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「偽物の天才魔術師」はやがて最強に至る 〜第二の人生で天才に囲まれた俺は、天才の一芸に勝つために千芸を修めて生き残る〜  作者: 空楓 鈴/単細胞
第7章 机上の下剋上篇

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第173話 不運の連続


「やっと会えた……」


 ラトーナの手を握ってその存在を確かに感じた時、ディンの中で張り詰めていた緊張の意図がぷつりと切れて、自然と笑みが溢れた。


「よくここがわかったわね」


 ラトーナはディンに手を握られたまま、彼を見下ろしてフンと鼻を鳴らした。


「なんとなくね」


 人混みで溢れる会場からラトーナを探し出すには時間が足りない。

 そう判断したディンは、一つの賭けに出た。

 人混みを嫌うラトーナならば、会場のどこかにひっそりと隠れているのかもしれないと予測して、出来るだけ人気ない会場のテラスを探すことに作戦を変更。

 そして見事、一つ目のテラスにしてラトーナを見つけることができたのだ。


「……ところでさ、その頭の上の魔法陣は何?」


 一先ず落ち着いたところでディンは彼女の手を離して立ち上がったところ、彼女の頭上に浮かぶ魔法陣がちょうど目線の先にあったのだ。


「『反射の呪詛』よ。これを頭の上で常に発動しとけば、雪を弾くから濡れることもないわ」


 反射の呪詛は、対象にある程度の質量や体積がなければその効果を発揮しない。

 雪の粒一つ一つにまで術式対象を絞るような芸当には、相当な魔力操作の精度と集中力が必要だ。

 それをディンも知っているだけに、さらなる疑問が湧いた。


「何でわざわざそこまでして外にいるの? 寒いじゃん」


 いくら人混みが嫌いだとしても、室内に隠れる場所はあったはず。彼女にしては何とも非効率な行動だと。


「別に、室内は息が詰まっただけよ」


 そんなディンの問いにラトーナはそっけなく答えたが、嘘である。

 遡ること30分ほど前、会場で自分のもとに押し寄せたダンスの誘いに辟易していたところを、マルテ王子に逃がしてもらったのだ。

 『テラスに不審な魔法陣が設置されていたのでその撤去と見張りを頼みたい。そうすれば良いことがある』と語る王子。その真意を『読心』の遺産を発動して見破ったラトーナは、素直にその指示に従ったのだ。


「そう……なんだ……」


 全く納得はいかないが、しつこく問い詰めてもラトーナを怒らせるだけだと考えたディンは追及をやめる。

 ラトーナを弄ったことに始まったここ数日の素っ気ない態度やアセリアの『謝罪するべき』という発言から、ただでさえラトーナを怒らせている可能性が高いというのに、さらに火に油を注ぐ様な真似など間違えても出来ないのだ。

 

「……それよりも、私に何か言うことがあって来たんじゃないのかしら?」


 目を細めながらそう問いかけてきたラトーナに対し、やはり来たかとディンは唾を飲んだ。

 『何で怒ってるかわかる?』、『何か言うことがあるんじゃないの?』とは、男が女に言われて困るセリフの二代巨頭と言っても過言ではない。

 この手の問いの厄介なところは、答えを間違えるたびに質問者の機嫌が格段に悪くなってしまうので、実質解答チャンスは一度しかないことだ。

 しかし、ディンは焦らない。


「……ごめん——」


 どのみち当てずっぽで誤ったところでラトーナにはバレてしまう。

 なのでいっそのこと、潔く白状した上で誠意を示そう。ディンはそう決断した。


「猫の件で怒らせちゃったんだよね。まさかそんなに怒ると思ってな——」


「違うわ! いや、あれも腹が立ったのだけど……それじゃないわ」


「ごめん、じゃあわかんない。心当たりが多すぎる……」

 

 冗談も挟みつつ、素直にそう伝えると、ラトーナはキュッと口をへの字に結んで俺を睨みつけた。

 そして顎に手を当てて貧乏ゆすりをした後、俯きながらようやく口を開いた。


「…………なさぃ……」


「え?」


「私を誘いなさいよ!!!」


 くわっと顔を上げてそう叫ぶ彼女の顔は、酒にでも酔ったのかと思うほど真っ赤になっており、雪をも溶かしそうな勢いだった。


「ずっと待ってたのに! 何で私を踊りに誘わないのよ!!!」


 普段のクールさの欠片もなく、子供の様に地団駄を踏む彼女。

 あまりの衝撃に、ディンは呆気に取られていた。


「待ってたって、いつ……?」


「三日前からよ!」


「え……だってその三日間、全然目を合わせてくれなかったじゃん。てっきり怒ってるのかと……」


「怒ってるわよ! なによアセリアとかばっかり喋って! その前にまず私を誘うのが先じゃないの!?」


「……妬いたの?」


「やっ、妬い……だったらなんなのよ!」


 ラトーナは今日に至るまでの三日間、ディンにダンスに誘われるのを待っていた。

 しかしそれを意識するとどうしてもソワソワと落ち着きがなくなってしまうので、敢えて距離をとっていたが……タイミングの悪いことに、ディンはラトーナの猫へのだる絡みを揶揄った件を怒っているのかと勘違いされてしまい、お互いに避け合う形になってしまったのだ。


 そんな背景を瞬時に把握したディンは、アセリアとばかり絡む自分を見て内心でヤキモキしているラトーナの姿を想像して、思わず頬が緩んだ。


「何笑ってるのよ! 私は真剣よ!」


「ごめん、でもちゃんと口で言ってくれなきゃわからないよ」


「それは……私だって色々気を遣って……」


 簡単に言うな。ラトーナはそう思った。

 幼少期のディンとの出会いによって、他を顧みない奔放さを発揮するようになった彼女も、今や思春期真っ只中。他人から向けられる感情に敏感になる時期だが、幼少期から『読心』の能力を持っていた彼女ともなれば、病的なほど過敏になる。

 加えて自分が重い女だと自覚している分、恋愛的な要素が絡むと上手く気持ちを言葉に出来ないというのが現状なのだ。


「今更ラトーナを嫌いになったりしないから、前みたいな我儘なラトーナでいて欲しいな」


 賢くも童心を忘れず、猫の様に気まぐれに生きているラトーナが、ディンは好きなのだ。


「我儘なんて失礼ね」


「俺が失礼なのは昔からだよ」


「そうね」


 白雪が散りばめられた空に、二人の笑い声が響いた。


「じゃあ改めて言うわ。私を踊りに誘いなさい、ディン」


 居住まいを正したラトーナは、まっすぐな眼差しでディンを見つめる。

 ディンはそんなラトーナに微笑みながら手を差し出した。


「コホン……麗しきラトーナ嬢、どうか今宵、俺と一曲踊っていただけませんか?」


 声を低くしてお辞儀をしたディンを前に、ラトーナはどこか切なげな笑みを浮かべてその手を取った。


「遅いのよ……何もかも……」


 ラトーナがそう言いながらディンの手を取って直ぐに、ホールからは音楽が微かに流れてきた。

   

「雪で滑るから気をつけて」


「お気遣い感謝するわ」


 緩やかな弦の旋律に乗って、二人は視線を絡ませながら手を取り合って動き出す。


 沈沈と雪が降り注ぐテラスを長調の旋律が包み込み、春のような暖かみが訪れる。


 音楽が未発達な大陸で、近年の音楽文化発展の台風の目となっているアルベルトというミガルズ王国出身音楽家の、代名詞とも言える4部構成曲の『2番・風濤ふうとう』。

 ゆるやかなテンポながら、独特のリズムや多くの音を重ねたことで、まるで祭りの中にいるような賑やかさが演出されているが、この曲が持つ本来の物語は『嵐の前の騒めき』。

 それは図らずも、これからディンとラトーナが辿る運命を予言するかのようなものであった。


ーーー

【ディン視点】


 念願叶って、綺麗な月の下でラトーナと踊ることができた。

 雪が降ってて寒かったけど、まあ動いてるうちにあったまったのでそこはどうでも良い。


「ダンス上手になってたね」


 踊り終えて1番に、ラトーナにそう言った。

 彼女と最後に踊ったのは3年ほど前、リニヤット家の屋敷で彼女の社交会に向けたダンスレッスンに付き合った時だ。

 ラトーナはインドア派の割に運動神経が良いから、その時も別に下手だったわけじゃないのだが……前と比べて動きに余裕が出た気がする。

 こう、静と動のメリハリというか流麗さというか、そんな感じのものだ。


「貴方も上手だったわ。戦いばかりしてるから、もっとせっかちな動きをするかと思った」


「猛練習したからね」


「それはアセリアのためかしら」


「悪かったって」


 そんな軽口を叩き合いながら、二人でテラスに体重を預けてその先に広がる景色をぼんやりと眺め出した。

 背後のホールから漏れ聞こえてくる参加者達の喧騒も、程よく温まった体を冷やしてくれるこの寒さもなんだが心地いい。


 しかし、余韻に浸ってばかりもいられない。

 せっかく良い雰囲気だったのを壊す事になるのは気が引けるが、俺は先程起こったトラブルをラトーナに報告しなければならない。


「リッシェ家と魔術ギルドが手を組んだですって……!?」


「そうみたい。アセリア先輩がいなきゃ、危なく嵌められる所だったよ」


 普段から冷静なラトーナもこればかりは表情を曇らせていた。

 俺達の研究室の成り上がりがかかっているとかそんな軽い話じゃなくて、下手をすれば命を狙われる事態にもなりかねないからだ。


「内通者がいたってことね……」


「それしかないよ」


 研究室にはラトーナが結界を張っているので、潜伏して聞き耳を立てている人間がいれば術者のラトーナが気づく。というかそもそも、研究室は外部に声が漏れるような構造ではない。

 例外として高価な魔導具や特級魔術、はたまたラトーナのような『王の遺産』の所持者なら情報の抜き取りは可能だが、それに至っては対策が困難すぎるのでいっそ考慮に入れない方が良い。


「犯人はジョージ室長かカルロスか、アセリアという可能性もあるわね……」


「いや、アセリア先輩は違うと思う」


「その根拠は? まさか友人だからなんて言わないでしょうね?」


「先輩はさっき、その敵の攻撃から庇ってくれた。裏切り者ならそれをやる意味がない」


「それは早計よ。その献身もアナタを油断させる道程の一つかもしれない。もしくは、突貫で組んだ作だから綻びが生じた結果の可能性もあるわ。アセリアを買収しきれなかったとかね」


「ッ……」


「まあ何にせよ、私の力で探れば良い話よ」


「ごめん、助かるよ」


 ラトーナは自力で『読心』を制御出来るようになってからというもの、戦闘時以外はその力を制限している。

 まあ誰しも、他人の思考が丸聞こえの状態で生活なんかしたくないからな。

 それに、幼少期のトラウマもあって、やはり人の心を読むのには抵抗があるように見える。

 そんな彼女に力を使わせてしまうのだから、俺も面目ない。


「謝る必要はないわ。これは私にとっても大事なことよ」


「わかった、とりあえず対応は明日からにしよう。俺は一度ホールに戻るけどどうする?」


「私は時間をずらして戻るわ。一緒に戻ると色々勘繰られるでしょう?」


「そうだね」


 そんなわけで、目的も果たすことが出来たのでラトーナとは一旦ここでお別れ。

 気を回してくれあ王子に俺を言わないといけないしな。


ーーー


 社交会は特にトラブルにも見舞われないまま、無事終わりを迎えられた。

 生徒会役員達の努力の甲斐あって、生徒達からの感触も良かったと王子が喜んでいた。

 俺も王子やアセリアパイセンのおかげで、ラトーナと踊ったり存分にイチャつくことが出来たので、まさにハッピーエンドと言って差し支え無いだろう。


 しかし、ハッピーなのはそこまでで、その翌日には最悪のニュースが俺の元に飛び込んできた。

 

「魔導具がパクられた!?」


 朝からアセリアに呼び出されて現代魔術研究室に来て早々、そんな事実を沈痛な面持ちのジョージ室長から告げられたのだ。

 

 より詳細に語るならば、昨日俺達が社交会に出席している裏で、古式魔術研究室から氷結魔術魔導具の発明が発表された。

 ラトーナが慌てて研究室の物置に置いてあった氷結魔導具の完成品を確認したところ、五つの内二つが偽物とすり替えられていたそうだ。


「でもなんで……あれは簡単に再現できるようなものじゃ——」


「カルロスが情報を流していたのよ……」


 そうため息混じりに答えたのは、研究室の隅の机で頭を抱えているラトーナだった。

 

 そういえば、確かにこの部屋にいるのはラトーナ、俺、アセリア、ジョージだけで、カルロスの姿が見当たらない。


「じゃあ裏切り者はカルロス……?」


「そうね。多分、リッシェ家に上級魔術の情報を流したのも彼ね。内容までは漏れてなかったのは不幸中の幸いかしら」


「それは……まあ、そうだけど」


 上級魔術の習得メソッドに関する資料は、俺とラトーナだけで共有していたからな。

 ただの研究員でしかないカルロスではそれを手に入れることが出来なかったのだろう。

 

 ていうかラトーナは随分と冷静だな。カルロスとは親しくなかったが、裏切り自体が俺にとっては結構ショックだ。

 だがひとまずその感情は後回しにして、俺は次々と浮かんでくる疑問を一つ一つ処理することにした。


「いやでも、そもそもカルロスはどうやって魔導具の構造を知ったんだ?」


 勿論、彼にもある程度仕組みは解説したが、実際に術式基盤を組んだのはラトーナとアセリアで、カルロスは実物の中身を見ていない。

 つまり術式の解析事態は古式魔術研が行ったということになるが……それは少し領分から外れた技能だ。

 というかそもそも、分解した時に起こる自爆をどうやって回避した?


「……魔導具研か、法陣研と組んだのかもしれないねぇ」


「なるほど」


 ジョージの呟きで、ひとまず中身の解読が出来た理由は見当がついた。

 どちらの研究室も魔法陣を形成するヒエログリフのような文字……『樹伝字ユドラクティ』とかいうものを研究対象としているだけに、それの解読は容易いだろう。


「なら、おそらく共犯は魔導具研究室でしょうね。彼等からすれば魔導具で一儲けを狙う私たちはさぞ不愉快に映ったでしょうから」


「となると、暫定の敵は古式魔術研と魔導具研ということになるねぇ……」


「あとリッシェ家や魔術ギルドもいるわよ」


「いや、リッシェ家はともかく古式魔術研の方はなんとかなるでしょ。うちの魔導具は王家のお墨付きなんだから、盗作である証明さえ出来れば——」


「向こうの氷結魔導具は、刻印魔術を用いた独自の構造だということをギルドが証明しているわ」


「……それは、刻印魔術の性質上あり得ない」


「その性質をひっくり返すような技術を確立したと言えばなんとでもなるのよ。

 それに、私達の魔導具には自爆機能があるから、中身を見て複製できるはずがない。という言い訳も出来るわ」


 なるほど、流出防止のためのシステムを逆手に取られたわけか。


「マズイですよ……このままじゃ魔導具の利益も全部取られちゃいます……」


「ギルドやリッシェ家の対応もしないと、さらに搾り取られることになるわね」


 顔を青くしてあたふたとしているアセリアに、ラトーナがそう追い討ちを加えた。

 あまりに怖がらせないであげて欲しい。まあ事実でしかないのだがな。


「どうします、室長?」


「わっ、私かい!?」


 俺に指示を仰がれて、びくりと肩を振るわせて情けない声を出したジョージ。

 人柄も良くて研究者としては優秀なのだが、こういった政治的な話には弱いようだ。一応貴族家出身のくせにさ。


「決定権は室長にあるんですから。とりあえず室長が方針を決めない分には動けません」


「そうよ、戦うのか遜るのかハッキリ決めなさい」


「私は……せっかくみんなと出会えて研究も進んできたのだから——」


「そんなことどうでも良いのよ。勝ちたいの? 勝ちたくないの?」


「……勝ちたいよ」


 ラトーナに迫られて、ジョージ室長は意を決したようにそう言った。

 相変わらず頬はコケていて骸骨のような生気のない顔立ちだが、言葉には確かに熱意がこもっていた。


「じゃあ、やってやりましょうか!」


「「「おー!」」」


 室長の願望は別としても、やられっぱなしじゃ気分が悪いもんな。

 俺にとってもここは心地の良い場所なんだ。それを壊そうってなんなら、とことん嫌がらせしてやる。


 そんなわけで、俺たちは改めて机に座り直して対策を話し合うのだった。

 ひとまず対策の方針を話し合って、会議はそこでお開きとなった。 

 次の会議は明後日。それまでに情報収集など行動を起こす準備をしなければならない。

 まったく、ただでさえ冬越しで慌ただしい時期に仕事を増やすなんてやめて欲しいものだ。


 そんな苛立ちをなんとか鎮めながら寮の自室に続く長い廊下を歩いていると、俺の部屋の前に人が立っていることに気づいた。


「アインじゃないですか」


「あ、ディン! 待ってたんだぞ!」


 ある程度近づいたところで声を変えると、アインはまるで外出から戻った飼い主を迎える犬のような表情で駆け寄ってきた。

 うん、いつものアインだ。昨日の物語の姫様のような美少女の影もない、剣バカで頑固なやんちゃ娘。まるで実家のような安心感だ。


「待ってたって……何かあったんですか?」


「む、君が昨日言ったんじゃないか! 話したいことがあるって!」


「あっ……」


 背中から何かがヒュッと抜けるような嫌な感覚があった。

 やってしまった。そういえばアインにラトーナの件を話そうとしていたんだった。

 

 今話す……のは無しだな。流石にタイミングが悪すぎる。うん、これは逃げじゃない。


「すみません、ちょっと今研究室が大変な事になってるから、それが済んでからでもいいですか?」


「え、あ、うん……良いけど……」


「わざわざ時間まで取ってもらったのに申し訳ないです」


「良いんだ。それに、君は卑怯だが約束を守ってくれる男だからな!」


 そう言って眩しい笑顔を見せるアインを前にして、胸に痛みが走った。

 ああくそ……やめろよな、これからフラなきゃいけないってのに、そんな態度を見せられると罪悪感が半端じゃない。

 

「そ、それじゃあまた明日」


「うん! 頑張ってね!」


 結局、罪悪感に押しつぶされそうになった俺は、逃げるように自室へと戻った。

 

「はぁ……」


 ブレザーも脱がずにベッドにうつ伏せて倒れ込んで、枕に顔を埋めた。


 俺は約束を守る奴……ね。

 一体何を根拠にそんな言葉を吐いたのだろう。これからその約束を破ろうとしてる人間に。


 

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