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俺と天使の魔王狩り  作者: くままま
2/2

一日の始まり

窓から朝日が差し込む。鳥が演奏会を開いている。田舎特有ののどかな朝だ。

家の中はキッチン、テーブル、いす、ベット、食料保存庫と必要最低限のものがそろっている。

すごく住みやすいログハウス。この家を作ったのは俺。ソラ自身でもある。


しかし、意識はあるものの眠気が全く覚めない。

「…まだ寝てたいよ。むにゃむにゃ…」

そんな些細な願いも神様には届くことはなかった。


「ほら、お兄ちゃん起きて!!もう朝だよ!!仕事の時間だぁぁぁ!」

フライパンとお玉を叩き合わせて、妹チトセの演奏会が始まった。

突然のことで思わず体がびっくりするくらい飛び跳ねた。

鳥たちも同じようで飛び立ち、演奏会は終わってしまった。残念、まだ聞いてもうひと眠りしたかったのに…


「また寝ようとしてない…?」

さすが我が妹。勘が鋭すぎてお兄ちゃんこわいぞ。


「そそっそっそんなことないよ。今日もお仕事頑張っちゃうぞ!」


「すごい言葉詰まってるし、絶望の表情が隠しきれてないよお兄ちゃん…」

働きたくないなぁ。家で無限にゴロゴロしてたいなぁ。

でも、ご飯も食べられなくなるのはお互いにとって良くないからな、、、

今日も頑張りますかね。





「んじゃ、仕事行ってくる」

家を出る支度を終わらせて外に出ようとすると。

「え、お兄ちゃんさすがに早くない?」

「まぁ、早めに出ても悪いことはないだろ。持って帰れるものも増えるし」

「そうなんだけど…」


顔を俯かせて袖を引いてきた。

あぁそうか、いつも悲しいのか。


俺たちは二人で暮らしている。親はいない。お母さんもお父さんも顔すら見たことがない。

村の人によると魔王軍にさらわれたらしい。今はどうなっているのさえわからない。

「お兄ちゃんがいな…」

「俺はいなくならない。」


チトセが話し終わる前に割って話す。少し驚いた顔をしているが続けて話をする。

「それに何度も約束してるだろ?」

手を引っ張ってチトセを抱き込む。そのまま俺の胸に顔を預けた。


「うん…。ありがとうお兄ちゃん。」

あのー、あれだな。今日は質素なご飯になるからな許してくれ。

しばらく二人で抱き合った。





家を出るのが遅くなってしまった。

「おう、ソラ。今日は遅い出勤だな。神様にでも祈りすぎたか?」

ハハッと冗談交じりに声をかけられた。

急に話しかけられて体がビクッと飛び跳ねてしまった。


「ミナトこそどうした?家の面倒は見なくていいのか?」

こいつはミナト。筋肉量もとても多く格闘家でもやっているのか?と思うほどだが、家の神社を継いで神主を任されている。こんな小さな村にも神社はある。やっぱり神様の存在は偉大なのかもしれない。

まぁ俺はそんなに神とやらを実感していないが…

俺とそんなに歳は変わらない…と思うのがとても面倒見のいいお兄ちゃん的なポジションだ。


「今日はちょっとな…あんまり家にいたくないんだ。」

ばつが悪そうだが、笑って頭を搔いている。


「そうなのか」

それ以上の詮索はしない。関係がしっかりできているからこその対応なのかもしれない。

気になりはするが隠すということはあまり聞いてほしくないことなのだろう。

ならすることは一つだな。


「んじゃあ。この後暇?」




「いやー大漁大漁!!」

ガハハと大きな口を開けてミナトは豪快に笑った。

ブードを何十体と大量に狩った。ブードは牙が2本、茶色の毛皮とても好戦的な性格であるが、その分筋肉が締まっていてボラ肉はかなり美味い。


それにしても

「こんなにブードを倒したのは初めてだよ」

「これは盛大なパーティーでも出来そうだな!」

やっぱりミナトは強い。危ない様な場面も無かった。

何故、神主をやっているんだろう?


手押し車にブードを積み上げる。

「なんでミナトは神主になったんだ?」


ミナトの動きが止まった。

「あー。まぁ大したことじゃねぇよ。それよりも早く帰ろうぜ。」

なんか隠し事多くね?少し変な空気になってしまったので急いで狩った分を積んで歩き出す。


「それにしても本当に大した量だな。」

「ミナトが強いんだよ」

「そう言ってもらえると嬉しいな。」

ガハハと大きな口で豪快に笑った。


「いずれお前にも話す日が来るさ。きっと」

神主の話だろうか。なんでミナトの話なのにそんな曖昧な返答なのだろうか?

「楽しみにしておく」

ありきたりな返答しかできなかった。





村に帰るともう日も沈みかけ、空はオレンジ色になっていた。

「つかれたな」

「ありがとね。仕事手伝ってもらっちゃって。」

「いいってことよ。俺とお前の仲だろう?それにさ、家にもいたくなかったし…」


そういやそれで俺が誘ったんだったな。それじゃあもう一つ。

「うちでご飯でも食っていかないか?こんなに狩ってきたら二人だと食べきる前に腐りそうだし。」

それっぽい理由を付けて誘ってみる。

「それじゃあ、ありがたくお邪魔させてもらうよ。」

返事は肯定的だった。一人分追加してもらうのも大変だろうが、自慢の妹ならたやすいだろう。


…たやすいよな?

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