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泥棒たちのすり替え大作戦⑦


「ま、待ってください! 私はそんなこと、していません。こいつに絵を描けと命令した覚えもありませんし、そもそもルーベンスはこいつが持ってきたんですよ」


「だが、実際におまえはこうして偽物を持ってきたじゃねえか」


 だんだんと話が飲み込めてきた。おそらく、早瀬が謀ったのだ。奴が自分を陥れるために、偽物の絵を売ろうとしていると見せかけたのだ。きっと、この絵も奴が描いたものだった。


 だが同時に、疑問も浮かぶ。いったいなぜ、奴はそんなことをするのか? あいつはアンティーブ岬を持って逃げたはずではなかったか。もしかすると、狙いはルーベンスか? 本物のルーベンスを手に入れるため、奪われた復讐としてこんな手の込んだことをやっているのか?


「す、すり替えられたんです」大川原の頭に閃くものがあった。声を大にして叫ぶ。「こいつは、私を陥れようとしているのです。私は本物のルーベンスの絵を見ました。奴はそれを手放したくなくて、自分で描いた絵を本物と入れ替えたんですよ。きっと本物は、こいつが持っています」


 大川原は早瀬を指さし、唾を飛ばしながら喚いた。


「おい、早瀬、おまえ本物を持ってるのか?」キングが早瀬に訊ねる。


「私は命令されて絵を描いただけです。本物の絵なんて存在しませんよ。それに、あの男が私に対して命令をした証拠の音声も残っています」


 証拠の音声だと? 大川原はさらに目を見開いた。鼻の穴も膨らみ、熱い息が出る。


「おい、早瀬、いい加減にしろよ。おまえ、恩を忘れたのか? 刑務所で落ちぶれているおまえを拾ってやったのは、誰だと思ってるんだ?」


「私はただ、あなたの命令に従うことに良心の呵責を感じただけです」


「なにが良心の呵責だ。すべて、おまえが計画したことだろう。証拠の音声なんてのもデタラメだ。そんなもの、あるわけがない」


「それなら、聞いてみますか?」


 早瀬が片手を上げた。そこには、ボイスレコーダーが握られていた。早瀬が再生ボタンを押すと、小さい環境音のようなものが流れてきた。それから、大音量の大川原の声が聞こえてくる。


「俺の言った通りにやりゃあいいんだよ!」


 それから、早瀬の声が聞こえてくる。「偽物の絵を描くことなんて、できません。ましてや、キングを相手に」


「あんなやつには、偽物を渡しとけばいいんだよ!」


「裏切るのですか? これまで散々、お世話になったじゃないですか」


「金さえ手にはいりゃあ、こっちのもんだ」


 音声の再生が終わった。部屋の中にしんとした、静かな空気が流れる。


「ち、違うんです」大川原の声は震えていた。「きっとそれは、捏造です。私との会話を切り取って作った、加工された音声で・・・」



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