泥棒たちは下見をする⑦
「キングは絵が好きだから、大川原に出資したのね」早苗が言った。
「そういうことだ。大川原のほうがだいぶ年上だけどな。そのときからキングは力があって、金もあった。大川原が画商として成功したのは、キングの後ろ盾があったからなんだよ」
「大川原の正体はわかった。で、今回の仕事の目的はなんなの?」
「くどいようで、こういう聞き方はあまりしたくないんだが」と言って、大熊は咳払いした。「佐々川という男は知っているか?」
「今度は誰よ」早苗がうんざりした表情をする。
「今度の男は、大川原のライバルだ」そこで大熊が、にかっと笑った。今日はじめてできる、嬉しい報告だった。「佐々川という男も画商だ。もともとは文化庁のお役人だったんだが、官僚を辞めて画商になったんだ」
「それも、キングが関係しているの?」ミクルが純朴な目をして訊ねる。
「もちろんだ。そもそも、キングが引き抜いたんだ。文化庁は小さい省庁だが、それなりに利権はある。役所とパイプを持つ男が欲しかったんだろう。佐々川にもキングが出資して、画商として独立させたんだ」
「なんだかキングさんは、やけに芸術文化の振興に熱心なようですね」うなだれていた及川が、ようやく声をあげる。
「まあ、絵が好きってのは本当だ。気に入った人間を画商にするのも、自分が欲しい絵を手に入れやすくする狙いもあるんだろう」
「で、その佐々川氏は今回の仕事にどう絡むわけ?」早苗が大熊を見る。
「さっき俺は、佐々川は画商だと言った。だがそれは、正確じゃない。いま現在も画商だが、基本的にはアートアドバイサーとしての活動を主にしている」
大熊の言葉を聞き、早苗はピンと来た。アートアドバイザーなるものが、どういう仕事をしているかを早瀬から聞いたことがあった。
「今回の企画展は、佐々川が考案したものね」
早苗がそう言うと、大熊が嬉しそうに笑った。「さすが、飲み込みがはやいな。そうだ、このブルターニュの情景と題された企画展、俺たちの狙う企画展は、アートアドバイザーの佐々川が計画したものだ」
一同が顔を見合わせた。そこまで言えば、大川原の目的は誰だって見当がつく。
「僕たちを利用して、佐々川さんの企画展を潰そうとしたんですね」及川が溜め息を吐く。
「そうだ。だが、それだけじゃない。本当の狙いは、キングから佐々川を切ることだ」




