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「偽物の天才魔術師」はやがて最強に至る 〜第二の人生で天才に囲まれた俺は、天才の一芸に勝つために千芸を修めて生き残る〜  作者: 空楓 鈴/単細胞
第1章 社交会篇

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第27話 思わぬ天敵


「どう……何人見える?」


「うーん……ここから見えるのは7人くらいかな」


 密林の中にぽつりと建つ豪勢な屋敷。

 その屋根には、天窓を覗き込む小さな人影が二つ。


「そう……」


 少年の言葉を聞き、顎に手を当てる少女。


「やっぱり天窓からじゃ限界があったね……」


「うん……」


ーーー


 やあ、諸君。

 先程ラトーナに『ズキュゥゥゥゥゥゥゥン』されてしまったディンだ。

 初キスはレモンの味なんて言うやつがいるが、ありゃ嘘だ。

 シャンパンの味だった。きっとラトーナが飲んでたんだろうね。

 

「ラトーナ」


「何……?」


 キョトンとした顔で俺を見る彼女。

 時間があるならずっとこの可愛い生き物を眺めていたい。


「この戦いが終わったら俺……結婚するんだ」


「だっ、だれとよ!?」


 息を荒くして、彼女は俺の顔を覗き込む。


「なんとなく言ってみただけ」


 先程の興奮冷めぬせいか、無駄口が止まらなくなってしまった。


「とりあえず、人数も大体把握できたし、作戦の最終確認をするーーって痛ッ!」


 なんだねハニー、ちょっとふざけただけじゃないか……だから足を蹴るのは辞めたまえ。


「僕らの勝利条件は?」


「……誰も死なせない、私達も死なない、相手も極力殺さない」


 頬をぷくっと膨らませながら、足を引っ込めたラトーナが答える。


「そうです、じゃあ侵入の手順は?」


「目の前の天窓をあけて、ここからディンが照明を全て壊す。私とディンは暗視の加護をつけて下に降りて、ホールの敵を倒す」


「そう、なんだけど、やっぱりラトーナはここで待っててほしい」


「ッ……でも!」


「ラトーナ」


 彼女の肩に俺の上着をかける。


「……わかったわ」


「ホールの相手を片付けたら呼ぶね」


「うん」


「じゃあ開けるよ」


 ホールの天窓をそっと開ける。

 何年も触られていなかったのか、可動部からはミシミシと軋むような音が聞こえる。


「うわっ……眩しいな……」


 窓を開けてすぐ目の前には、煌々と光を放つシャンデリアがあった。下からシャンデリアを眺めることはよくあるが、真上からシャンデリアを見るのは何だか新鮮だ。

 

 俺は窓枠から少し身を乗り出し、手を前に出す。

 使うのは風魔術だ。

 本来ならスパイ映画みたいに銃弾とかでシャンデリアを壊して灯を消したいのだが、それをやってしまうと、敵を倒した後に灯をつけられなくなってしまうので辞めておいた。


 くそ……


 せっかく自作の銃弾をいくつか持ってきたんだから、どっかの真の男女平等主義者のように『狙撃ッ』とかやってみたかった。

 いやまあ、人殺しはごめんだけど。


「作戦開始!」


 突き出した腕に魔力を込める。


ーー発風(ウィンド)!ーー


 天窓からシャンデリアに向けて、一瞬だけ激しい風を送り、シャンデリアの蝋燭に灯った火を全て消す。


「うわ! なんだ!?」


「灯はッ!?」


 一瞬にしてホール中の光を奪った。

 敵だけでなく、その場にいる人々までもが騒ぎ出し、暗闇の中で混乱が起き始めていた。


「ラトーナ!」


 俺が声を上げると、すぐさま彼女は俺に手をかざし、その手に光が灯る。


ーー暗視の加護ーー


 本来ならば初級の加護でも早くて詠唱に1分はかかるが、彼女の無詠唱呪詛魔法はその比ではない。

 本気でやれば、発動まで総合で10秒も掛からないだろう。

 彼女なら呪詛魔法師の最高峰に上り詰められる。

 この娘、ワシが育てたんじゃよ?


 彼女の手から光が消えると同時に、魔力の自動消費が始まった。

 

「できたわ」


 光を失ったホールは一変し、まるで日中かのように視界が晴れ渡る。


「ありがとう、行ってくる」


「気をつけて……」


 天窓から飛び降り、ホールの床に着地する。

 その高さは実に10メートル以上はあったが、風魔術の逆噴射による落下軽減と、身体強化によってなんとか骨折等の怪我は免れた。便利なものだ。


「いま何か音がしたぞ!」


「何……? 貴族どもッッッ! 勝手に動いたら人質を殺すぞッッッ!」


 俺の着地音に反応し、刺客の男が声を上げる。


「我々は動いてなどいないぞ!」


「そうよ! どうなってるのよ!」


 怒鳴った男に対し、貴族達は口々のそう叫んだ。


 すまんな、俺は正面から戦いたくないのだよ。


「ちくしょうが、どうなってやがる……」


 暗闇の中、刺客の男がボソリと漏らした呟きが聴こえた。


「おい、お前、火の魔法とか使えないのかよ」


 また一人、今度は別の男が呟いた。


「んなもん使えるわけねえだろ。使えたら賊なんかやってねえよ! それに、習ってたとしても詠唱なんか覚えてるわけねえだろ!」


「チッ、なんだよ使えねぇ……って、あれ?」


「ん、どうした?」


「お前、今俺に触ってたりするか?」


「いや」


「え、じゃあこの手は––––」


ーー発雷ーー


 男に触れていた俺の手から、強い衝撃とバリバリと空気を裂くような音が生じた。


「ガッ……」


 叫ぶ間もなく失神した男は、頭から床に倒れ込んだ。


 やはり千鳥……じゃなくて、雷魔術は強力だな。

 魔力消費が他より多いってのと、電流が拡散してしまうデメリットのせいで、ゼロ距離で当てないといけないデメリットこそあるが、当たりさえすればこの威力。

 中級の電撃とかならもうちょっと制御が効くのかもしれないが、俺は使えないので言ってもしょうがないな。


「おい! どうした! 今の音はなんだ!?」

 

 突然の出来事に、会場がざわつく。

  

「襲撃だ! 構えろ!」


 仲間がやられたのを察知したのか、刺客達は構えを取る。

 

ーー土壁(アースウォール)ーー


 即座に土魔術の壁で人質と敵を分断し、ホールの扉全てに蓋をする。

 所詮は土の壁だが、この暗闇なら破って人質にも手を出すのも至難だろう。

 そしてこの暗闇の中で自由に動き回れるのは、暗視の加護が付いた俺だけ。


 もはや無敵だ。


 極力音を立てないように、残りの男達に近づいていく。

 相手はやはりこちらには気づいていないようだ。

 当然も当然、この暗闇じゃ不可能ってものだ。


「ガァッ」


 また一人、俺の電撃を受けて意識を失う。

 これで2人目。


「おい? どうしーー」


 これで3人目。


「畜生が! なんなーー」


 4人目。


「卑怯者が! 出てきやがれ!」


 怯えて剣を振り回す男。

 しかし愚策だな、別に無理に近寄る必要なんてこっちにはない。


土壁(アースウォール)


 光の帯が床を伝いながら、剣を振り回す男の足元へと伸び、土上級魔法の発動を表す魔法印が浮かび上がる。


「なッ! うわッッッ!」

  

 男の足元から勢いよく飛び出した土の土台は、男を目一杯に打ち上げ天井へと叩きつける。


「ガっ……」


 天井から剥がれるように落下した男は、そのまま床にへたり込み、動かない。  

 気絶だろう。

 本来なら打ち上げても受け身を取られたかもしれないが、あれだけ取り乱してくれていれば無理だ。

 意識を刈り取るぐらいは容易いだろう。

 今ので5人目。


 残るは一人だな。

 兜を被ってるあたり、こいつがリーダーだろうか。

 もういっそのこと、走って近づいてみようか。その方が早く終わるし……

 いや、やめとこう。こういう時こそ慎重にだな。


 息を殺して、そっと兜の男へと迫る。他の奴らはこの事態に取り乱していたというのに、こいつは仁王立ちで目を閉じている。 

 嫌に大人しい……


「……」


 二、三メートルほどまで近づいたが、男が動く気配は一向にない。


 気味が悪いな……なんでこんなに冷静なんだ?

 仲間が次々にやられてんだぞ?

 流石にこの暗闇で、俺が見えてるなんてことはないよな?

 

「……」


 とうとう男のすぐ近くまで来てしまった。

 今のことろ男に動きはないが、なんだか怖いので真横から触れることにする。


 そう思って、男に触れようと魔力を込めた腕をそっと伸ばした時。


「!」


 突然男が動き出し、身を屈めた俺の頭の少し上を男の振った剣が掠めた。

 

「チッ、避けられたか……?」


 慌てて後ろに飛び退(すさ)って、距離を取る。


 なんでだ?

 なんでバレた……?

 息も止めてたし、足音も殺してた。灯もないから俺が見えてるわけでもない、よな?

 野生の感か?


「そこにいるんだろ? ……誰だか知らねえが舐めた真似しやがって」


 男はトントンと、肩に剣を当てながら口を開く。

 先ほどの静止はカウンター狙いだったのか……

 危なかった。もう少し反応が遅れてたら首チョンパだった。


「ハァ、ハァ」


 やべぇ、びっくりし過ぎて、息が乱れた。

 心臓もバクバクだ……


 近づくのはまずいな。

 さっきみたいに安産圏からの土魔術で天井に叩きつけてやる。


ーー土壁(アースウォール)ーー


 男の足元に魔法印が浮かび上がり、地面が激しく隆起し始める。


 しかし……


「それはさっき見た」


 男はそう言って、バックステップを踏んで、軽々と俺の魔法をかわす。


 くそ……

 さっき使ったのを見られてたか。

 上級魔術の魔法印は隠せないし、暗闇なら印の光が目立つしな……

 作戦が仇になったか。


「なんだ、近寄って来ねえのか? お得意の炎……いや電撃を撃ってこいよ」


「!……」


 まじかよ……なんで電撃ってバレた?

 魔法印は見せてないし、光は出ないようにゼロ距離で当てた。音か?

 音でバレたのか……?


 いや違うな。

 こいつは炎と言いかけた。音で判断したなら、炎だなんて思わないはずだ……


「来ないならいいけどな。俺は増援が来るまで待つとさせてもらう……って、人質どもがうるさくて聴こえてねえか?」


 そう言って男は、俺がいる〝方向〟に剣先を向ける。


「……」


 やっぱりだ。

 こいつ、俺のことが見えてない。

 なんとなく俺との距離は理解してるが、具体的な位置は割れてない。


 剣先も目線も俺を捉えてない……こっそり背後に回れば遠距離攻撃できるか?


 抜き足で素早く男の背後に回ると同時に魔法を放つ。


ーー岩礫(ストーンバレット)ーー


「うお、なんだ!? 土魔術か!?」


 完全に死角だった。

 それなのに男は、俺が回り込んだことに気づいて対応した。

 放った魔術を殺さないように威力を抑えたせいで、ギリギリの反応で弾かれた。


 でもなんだろう、気づくタイミングがずれていた気がする。


「無詠唱か……さっきの剣をかわしたのと言い、ただの女じゃねえな」


 は?

 女……?


「……俺は男だ」


 つい反応してしまったわ。

 まあ、音で判断はしてなさそうだし。

 人質達のざわつきもあるので、会話ぐらいは平気だろう。


「あれ? 男?……うそつけ、声も高えし、その香水は女がつけるやつだ。ちょっと焦げ臭くて、わかりにくいがな」


 あ、そういえばラトーナがお気に入りの香水つけてもらったけ……

 これいい匂いだよな。

 それで勘違いしたのか?


 って、いやいやいや。

 そんなの普通気づくか?

 香水がべったりついた上着は、さっきラトーナに被せておいたんだ。頭に少しついてる程度だぞ?……

 俺は結構風呂に入る方だからな。ぷんぷん匂うほど使う理由もない。


 それに焦げ臭い?

 焦げ臭いってどういうことだ?

 全然感じないぞ?

 こいつ鼻良すぎだろ、俺の位置を把握してるのは匂いを追ってるからか?


「随分、鼻がいいんですね」


「へっ、まあな。俺の親は片方が獣族だったらしいからな」


 聞かれればペラペラと、随分余裕のある態度だな。

 事実か。

 俺に有効打がない以上、こいつは増援を待てばいいだけな状況だからな。


 くそ、向こうから仕掛けて来る気も無さそうだ。

 どうする、そう考えると時間がない。

 やばいやばい、匂いの方をどうにかしないと……


 服を脱ぐのは意味がないよな。

 水被っても匂いは消えないよな、逆に濡れたとき独特の匂いが出る。

 ならアンモニアとかで相手の鼻を惑わすか……?


 (もどか)しいな。それにアンモニアの作り方なんて知らねえよ。なんか臭う鉱物とかなかったっけ。

 固体なら土魔法で出せるのに……


 あーもう、怖いしイライラする。

 落ち着け……って、無理だよ!

 臭いのダミーもねえし!

 遠距離は手加減しないといけないから避けられるし!

 てかさぁ、そもそも魔法印の光で位置がバレるし!

 持ってきた散弾なんか危なくて使えねえし!


 ん?

 散弾……


 そうか、散弾だ。

 あるじゃないか、こいつも言ってた臭うやつが。


 もうこれしかないしな。やるか。


「黙りか? どうした逃げ出したか?」


 誰が逃げるかよ。今から作戦決行だっての。



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