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救世の剣が舞い降りる  作者: μ's
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第一話

第一話 異世界転移

剣人は光り輝く祭壇に立ち、直後視界が真っ白になり気づくとそこは夢とも現実ともつかない様な優しい光の世界。剣人はあの祭壇から転移したのだ。

「すげー、何だここ。」

「ようこそおいでなさいました、神崎剣人様。ここ、光の間へ。」

声がした。件のあの女声が聞こえた。剣人が声がした方に顔を向けるとそこには、純白のドレスに身を包んだ桃色の長髪の少し童顔の20代前半と思わしき美しい女性が佇んでいた。

「おお」

剣人は思わず感嘆した。美しいだけでなく神秘性すら感じる女性。女神と名乗られても猜疑心の欠片も起こらないだろう。

「おっとそうだった。お前だな声の主は?」

「はい、その通りです。」

「まあ一応感謝する。俺を助けたからな。でも何で俺だけなんだ?父さんと母さんも助けられたはずだ。」

「いいえ、そこまでは出来ません。貴方に干渉したことすらグレーゾーンなんですから。」

「グレーゾーン。お前まさか。」

「はい、私は一応女神です。端くれですがね。」

言った。言いやがった。この女は女神だったのだ。端くれらしいが。

「まじか。」

「まじです。」

「まあ、今更疑わねーし驚きもしねーけど… じゃあ俺敬語使った方がいいな。」

「その必要はありません。むしろ私が敬語で話すべきです。」

「…何で?端くれでも何でも女神だろ。なら」

「それは貴方が私より強いからです。」

剣人は目を見張った。俺が、人間のしかも未成年。そんな奴が女神より強いだと。流石にこれは信じられない。

「流石に冗談だろ?」

「いえ、まあ確かにまだ私には及びませんが、いずれ近い内に貴方は私を超える。」

「そうかそうか、そりゃそうだ。俺がまだお前より強いわけねーよな。…ん?まだ?おいおいその言い方じゃあ俺が女神より強くなるって意味に聞こえるんだが。」

「はい、貴方は強くなりますよ。誰よりも!」

「んな強く言われても。まるで確定事項みたいな。」

「はい、確定事項です!」

「それ好きだなお前。ははぁ読めたぞ。お前俺に修行させるつもりだな。でもって人間が神を超えた、すごいだろ!的な実績を立てて端くれ女神卒業を図るつもりだ。そうだろ!」

探偵さながらにビシッと女神を指差し事の真相を暴いた剣人。俺カッコイイなんて剣人が思っていると

「ふむふむ それもいいですね。ってちがーーう。」

違った。こうなると恥ずかしい。

「そうじゃなくて貴方にはやって頂きたいことがあります。」

「そうだったな。で、やって欲しいことって何だ?」

「貴方には異世界に行って頂きます。」

「ほう、異世界があるのか。」

最早驚かない。あの小一時間で一生分驚いた。

「そっちにはやっぱ魔法とかがあるのか?」

異世界と聞いたら第一に気になる事だ。だから剣人もまずそれを問うた。

「勿論ありますよ。魔術が普及していて世界中の7割の人間が魔術を使います。魔術は使えなくても全ての人が魔力を保持しています。魔術社会ですからね。反対に貴方の世界は科学社会でしたね。」

やはりあった。てか魔術社会とは驚いた。全人類魔力持ちとかまじか。そこで剣人は大事なことを問う。

「なあ、女神。俺魔力持ってないんだが。そんなんで異世界で生きていけるのか?」

そう、そこなのだ。科学社会生まれの剣人にとって魔術社会は馴染めない。魔力がないのだ。不安げに問う剣人を見て女神は優しい微笑みを湛えて言った。

「大丈夫です。私が魔力を与えます。貴方には素質があるので、問題なく馴染むと思いますよ。未来視も見られましたしね。」

「そうか。ああ、良かった。良かった。まじで。素質がある、か。だから俺だけ引き抜いたのか。」

「そういうことです。申し訳ございません。」

「いや、いいよ。死ぬところだったしな。で、異世界に行って俺は何をすればいいんだ?」

「貴方には異世界―カルディアル―を来たる脅威から救って頂きたいのです。」

いきなりそんなことを言う女神。

「いきなり救世の英雄になれと。無理だ。流石に無理だ。」

剣人は全力で拒否する。そりゃそうだ。魔術の無い世界で生きてきた男がいきなり魔術を使って世界を救う。そんな芸当出来るわけない。しかし当の女神は

「大丈夫です。時間はまだまだあります。だから魔術に慣れる時間もあります。鍛えて十分な力を付ける時間もあります。どうか御安心を。」

そんなことを言ってのける。

「御安心をってなあ。俺が唯一出来る武芸っていったら剣道で、魔術には活かせそうにも無いんだが。」

「まあ、魔術師としての立ち回りや戦闘スキルは向こうで追追身に付けられますし。それに剣の腕に自信があるなら魔術剣士を目指すのがおすすめです。」

「ほう、魔術剣士なんてのがあるのか。」

剣人に光が差した。まあここでは常時光が差しているが。

「なあ、ホントに俺がやらなきゃいけないのか?」

「はい、貴方しか適任者はいません。」

そこで剣人は決然と拳を握り

「分かった。異世界に行く。」

「ありがとうございます。」

女神は母の様な慈しみを込めた瞳で剣人を見詰め

「ではまず貴方に魔力を与えます。」

そう言うと女神は剣人の頭頂に掌を乗せる。不思議な感覚だ。頭が冴え渡る。脳構造が進化している。

「こ、これはっ!」

「まず脳が魔力の流入による負荷に耐えられるように構造を変えました。オマケに向こうの世界の全ての国の言語を理解出来るようにしました。ペラペラですよ。」

「まじか。ありがたい。」

「いえいえ。世界を救って頂く方にこれくらいの餞は当然です。ではいよいよ魔力注入です。」

遂に来たかこの時が。期待で胸を膨らませる剣人。女神が剣人の胸に掌を当てる。すると途端に剣人の身体中に力が漲る。途轍もない量の不思議な何か―魔力―を感じる。胸の奥底が温かい。しかし同時に身体中が痛い。筆舌に尽くし難い痛み。尿路結石以上に筆舌に尽くし難い痛み。全身が崩壊しそうだ。

「ぐあああああああああああ!」

時間にして1分弱。だが何時間に思える痛みに耐え憔悴したように力無く剣人は問う。

「魔力は得られたのか?」

これだけの痛みに耐えたのだ。失敗したとは言わせない。

「勿論ちゃんと魔力を有していますよ。先の痛みは魔力を流すに足る身体へと構造が変わったことによるものです。おめでとうございます。これで晴れて向こうで生きていけますよ。」

「そうか。」

剣人は安堵の声を漏らす。そして異世界に期待と不安を抱く。まだ見ぬ魔術社会、新たな出逢いに期待しながらも来たる脅威に立ち向かわねばならない使命にここに来て不安になる。逃げたい。でも逃げたら死ぬ。どうせ死ぬならカッコよく死のうじゃないか。剣人はそう開き直り覚悟を決め「異世界に行く。」

「分かりました。」

女神は転移の術式を組み、待つこと数分。すると剣人の足下に転移陣が浮かび上がった。

「それではここでお別れですね。」

「ああ、そうだな。色々とありがとう。そういえば名前は?」

剣人は女神の名前を訊く。ここまで女神は名を名乗っていない。ここで訊くしかない。だが剣人が予想だにしない回答を女神はする。

「私に名前はありません。」

「何でだ。」

「私は端くれ女神です。いや、女神ですらありません。」

「え。だって女神なんだろ。」

「女神や神には魔力は勿論更に神力という神々にのみ扱える天上の力を持っています。」

神力?新たな単語が出てきたぞ。

「ですが私は神力を扱えません。ですから名前を頂けませんでした。」

物悲しげに力無く微笑む女神。

「そんな」

そう聞いて憤りを覚える剣人。

「ひでえ話だ。力が無いだけで除け者にするなんてそれでも神かよ。」

「優しいのですね。」

「当然だろ。人間なら可哀想だと思うのは当然だ。」

「貴方は眩しい。貴方の優しさはカルディアルの多くの国にとって眩しすぎる。カルディアルでは艱難辛苦の連続でしょう。ですが貴方は救世主。あらゆる苦境を跳ね除け成し遂げるでしょう。だからどうか向こうに降り立ってからもそのままの貴方でいてください。」

そう言って女神は姿を消した。そして視界が暗転し剣人は意識を手放した。

こうして剣人は異世界―カルディアル―に転移したのであった。

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