歩み寄ってくると
私の腕をつかんでいる男子生徒の手に扇子を置いた。
一瞬、男子生徒に見やったものの
男子生徒が手を放すや否や、すぐに私に視線を戻した。
「まだ基礎も覚えていないのですから、遊んでいる時間なんてなくてよ」
「はい。申し訳ありません、お姉様」
お姉様は男子生徒が何か言いかけるのを無視して
私を促して歩きだした。
馬車に並んで乗り込むまでお姉様は一言も話さなかった。
けれども、馬車が動き出すと、私の肩に腕を回して
男子生徒につかまれた部分を繰り返しさすった。
「怖かったでしょう」
私は、ようやく息を吐きだした。




