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「偽物の天才魔術師」はやがて最強に至る 〜第二の人生で天才に囲まれた俺は、天才の一芸に勝つために千芸を修めて生き残る〜  作者: 空楓 鈴/単細胞
第2章 王女護衛篇

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第54話 エデン



「そういえば、エドマさんは連れてこなくて良かったんですか?」


 人に賑わう大通りを四人揃って歩きながら、それとなく王女に話しかける。

 先程から俺はリディと話すばかりで、場の空気が偏っていたからな。

 でも、いきなりクロハに話しかけるのはハードルが高いので、王女を選ぶ。

 そう、俺はチキンだ。

 歳下の女の子と話すだけでアガッてる、揚げ鳥なのだ。助けてくれカーネ○サンダース。


「ええ。 

 別にあの人がいなきゃ何もできないってわけではないのですよ?」


「あ、これは失礼いたしました……」


「良いのですよ、それに……」


「それに?」


「少しはあの人にも休んでもらわないと」


 そう言って、王女は申し訳なさそうに笑った。


「そういえば、エドマさんとはどういう関係なんですか?

 普段の様子を見ていると、かなり仲が良さそうで、ただの主従関係には見えないのですが」


「関係ですか……

 一言で表すなら、エドマは私にとって姉のような存在です」


「姉?」


「ええ……

 エドマは私の母に付いていた使用人の子でしてね、幼い頃から私と一緒に育ってきました」


 幼馴染の兄弟分。俺とアインみたいなもんか。

 まあこっちは歳下の俺が兄貴分みたいになってたが。


「私のせいで、ここのところずっと無理をさせてしまいましたからね……」


「……」


 『そんなことはないよ』と否定するのは簡単だ。

 だが、彼女の寂しそうな顔を見ていると、それはあまりにも無責任な発言だと思ったのでやめた。

 彼女にも彼女なりの考えがあるのだろう。


「……それより」


 王女がズイッと、俺の耳元に顔を近づける。

 高級感のある香水がフワッと香る。


「うわっ、えっ、はい?」


 心臓の鼓動が速まる。

 やばい、美人が俺に耳打ちしてる……


「クロハと仲良くなりたいなら、私ではなく本人に話しかけなくてはダメですよ?

 今日は私も忙しいので、フォローはあまりできませんしね」


 王女はそう言って優しく笑うと、俺から離れてリディの隣を歩き出した。

 素なのかわざとなのかは知らないが、こんな仕草ばかりやられたら、勘違いしてしまいそうだ。

 ダメだダメだ……俺にはラトーナがいる。


「耐えろ俺……」


「何かおっしゃいましたか? ディン殿」


「は、いっ、いえ……」


 それにしてもリディめ……

 左には王女、右にはべったりとクロハ。両手に花とはまさにこのことだ。

 許せん。

 これじゃ俺が浮いてるじゃないか。いや実際浮いてるけどさ。


 クロハがリディにくっつくのは、『見知らぬ土地に慣れてなくて緊張している』という理由があるからまだわかる。

 問題は王女の方だ。明らかに俺と話してる時とは違う表情。

 俺はこの表情、この目を知っている。

 恋する乙女の目だ。

 おかしいだろ、リディだぞ? 

 普段やってることなんか俺と大して変わらないぞ? 

 なんだか負けた気分だ……


「……」


 そんなことを考えながら、ハーレム状態のリディを一人寂しく眺める。

 なんだか今日はついてない日になりそうだ。


ーーー


「ここですか? 高い店っていうのは」


「そうだよ」


 いかにも西部劇に出てきそうなボロい酒場を前に、リディは得意げに笑う。

 

「へ、へぇ〜」


 想像と大きく違ったのもそうだが、なんというか、街の雰囲気に全く合っていない。

 色はしっかりと白に統一されているのだが、煉瓦造りの建物が立ち並ぶ中にポツンと木造……街の中心部からかなり外れているとはいえ、すごく違和感がある。

 どうしてこんな建物が残っているのだろうか。


「……」


 王女とクロハも店を見てから一気に口数が減った。コメントに困っている。

 良かった、俺の反応は正常なようだ。


「何突っ立ってるの? 早く中入るよ」


「あ、はい……」


 リディはどうしてこんなにも平然としているのだろうか。

 明らかにこの店の外見は、高級の対義語にありそうなのに。

 顔が真面目すぎて、もはやからかっているのかどうかすらわからない。

 頼むから冗談であってくれ。


 リディに連れられて、酒場らしき店の扉をくぐる。


「あれ? 誰もいないじゃないですか」


 店の中は一般的な酒場と全く同じ内装。しかし、そこに人の姿はない。

 まるで幽霊屋敷にでも足を踏み入れたかのようだ。


「当たり前さ、ここはただの入り口なんだから」


 そう言うと、リディは突然しゃがみ込んで足元の敷物を引っ張り始めた。


「ディン、この敷物どけるからちょっとどいて」


「え? あ、はい」


 敷物から足をどけ、リディがそれを引っ張り上げると、驚くものが目に入った。


「これ……魔法陣ですか!?」


 カーペットらしき敷物の下には、大きな魔法陣が隠れていたのだ。


「そうだよ。とりあえずみんなこの上に乗って」


 リディに促されて、3人揃って魔法陣の上に乗ると、リディが詠唱を始めた。


「ちょ、これなんですか?」


 俺の言葉に構わず、リディの詠唱は続き、魔法陣が段々と光を帯びる。


「ーー飛ばせ〝エデン〟」


『!』


 リディがそう口にした瞬間、魔法陣の光の強さは頂点に達し、俺の視界は暗転した。


ーーー

 

「着いたよ」


『……!』


 リディの声を聞いてそっと目を開けると、目の前には別空間が広がっていた。


 グラスのぶつかり合う音、ズラリと並ぶ白いテーブル、賑やかな客達の話し声、それらを店の雰囲気として綺麗にまとめ上げる楽器の演奏。そして以前の社交会にも劣らない優雅な装飾。

 まさに高級レストランだ。


「ここは?……」


「この街の地下にある大規模施設だ。

 飯は勿論だけど、賭け事の場や見せ物も充実してるんだよ」


 マジかよスッゲェ……

 見渡せるだけでもここかなり広いぞ……


「なんでこんなのが地下に?」


「それは後で話すよ。今は席を取ろう」


 そう言ってリディは、慣れた足取りで店を巡回している店員の元へと向かうと、チケットらしきものを貰って戻ってきた。


「席はとったから、みんな着いて来て」


「あ、はい……」


「ええ、わかりました」


「……」


 クロハが目を白黒させているのに対し、王女は終始落ち着いている。

 ひょっとして、この施設の存在を知っていたのだろうか。


ーーー


「さてと……みんな何頼む?

 俺の奢りだから好きなの頼んで良いよ」


 なんだか今日のリディは嫌に優しいな。こう言ったら失礼かもしれんが、頭でも打ったのか?

 女がいる手前、見栄を張ってたりするのかな。いや、リディに限ってそんなことはないな。こいつは男女問わず人をおちょくる、歩くセクハラマシーンだ。


「いや……何と言われても、メニューに何があるかわからないので、僕はリディさんと同じので」


 この世界の店ってメニュー表的なの物を置いてないところが多いから、勝手を知らない俺は、いつも仲間が頼んだものと同じのしか頼めない。

 非常に不便だ。


「そう、わかった。じゃあクロエとクロハは?」


「私は『ノヴィ•キプト』とスープをいただこうと思います」


 リディの問いに、王女は素早く答えた。

 そして、なんか全然知らん単語も出てきた。

 ていうか、どうしてメニューを知っているのだろうか。ひょっとして知らないの俺だけ?


「クロハはどうすんの?」


「……」


 リディの問いに対し、クロハは下を向いたまま口をつぐんでいる。

 だいぶ困っているようにも見える。緊張しているのだろうか。


「リディさん、魔神語で聞かないとわからないですよ」


 全く、こういう時の配慮はまだ甘いんだよな、リディは。


「ん? 

 ああ、クロハはもうある程度ミーミル語わかるよ」


「え?」


「あら? 

 ディン殿には伝えていませんでしたっけ?」


「……はい、全く。

 みんなはこのこと知ってるんですか?」


「ロジーもセコウも知ってるよ〜」


 近くの店員を手招きしながら、リディが笑う。


「……」


 まただ。クロハの名前の件といい、また俺だけハブられた。なんなのかな、そんなに俺って影薄いかな。


「まあ、拗ねるなって!

 喋れるようになったって言っても最近のことだし、ディンはここのところ一人でいることが多かっただろう?」

 

 ……まあ、言われてみればそうか、必殺技の習得やら剣の一人稽古、フィノース対策ばかりやってたからな。


「……そうですね」


「まあとりあえず、料理を待とう。

 話はそれからだ」


 料理か……リディと同じのにしてくれと言ったが、どんなのだろう。

 


護衛メンバー お互いに抱いている印象①


『リディ』

あの性格さえ直せば欠点なし   byディン

そろそろ勝ちてえ        byロジー

個人的に顔がドタイプ      byクロエ王女

謎が多い人だ          byセコウ

色々教えてくれる良い人     byクロハ

なぜ私のスリーサイズを知って……byエドマ


『ディン』

面白い、将来を凄く期待してるよ   byリディ

手合わせに誘うと逃げられる。何故だ byロジー

真面目なやつだ、魔術に驚きっぱなし byセコウ

私あんな感じの弟が欲しかったんです byクロエ王女

最近料理を習ってます。凄い方です  byエドマ

……なんて言えば良いかわからない  byクロハ


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