泥棒たちは窮地に陥る⑥
「ご心配なく。監禁といっても、刑務所の独房のようなところに入れるわけではありません。清潔な環境で、食事も用意します。大人しくしていればそれなりに快適に過ごせる場所ですよ」
「信用できない」
「それはこちらとしても同じです。というより、あなたがたが先に裏切ったのですよ。わたくしだって、本当であればこんなことはしたくないのです」
「どうせあんたは、仕事をしてもしなくても、私たちを殺すつもりなんでしょう?」早苗は笑いながら言った。少し、やけっぱちな気分だった。
「そんなことはございません。殺すつもりだったら、わざわざ人質をとったりしないですよ。先ほども言いましたが、これは保険なのですよ。もっとも、あなたがたがさらにわたくしを裏切るようなことがあれば、話は変わってきますがね」
オールバックの男がスーツの内ポケットに手を突っ込んだ。そこから自然に、さもあたりまえかのように拳銃が取り出される。それをミクルに突きつけながら、近づく。ミクルは顔を強張らせながら、静かに両手をあげた。
大川原の口調は冷静だった。前回のように声を荒げたり、乱暴な言葉で脅すようなことはしなかった。学習したのか、それともなにか魂胆があるのか。ただ今回ばかりは、大川原が優勢なのは明らかだった。ミクルを人質にとられてしまっては、早苗たちとしては手足を縛られたも同然だった。その余裕が、大川原に鷹揚な態度をとらせているのかもしれない。
「ともかくですよ、このお嬢さんが無事でいてほしいのなら、わたくしを裏切らずに仕事をすることです」それから大川原は思い出したように、「あと、当日はわたくしの部下を増員して、合計六名のチームで行動してもらいます。まあ早瀬のことは心配していませんが、万が一、縛られて放置されても困りますので」
早苗は唇を噛んだ。これで、すべての計画はご破算となってしまった。大川原を出し抜くための作戦が、逆に出し抜かれる結果となってしまった。怒りを込めた目で、大川原を睨む。それから、早瀬のほうを見た。彼は腕を組んだまま壁に寄りかかり、苦笑とも失笑ともつかない笑みを浮かべていた。
「こんなことして、情けなくないの? あんた、そうとう執念深いわね」早苗が大川原を睨みながら言った。文句や挑発の一つでも言ってやらないと、やってられなかった。
「この執念深さのおかげで、ここまでやってこれたのですよ」
「嫉妬心も深そう」
「嫉妬心は、競争原理の社会で勝ち抜くためには必要なものですよ」
「そうね。そうじゃないと、佐々川から愛しのキングを取り返せないものね。もしかして、佐々川にキングを寝取られでもしたのかしら」
大川原がこめかみに血管を浮き上がらせた。表情は穏やかだったが、早苗の挑発に怒っているのは明らかだった。




