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第57話 君だったか

 後書きにおまけの四コマ漫画をつけようとしているのですが、キャラデザが下手なので少しかかりそうです。

 楽しみにしていただければ幸いです。


 バァァァァンッッッ!!!


 早朝、街外れの森林からは、空気を思い切り叩いたような破裂音が何度も響いている。


「精が出るな、こんな早朝から」


「あ、おはようございますセコウさん。

 すみません、うるさかったですか?」


「いや、なんだか目が覚めてしまってな。

 それより隊長はどうした?

 朝稽古はないのか?」


「はい、朝リディさんの部屋に行ったんですけど、今日はいいって。

 なんか、昨日の帰り辺りから様子が変なんですよね。

 僕にギャンブルで負けたのがこたえたわけでもあるまいし……」


 ギャンブルの種目は、よくわからない花札みたいなものだったが、リディ以外大した相手にならなかった。王女は単純に下手だったし、クロハに至っては顔に出過ぎてて相手にならなかった。

 まさか第二の人生で、王女からギャンブルで金巻き上げることになるなんて思いもしなかったよ。

 ひょっとして俺、才能あったりするのかな。


「そうか。

 まあ、隊長もたまには休みたかったのかもな」


「あの人に限って、そんなことありますかね……」


「ハハッ、さあな。

 正直、私もあの人のことはよくわからないんだ」


「そうなんですか?

 結構付き合い古そうに見えますけど」


「言うほど私は長くはないんだ。

 うちの隊で1番隊長と付き合いが長いのはルーデルさんだと思うぞ」


「ルーデル?……」


「うちの隊の副隊長だ」


「……え!?」


「?……

 どうした?……」


「いや、副隊長ってセコウさんじゃなかったんだなって……」


 普段からツッコミ役というか、真面目枠だったから、てっきりセコウが副隊長なんだと思ってた……


「ハハッ、私じゃないぞ。

 仮にそうだったとしたら、私はここにいないだろう」


「いないって、どういうことですか?」


「こんな状況なんだ、国で待機してる隊員達には何があるかわからないだろう?

 向こうにもある程度戦力を残しておかないと危険だ」


「あー、万が一王子派の攻撃がリディさんの部下に向いた時の保険ってことですか」


「まあ、簡単に言うとそうだな」


「ってことは、やっぱり強いんですか?

 そのルーデルさんは」


「当たり前だ。

 騎士団きっての実力主義のうちで、副隊長をやっているんだぞ。

 隊長ほどではないがかなりの化け物だ」


「まじすか……

 リディさんの隊での序列ってどんな感じなんですか?」


「言うまでもなく隊長、副隊長、ロジー、ロジーの下に一人、そしてその次が私だ。

 まあ私は5番手と言ったところか」


「そうなんですか。

 じゃあ今の僕の強さはどこら辺ですか?」


「相性にもよるが……

 もし仮に、お前が殺しを躊躇しない性格だったのなら、ロジーと同等か少し下じゃないか?」


「副隊長には勝てない感じですか」


「ハハッ、今は無理だろう。

 会ってみればわかるが、あの人は副隊長と言っても、他の隊の隊長より強いからな。ロジーだってそうだ。

 だが、お前はそんなあいつから一本取った。

 その若さに似合わぬ魔力量と発想力。お前はこれからもっと強くなる」


「……頑張ります」


 不意打ちで倒したとはいえ、そこまで言ってもらえるとなんだか照れるな。


「……」


「どうしたんですか?

 そんなチラチラと辺りを見回して」


「いや、お前がさっきから何をやっていたのか気になってな。

 あの木に空いている穴は、例の弾の魔術か?」


「あ、はい。

 死神ノ糾弾(デス=バレット)は強力ですが、まだ発動も遅いし、インターバルも長い。

 弾丸も小さいので、戦闘中にちゃんと当てるの難しいんですよね。

 だから練習中です」


「なるほど、だか……」


「どうかしました?」


「その技を使うなら、普通の岩礫(ストーン•バレット)で良くないか?」


「いやいや、そんなことはないですよ」


「そうなのか?」


死神ノ糾弾(デス=バレット)の方が、少ない魔力で高い威力を出せるんですよ。最低出力の初級魔法を組み合わせただけですからね。

 だから練習すれば、高威力の弾丸を連射だってできるかもしれないんです!

 その他にもですね、岩礫の場合、弾を一度に複数出すと、弾一つ一つに魔力を割り張らなければならず、魔力消費も発動時間もバカにならないわけですが、バレットならいちいち振り分けなくとーー」


「あ、ああ。わかった……もう良い。

 で、練習の成果はどうなんだ?」


 む、いけないいけない……

 少し興が乗って喋りすぎてしまった。気をつけねばな。これだからヲタクは……


「発動速度はほんの少し上がりましたけど、動きながら何かを狙うのはまだ全然駄目です」


「そうか」


「神槍もなかなか強力でしたけど、あれも多分、当てるの難しいんでしょうね。

 敵ながら天晴れです」


 バレットも速度なら神槍に劣ってないと思うが、なにぶん弾が小さいので当てにくい……

 もう少し、弾頭の大きさを調整しようかな。


「あいつは前衛を用意していたから、しっかり狙う余裕があったんだろう。

 それに、前回はあまり動きがない魔術師同士の戦いだった。お前がその技を使っても多分当てられたと思うぞ」


「……そうですかね」


 とっととマシンガンみたいに連射できるようにして、命中率を上げねばな。


「まあ、どのみち一人で出来ないようじゃ意味がないですから、なんとかしますよ」


「随分熱心なんだな」


「後悔してからじゃ遅いですからね」


「……」


「?」


 セコウが何も言わずに近づいてきて、クシャクシャと俺の頭を乱暴に撫でた。


「セコウさん?……」


「たしかにそうだな」


 セコウはそう言って笑った。

 近くで見て気づいたが、彼の目には何故か疲れの色があった。顔色も少し優れていない気がする。

 何かあったのかな。


「セコウさん」


「なんだ?」


「……いや、なんでもないです……

 あ、そうだ。

 セコウさんって確か魔法陣とか書けますよね?」


「ああ、できるぞ?」


「良ければ書き方を教えてくれませんか?

 あと魔道具の仕組みとかも知りたいです」


 俺が彼の相談に乗ろうなんて生意気だな。

 やめておこう。


「あ、ああ。どうした急に」


「ちょっと思いつきまして、カクカクシカジカで……」


「は?

 鹿がどうしたって?」


「……」


「え、おい?

 どういうことだ?

 どうして急に黙るんだ?」


「……」


「おい?」


「……」


ーーー


「よぉーし、みんな集まってるね」


 狭いホテルの一室で、グッと伸びをしながらリディはそう言った。


「どうしたんですか? 急に集まれなんて」


 セコウとロジーとクロハ、そして俺。このメンバーにする話ならおそらく戦闘面でのことだろうが、どうしてこんなタイミングなんだろうか。


「そうっすよ隊長、それに調子はどうなんですか? 

 今朝は部屋に篭りっきりでしたけど……」


 リディが朝稽古を休むなんてよっぽど珍しかったのか、いつも楽観的なロジーですら今日はやけに表情が暗い。


「ん?

 ああ、別になんてことないよ。

 それより本題だ。今から最後の情報確認だ」


「情報確認?

 なんで今になって?」


「今俺達がいる街を出れば、ムスペル王国に着くまでに通過する街は次で最後になる。

 恐らく襲撃があるだろうからね」


 たしかムスペル王国では王子側も下手に戦闘をできないんだったな。


「襲撃は絶対にあるんですか?」


「あると思うよ。

 どうにも向こうのやり方が臭い。

 あくまで感だが、先の襲撃は棒で突くようなものだったのだろうね」


「棒……ですか?」


「ああ、たしかにそうっすね」


「私もそう思います」


 なんだよ、わかってないのは俺だけじゃん。

 なに? 小手調べってこと?


「戦力が中途半端だったんだよ。

 作戦もどこか甘かったしね」


「……つまり様子見ですか」


「そう。

 後は厄介払いだろうね」


「厄介払い?」


「俺が対処した襲撃者の方は、守り手騎士団の新設10番隊と11番隊の隊長、副隊長。

 マルテ王子派閥の力で無理やり作られた隊だから、他の隊と比べると少し力が劣る。

 だから奇襲する予定だったにしても、俺にぶつける戦力にしては弱すぎる。

 おそらく今回の追手は、フィノース分家と今話したやつらの二組だけ。

 即席の連携じゃ厳しいだろうから、フィノースの奴らに捨て駒にされたんだろうね」


「捨て駒って……

 向こうは随分余裕ですね」


「そこだよ問題は。

 たしかに、あいつらは戦力的には大したことはなかった。

 けど、早い段階で切り捨てるには流石におかしい。あれほどの駒なら、まだ他にいくらでも使い道はあった。

 それをしないということは、勝つ算段が向こうにはあるってことになる」


「なるほど」


「だからこっちも入念に打ち合わせをする。

 特に〝お互いの手札〟と〝フォーメーション〟を重点的にね」


 ん?

 なんで今、言葉を変に強調したんだ……?


「まず大前提として、次の襲撃に備えてチームの振り分けだ。

 まずロジー、セコウ、ディンは3人でフィノース家を相手してもらう。

 俺は単独で他全ての相手。

 クロハは万が一のために王女のそばに」


「はい」


「了解です」


「へいへい、わかりやしたよ」


「……」


 クロハは下を向いたまま、黙っている。

 何か言いたげだが、リディは聞いてやらないのだろうか。


「よし、じゃあ次は手札の確認だけど。

 その前に……」


 突然、リディがテーブルを離れてドアの方へと歩いていく。


「……リディさん?」


「隊長?……」


「おいおい、どうしたってんだ?」


「……」


 リディはドアの目の前に立つと、フッと息を吐いて口を開いた。


「いつまでそんなとこにいるつもり?」


 そう言い放つと突然、リディはドアを腕で突き破った。


「ッッッ!?」


「えっ、ちょっっ……」


 部屋中にバキバキと扉が砕ける音が鳴り響き、リディは扉の向こうから何かを鷲掴みにして引っ張り出した。


「キャアッ……」


 ドアの破片と埃が部屋中に舞う中、一人の金髪の女性が俺達の前に、乱暴に放り出された。


「え……」


「ありゃ?

 エドマさんじゃねえか」


「……エドマ」


 セコウが仏頂面を崩して、エドマの元に歩み寄る。


「ちょっ、リディさんいきなりなんてことするんですか!

 エドマさん、大丈夫ですか?」


「……あっ、あの……そのっ……」


 慌てて俺も、エドマの元に歩み寄るが、彼女はそれに怯えるようにして、身を引いた。

 様子がおかしい……

 どうして俺にまで怯えているんだ?


「ディン、早くその女から離れた方がいいよ」


「……どうしてですか?」


「内通者ってのは、どんな魔術が施されているかわからない」


「……え?」

Q&A withヒロインズ


Q.趣味は何ですか


ラトーナ

A.ふっ……読書ね


アイン

A.運動だ!


クロハ

Aお花とか集めるの好き


Q.好きな食べ物は


ラトーナ

A.あんまり拘りはないわね


アイン

A.ディンの焼いた肉……あれがなんか凄かった……


クロハ

A.カレー(魔大陸南東部にカレーに似た料理がある)


Q.特技は


ラトーナ

A.暗記には自信がある


アイン

A.川の魚を素手でとれる


クロハ

A.ない……


Q.好みのタイプは


ラトーナ

A. ……もうわからない


アイン

A. あ、あの……その、アレだ! 強くて頭良い人!


クロハ

A. この前頭撫でてきた怖い顔の人、思ってたより優しかった(ロジーのことだが、別に好きではない)


Q.ディンについて一言


ラトーナ

A. …………(ノーコメント)


アイン

A.え?! いや、急に言われても困るぞ!!!


クロハ

A. …… (ノーコメント)

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