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泥棒たちは再び作戦を練る⑦


 及川が金切り声を上げるも、里美は「でも、あなたたちも金庫から盗んだんですよね?」とにべもない。


「早苗、どうする?」早瀬はとなりにいる早苗に訊ねた。早苗は目を閉じ、額を叩いて必死に考えている。


 早苗は頭を働かせた。里美には助けてもらった恩もあるし、彼女のもとに絵を取り戻してやりたい。それと同時に、大川原を始末して自分たちの身の安全も確保したい。この両方を実現できる良い策はないかと、頭の中の思考を張り巡らせる。


「どうすれば大川原を潰せる?」ミクルが早瀬を見て訊ねる。


「さっきも言ったが、絵を盗んだだけではダメだ。大川原の失点にはなるだろうが、手を下すまでには至らない。もっと強烈に、キングの怒りを買うように仕向ける必要がある」


「そんな方法、あるの?」


 ミクルが嘆くようにそう言ったとき、早苗が口を開いた。「すり替えるのよ」


「すり替える?」早瀬が訝しい顔で言う。「美術館でやった作戦と、同じことをするのか?」


「そうよ。大川原の自宅に侵入して、金庫にある絵を偽物とすり替える。そして大川原が偽物の絵を売ろうとしたと見せかけて、キングの怒りを買うように仕向ける」


「確かにそれなら、すべてうまく収まりますね」及川が拳で手のひらを叩いた。「そうすれば里美さんのもとに絵は戻るし、大川原さんはキングさんの怒りを買って、腕や足を切り落とされて処刑されます。そうなれば僕たちも安心できるし、万事丸く収まりますね」子供のように、無邪気な表情で笑う。


「確かにそれは良い案だね」ミクルもうんうん、とうなずく。


「大川原さんがキングさんに絵を売るのは、いつなんですか?」


「明日だ」早瀬が短く答える。「明日の正午過ぎに取引することになっている。場所は、キングの自宅だ」


「今日、大川原さんは家にいるんですか?」


「あの男は仕事で地方に出張している。自宅に戻るのは明日の午前中だ」


「それじゃあ、さっさと準備して大川原さんの家に行きましょう」及川がはりきった声を出す。


「でも、偽物の絵はどうするの?」そこで里美が、フロントミラー越しに心配そうな目を向けた。


「え、どういうことですか?」


「だって父の絵は、未発表の作品なんですよ?」


 里美がそう言うと、早瀬もこくこくとうなずいた。「そうだ。早苗の案は良い線を突いているとは思う。だがそれは、実現できた場合の話だ。その作戦は、実現できない。なぜならあのルーベンスの作品は未発表で、世の中の誰も知らないからだ」


「つまり、複製画が存在しないってこと?」



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