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「偽物の天才魔術師」はやがて最強に至る 〜第二の人生で天才に囲まれた俺は、天才の一芸に勝つために千芸を修めて生き残る〜  作者: 空楓 鈴/単細胞
第2章 迷宮決戦篇

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第63話 迷宮決戦③ーセコウの実力ー


【ロジー視点】


 馬車で昼寝をしていた筈が、いつのまにかおかしな場所に飛ばされていた。

 風景からして、迷宮だということは分かる。あと罠だということも。

 あと、転移した時床に腰を打ち付けたのがかなりキている。


「……くそがよぉ。なんなんだよ」


 合流したいのは山々だが、先程から迷宮内に妙な霧が出ている。

 これのせいで、歩いても歩いても、進んだ気がしないし、自分の現在地がわからない。

 敵が襲ってくる気配はない。撹乱目的の時間稼ぎだ……

 このままじゃ、ディンの奇策やフォーメーションがチャラになる。

 王女は当たり前として、ディンやクロハは単体ではまだ敵のレベルには及ばない。

 どうにかして突破しねぇと……


ーーー

【セコウ視点】


「どうしてあなたが国宝の魔剣を所持してるんだ……」


「へへっ、そりゃあ企業秘密だなぁ。

 それぐらい自分で考えたらどうだ?

 それとも、貴族のボンボンらしく情報料でも払うか?」


 嫌味たらしくセリが笑った。


 非常にまずい展開だ……

 セリだけならまだしも、国宝の魔剣まで使ってくるとなると話が違う。

 能力が未知数な上、どこまで〝適合〟しているのかも不明……

 

「俺もスケジュールが詰まってるんでな、そろそろ始めさせてもらう……ぜっっ!!!」


 そう言って、セリが勢いよくこちらに向かって飛びかかる。

 単調な突進だが、その動きには全く無駄がない。極限まで消耗を抑え、人を最低限の力で殺すための動きだ。


 咄嗟にバックステップを踏んでセリの斬撃をかわす。魔剣の権能がわからない以上、下手に受け止めるのは命取りだろう。


「なんだよ、消極的じゃあねえか!

 避けてもらっちゃ困るぜ!!」


 距離を取った筈が、セリは一瞬で私の間合いまで詰めてきた。

 ピッタリ張り付かれて距離を取れない。これほどの至近距離では、魔剣をかわすのは困難だ。


 やはりこの男、強い……

 一つ一つの攻撃が的確に急所を捉えている。流石と言うべきか……

 

「いいんですか?

 私なんかに戦力を割いていて、魔剣持ちなら隊長と当たるべきでは?」


 繰り出される斬撃を駆け回ってかわしながら、セリの意識を少しでも割けるようにと問いかける。


「ああ、確かにこの剣ならあいつにも有効だ!

 だがよ、あいつは手の内を全て晒しちゃいねえ。

 昔っからそうだ。あいつは小狡いからな。

 未知数の相手に奥の手晒す奴がどこにいる?

 まずは情報が出切ってるお前からだ。落ちこぼれのボンボン眼鏡さんよぉ!!」


 できるだけ追い詰めて、手の内を見切ってから魔剣を投入するつもりか。

 となると、隊長の足止めにもかなりの戦力が……


「私の情報が出切っている?」


 そう尋ねると、セリはピタリと足を止めて、笑みを浮かべる。


「ああそうだよ。

 セコウ•リニヤット。

 いや、元フィノース•リニヤットだろ?

 生まれつき水魔術に適性が無かったフィノース家の落ちこぼれ」


「……」


「特級と言えども、所詮は物の時間を1日巻き戻す程度。やることと言ったら、戦闘後の後始末。

 不死鳥(ルーデル)韋駄天(ロジー)、果ては兄ちゃんにも及ばねぇ……なっ!!!」


 言い終えて間もなくセリが再び肉薄し、次の瞬間には、迷宮の広間に激しい金属音が響いた。


「ッッッ……」


「おっとぉ、ついに剣を受け止めたな?

 さっきまでの威勢はどうした?

 読書のし過ぎで体が訛ってんのか? 

 優等生さんよぉッッッ!」


 駆け回っていたとはいえ、所詮は迷宮の広間。

 平原でもあるまいし、うまく角に追い込まれて接近を許してしまった……

 これでは攻撃を受ける他ない。


「……あなたも中々切羽詰まっているようだな。

 少なくとも、ロジーは揺動で足止めするしかない程度には」


 鍔迫り合いの中、ジリジリとセリを押し込みながら、わざとらしく笑いかける。


 もう少し、もう少し手前にセリの立ち位置をずらしたい。怪しまれないように、意識を逸らす。


「……」

 

 ジリジリと後ろへ押し出されているセリが、咄嗟に張ったブラフに反応し、余裕のある表情を崩した。

 それもそうだろう、これだけ広大な迷宮では魔力感知は役に立たず、分断された仲間の安否、ましてや立たされている状況などわかるはずがない。


「どうやら当たりのようだな」


「チッ……当てずっぽうか」


 よし、なんとか目的の位置までセリをズラせた。

 次の段階だ。


ーー遡及(リバース)ーー


 セリが今の位置から動かぬ内にと、すぐさま魔術を発動する。


「ッッ!?……」


 魔術の発動を機に、鍔迫り合いをしていたセリの動きが著しく鈍る。


「これは……!? 鈍化の呪詛?……」

  

 鈍化の呪詛によって倍増された自重に耐えきれず、セリが膝をつく。


「……たしかに私は落ちこぼれだ。

 フィノース家魔術師の絶対条件である、水魔術を無詠唱で扱うことが出来なかった。

 みんな私を貶したさ、穀潰しだの、猿だの、無能だの。

 時間を巻き戻す魔術を使える事に気付いても、せいぜい戦闘後の後処理係。

 それは隊長に拾ってもらってからも同じだった」


「……はっ、話が長ぇぞ眼鏡ぇ……

 何、が……言いてぇんだ?……」


 とうとう四つん這いに付したセリが、息絶え絶えに問う。


「おかしな話だな。

 この魔術は私だけのものである筈なのに、私よりも有効に使える者がいるのだから」


 ディンのアイデアがなければ、きっと私はこの魔術を使いこなすことが出来ずに、落ちこぼれのままだったのだろう。


ーーー


 セコウ•リニヤットに開花した特級魔術は、正確には時間を巻き戻す魔術ではない。

 彼の魔術の神髄は、対象の状態を最大28時間前まで遡り、トレースする。

 テレビゲームに例えるならば、過去のセーブデータをコピーして、無理やり現在に上書きすることができるというものである。


 対象は非生物に限定されているが、例え対象の一部しか持っていなくとも、それが破壊されてから28時間以上経っていなければ、元の無傷の状態に戻せる。


 そして、この魔術にはもう一つ、おまけのような能力がある。

〝物体に眠る記憶を読み取る〟

 具体的に言えば、28時間前から対象の記憶を遡り、今に至るまでに対象が何処にあったか、誰の手に触れたか、周囲からどんな影響を受けていたか等を、一瞬にして把握できる。


 当然セリの装備も例外ではなく、鍔迫り合いの中で彼の装備に触れたセコウは、間接的に彼の過去の動向を読み取り、ある程度の状況を把握したのである。


ーーー


「あなたはこのフロアにあった呪詛魔法の罠を事前に撤去しただろう?」


 また、この広間の床に魔術を使えば、どこにトラップが仕掛けられていて、いつ撤去されたかも、セコウには手に取るようにわかる。

 〝罠があった位置〟まで敵に違和感を与えることなく誘導することなど、造作もない。


「……だったらなんだってんだよ」


「いえ、別に……

 貴方の入念な準備、色々と利用させてもらいました」


「……そうかよ」


 セコウが発動した魔術は、紛れもなくただの時間魔法。発動対象は己の剣と、セリの足元の床。

 剣からは事前に仕込んでおいた〝鈍化〟の呪詛魔法を複数分。

 床からは、数時間前にセリが撤去した〝強化された鈍化〟の呪詛魔法のトラップを。

 それらを復元することにより、セリは通常の10倍以上、重さにして推定2.5トンほどの呪いを受けた。


 セコウの魔術は、過去に効力を失った付与魔法さえも、条件さえ満たしていれば復元してしまう。

 対象が〝呪詛魔法を付与されていた時〟の状態まで遡り、それを現在に上書きすることができるのだ。 


 セコウが剣から複数の〝鈍化〟を発動することが出来たのも、この性質を利用して、セコウが予め己の剣に幾つもの呪詛魔法を仕込んでいた為だ。


 基本的に、トラップ型の呪詛魔法は、物体に触れれば設置者の意思関係なく発動してしまうため、剣などに付与しても、受け太刀をした時などに誤作動してしまい、実用性はない。

 しかし、予め付与した呪詛魔法を解除しておけば、誤作動は起きない。

 セコウが使いたいと思ったタイミングで、過去に付与した呪詛魔法を復元すればいいのだ。

 

 つまり、セコウはリアルタイムで任意の呪詛魔法を発動することが出来る。

 ディンの機転によって、セコウは現状、世界で〝たった一人〟しか使用者がいない、無詠唱呪詛魔術を擬似的に再現できる唯一の存在となったのだ。


「最後に何か、言い残すことはあるか?

 ……いや、聴きたくもないな。

 せいぜい、あの世でエドマを弄んだ罪を償うことだな」


 地に付したセリに向けて、セコウは剣を振り上げる。


「……へっ、これだから貴族は嫌いだよ。

 つ……償いだぁ? 

 まるでてめぇやあの女が正しいみたいな……言い草だな。

 ボンボンは……ハァ、どいつもこいつも、わかってねえ……

 それ、によぉ……あの女は他に男がいたにも、関わらず、お前を……頼ったんだぜ? 

 飛んだ、阿婆擦れ女さ。

 男を弄ぶような奴は、ハァ……果たして正義かよ」


「……もういい」


 セリがそう言い終えると、剣は静かに振り下ろされた。


 薄暗く、冷たい迷宮の広間には、血飛沫が舞った。



Q&A いくつかご質問頂いたので答えていきます。


Q,ディフォーゼ家(ラトーナの家)がフィノース家と同じ大貴族ならば、フィノース家のように戦闘員はいるんですか? あといるならどうして社交会の警備に回さなかったんですか?


A.まず一つ目から。

 基本的に四大貴族には〝本家〟と〝分家〟があり、

 本家の役割は主に三つで、子を残すこと、大臣としての仕事、当主としての個人的な仕事。

 分家の役割は二つ、本家の私兵として仕えること、相伝の魔術を本家の協力を経て研鑽すること。

 と言った感じです。

 なので、ディフォーゼ家にも戦闘員はいます。


 一応、社交会の時には8名ほど実力者が警備に回されていましたが、5名は何者かが殺害。残りの3名は人質のせいでうまく動かなかったって感じです。

 分家の総数は30人程度ですが、8名しか配備されていないのは、王都に出向いている本家当主の護衛と、社交会中の家の警備にも人を割いていたからです。ディフォーゼはガタつき気味なので、留守中に攻め込まれないようにと、家に戦力を割いています。


Q.ロジーの能力開示忘れてる?


A.忘れてねーよ!


Q.最新話男キャラ多いっすね。


A.今後のクロハに期待ですね。


Q.更新はよ


A.ならオラにポイントを分けてクレェ!


 今回は以上です。他にもありましたが、尺がないので次回に回そうと思います!


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