第十二話
第十二話 皇帝ライデルハイムとブリオ討伐
ダリス・ウェネーシア・ファーブルが死んだ。その事は一夜にして帝都中に知れ渡った。帝都ウェネーシアの南方を統治していたダリスは私腹を肥やしたいが為、圧政を敷いていた。その領主の死によって領民は皆圧政から解放され、水を得た魚のように、永らく失っていた活気を取り戻した。そして新たな領主としてウェネーシア南方辺境の領主、ブリオ・ウェネーシア・ナバルがダリスが統治していた地域を統治することとなった。新領主ブリオは人徳者である王侯貴族として有名であった。王侯貴族は特に領民からの搾取が取り分け多い。そんな中でブリオは常に民に寄り添い、悩みや意見を聞き、出来るだけ善政を敷く努力をしていた。そのためブリオ領に移住する者も多かった。そんな彼を良く思わない王侯貴族たちが彼を陥れ、辺境に追いやった。その筆頭が他でもない、ダリスその人だった。こうしてブリオはウェネーシア南部の辺境の村落の新領主として左遷されたのだった。
ダリス・ウェネーシア・ファーブルの死は皇帝派を震撼させた。ダリスは発言力のある皇帝派王侯貴族。彼の死は皇帝派の痛手となった。
「どうします。南方の統治権がブリオ・ウェネーシア・ナバルに移譲された。」
「奴は我々の所業を徹底的に追及する。」
「民草共からの信頼が厚い。これは我々にとっての脅威となる。」
「また引きずり下ろすか。」
「どうやって。」
「あの時は権力のあるダリスが居たから成功した事であって、現在は民衆派の勢力が盛り返しつつある。」
「まずい状況だな。」
皇帝派の緊急会議は混迷を窮めていた。現在ギルファンゼールス帝国は、民衆は貴族の栄華を極めるための肥やしだという国是を肯定する皇帝派と、民衆を大事にしてこそが国だと主張し、皇帝派に異議を唱える民衆派に二分している。数年前までは皇帝派の方が強かったが、最近は民衆派の勢力が勢いを増している。両派閥の対立は更に深まり、情勢は混沌を窮めるだろう。
ギルファンゼールス帝国皇帝玉座の間。そこに皇帝ライデルハイム・ドルトリンド・ウェネーシア・ギルファンゼールスは鎮座し配下からの報告を聞いていた。
「ダリスが死んだか。」
「はっ。昨夜何者かによって殺害されたと見受けられます。」
「あやつは領民に重税を掛けその内の何割かを癒着していた。癒着というのは見逃せんが、問題はそこでは無い。問題は癒着した金を領民に返還した事だ。ブリオ・ウェネーシア・ナバル。嘗て辺境の村落を治めておった名許りの王侯貴族。民草共など捨て置けば良いものを。善政など、下賤な奴らを付け上がらせるだけ。下策よ。我が覇道の障害なり。兵を集めよ!今宵ナバル領に侵攻し、ブリオ・ウェネーシア・ナバルを討伐せよ!」
「御意。」
皇帝ライデルハイムが牙を剥いた。
ブリオ・ウェネーシア・ナバル討伐隊が編成され討伐隊はナバル領に向けて進軍を開始した。それと時を同じくして旭日興国団のアジトにて、興国団全員が緊急招集を受け、アジトに集まっていた。
「初めましての人も居るな。俺が旭日興国団のリーダー、クリストフだ。」
「初めましてリーダー。剣人です。」
「リアです。」
「2人とも話に聞いている。今日は緊急招集だ。こういう事態もあることを覚えておけ。」
「で、何なのさ、緊急招集って。」
「皇帝が動いた。」
今の言に全員に緊張が走る。皇帝。ギルファンゼールス帝国の頂点に立つ者。この国を動かし護る。その一方で平民を必然の如く虐げる。その覇道を指導し恣にする。そんな男が動き出した。
「皇帝はダリスに代わって領主となったブリオ・ウェネーシア・ナバルを討たんと討伐隊を向けた。今夜ナバル領は戦火に晒されるだろう。」
「でも何でいきなりブリオさんを殺しに行くんだ?」
「ブリオは民衆派だ。皇帝派の敵対勢力に所属する王侯貴族。彼はダリスが癒着した金を領民に返還した。それを皇帝は国に対する反逆と看做した。」
「酷い。当然の事をしただけなのに。」
「民草の金は皇帝の金。民草の食料は皇帝の食料。全ては皇帝の為にあり、平民は皇帝に命を捧げる。平民共が今生きてられるのは皇帝の情けに因る猶予の生。これが皇帝の是だ。」
剣人の胸に怒りが込み上げる。皇帝こそがこの国の理不尽の全ての元凶。ならば許してはならない。これ以上奴をのさばらせてはならない。
「ナバル領に行くぞ。仕事は討伐隊の壊滅。」
「おし。殺るか。」
「久々に殺りますか。」
「楽勝よ。」
皆口々に意気込む。剣人とリアも
「戦おう。ブリオさんを護ろう。」
「そうね。奇特な方だもの。失う訳には行かないわ。」
「出発だ。」
旭日興国団も動き出した。
ブリオ・ウェネーシア・ナバル討伐隊はナバル領に入った。ナバル邸はウェネーシア南部の更に南部、南の最果てに存在する。それもダリスがブリオを陥れ、最果ての村落に左遷したためだ。討伐隊の進軍はまだまだ続く。討伐隊はナバル領のど真ん中を通行するため、彼等の進軍を目撃した領民たちは不安を覚え、領内は騒然となる。
「騒がしくなってきたな。」
「黙らせるか。」
「止めろ。我々の任務は領主ブリオ・ウェネーシア・ナバルを討伐することだ。領民が五月蝿かろうが放っておけ。」
「隊長、少し休みましょうよ。」
討伐隊の隊員の1人が休憩の提案をした。
「確かにまだまだ歩くな。全く、南部全域の領主なのだから中心部に居を構えた方が良いのでは無いのか。よし分かった。進軍止め。休憩だ。」
隊長が隊員の提案を呑み、休憩の合図を出した。
「おい、姉ちゃん。何か飲ませてくれよ。」
「なにをご注文ですか?」
「まあ、行軍中だし、茶で我慢しとくかな。」
「お茶ですね。かしこまりました。少々お待ち下さい。」
皆銘々に飲んだり食べたり、休憩時間を満喫している。この時間が彼等の仇となった。
「全員休憩止め。再び進軍を開始する。」
隊長の進軍再開の合図で討伐隊はまた進軍を開始した。
旭日興国団もナバル領に入った。
「ナバル邸は最南端の村に建っている。討伐隊はそこまで行くつもりだ。到着するまでに叩くぞ。」
「あいよ。」
ガドロが了解の相槌を打つ。
「討伐隊の人数はどれくらい居るんですか?」
剣人が敵の人数をハガルに訊く。
「少数精鋭だ。50程度だ。」
「50ですか。」
「その数だと魔術師も居るわね。」
リアは討伐隊には魔術師も数人含まれているとの見解を示した。これに剣人は感心したように言う。
「凄いな、リア。何で分かるんだ?」
「大体想像が着くわ。少数精鋭を編隊する時は必ず数人は魔術師を入れるものよ。どんな相手であってもね。」
「詳しいんだな。俺なんかそういう事には疎いんだよな。勉強になったよ。ありがとな。」
「私なんかよりハガルさんやガドロさんの方がずっと詳しいと思うよ。」
「先を急ぐぞ。全員付いて来い。」
リーダークリストフの声で興国団は歩を速めた。
ブリオ討伐隊は進軍すること4時間、遂にブリオ邸のある最南端の村落タマス村に到着した。
「漸く着いたか。長い行軍だった。ブリオ邸を目指す。もうすぐだ。気を引き締めろ。」
隊長のその言葉に隊員たちは皆力強く声を上げる。
「おおおーっ!」
「そうだな。気を引き締めないとな。」
だが、隊長のその言葉に隊員以外の者が反応した。
「誰だ!出て来い!」
「出て来てやるとも。」
そう言って1人、2人、3人、と次々に鬱蒼とした木々の中から人影が飛び出した。
「誰だ貴様ら!」
「教えてやる義理は無いな。叩き潰すぞ。掛かれっ!」
クリストフの掛け声で旭日興国団の全団員が一斉に魔術を放つ。
「ファイアランス。」
「水弾。」
「ウィンドカッター。」
「ストーンボール。」
様々な属性の魔術が討伐隊を襲撃する。これに討伐隊は早くも瓦解。一般兵は壊滅。残るは魔術に心得のある討伐隊隊長の二グマと編入した魔術師7名のみ。
「少数精鋭も大したこと無いな。」
ジノが嘲笑う。
「てか弱ええんだよ。弱小小隊なんじゃね、こいつら。」
マイルのあからさまな嘲笑に討伐隊隊長二グマが堪らず憤慨する。
「貴様ら、襲撃が成功しただけで図に乗りやがって。目に物見せてやる。風拳。」
二グマが魔術を放った。風を巻き上げて拳を作り上げ、それをマイルに叩き下ろした。
「風属性魔術の応用か。やるっすね。伊達に隊長やってないってことっすね。でも。」
軽くステップを踏み、風拳を避ける。
「まだまだ。」
何度も何度も振り下ろす。叩き下ろす。複数個作成し、空から風拳のラッシュを見舞う。
「流石。でも甘い。」
これにも軽々反応し造作も無く避ける。危なげなど微塵も無い。掠りもせずいなし続ける。
「そろそろこっちも行くっすよ。お手本を見せるっす。炎拳。」
反撃とマイルが魔術を放つ。それは二グマの風拳の炎属性バージョン。炎拳。滾る炎の奔流が拳を形作る。灼熱の拳の群れが二グマ目掛けて釣瓶打たれる。これを二グマは躱せない。
「ぐあっ。」
急いで防御魔術を展開したが間に合わず、左腕を焼き潰された。
「あーあ、焼けちゃった。初めからそれやってれば結果は違っただろうに。勝負勘が足りないっすよ。」
腕を焼き落としておいてその上駄目出しするマイルに、二グマは遂にキレた。
「ああぁぁぁっ!殺してやるーっ!」
持てる限りの魔力を総動員し、超特大の風拳を作り出し、マイルに撃ち向けた。それは最早壁。拳と言うより壁と形容した方が適している。拳の壁がマイルを押し潰さんと逼迫する。しかしマイルはこれにも全く動じず、声高らかに詠唱する。
「巨人の炎拳。」
瞬間、業火が渦を巻き、巨大な拳に変形する。そして超特大風拳に真正面から衝突し、拮抗状態を作り上げた。
「おのれー、小癪な。」
風拳が勢いを増す。風拳の風の暴威が炎拳を直撃し、煽り立てる。
「頑張るねー。でもそんなんじゃ消えないっすよ。」
「死ねぇーい。」
「死ぬのは、そっちっす。」
巨大な炎拳がもう1つ生まれる。壁の様な風拳も流石にこれには太刀打ち出来ず、拮抗状態にあった風拳が勢いを失い圧され始めた。みるみる圧しやられる風拳。二グマは迫り来る二つの炎拳に
「ははっ。まさかここが墓場になるとはな。」
乾いた笑みを浮かべ、業火の拳に焼き潰された。後には灰も残らなかった。
剣人とリアは討伐隊の魔術師の1人と戦っていた。
「ファイアランス。」
剣人のファイアランスが敵の足を止める。
「水蛇。」
そこへ透かさずリアの水属性応用魔術、水蛇が足を止めた敵に絡み付く。
「このっ。」
水分を奪われ動きが鈍る魔術師。
「サンダー。」
そこへ剣人のサンダーが襲い来る。
「あぎゃーっ。」
みっともない叫びが夜のタマス村に谺した。
「ナイス、ケント。」
リアが剣人の戦績を賞賛する。
「リアの水蛇のお陰だよ。」
「ううん。ケントのサンダー、前は溜めが必要だったでしょ。その溜めが無かった。だからこんなに早く仕留められたんだよ。」
「褒め過ぎだ。リアはいつも魔術選択が適確だ。だから遠慮無く大技が撃てるんだ。」
お互いを賞賛し合う2人。そんな戦場に似つかわしく無い微笑ましい会話は、2人の居る空間だけが切り取られているかのように、鮮やかで美しい、優しい空間を作り出していた。
「くっ、苦しい。」
「苦しいの?辛いの?」
「がはっ。た、助けて。」
「助けて欲しい?」
「ああ。勿論。」
「それじゃあ、私の言う事、聞いてくれる?」
「聞く。聞きます。だから助けて。」
落ちた。ネーラは確信した。
「じゃあ、あの人殺してくれる。」
「イェス、マム。」
恍惚の表情で昇天している魔術師。彼はネーラの言った通り、仲間の魔術師の所へ向かって行った。
「アクアレイピア。」
水属性中級魔術、アクアレイピア。圧縮し尖形に練り上げた水の西洋剣を撃ち出したり、手に執って得物として使用したりと多様な戦法が取れる魔術。それを味方の魔術師の心臓に突き立てた。
「ぐほっ。」
口から血を吐き、信じられないと驚愕に目を剥く魔術師。彼は程なく死亡した。
「ブラボー、ブラボー。」
その光景に満足気に手を叩くネーラ。そして彼女は飼い慣らした魔術師に悪魔の宣告を言い渡す。
「貴方、死んでくれる?」
「イェス、マム。」
あろう事か彼はネーラの死ねという命令に嬉嬉として首肯し、今度は自身の心臓にアクアレイピアを突き立てた。彼は最期の時まで、終始恍惚の表情を崩すことは無かった。
ネーラには異名がある。それは毒魔女だ。彼女は水属性に適性があるが、力の程は平々凡々。凡百の水使いに埋もれる、そんな程度の実力だった。ならば何が彼女を旭日興国団の幹部たらしめたのか。それは毒魔術。身体強化魔術、防御魔術、治癒魔術、拷問魔術。それらは八属性どれにも当て嵌らない魔術である。八属性とは炎、水、風、土、氷、雷、光、闇の属性のこと。しかしこの八属性に部類することが出来ない魔術が幾つか存在する。それが先挙げた4つの魔術である。毒魔術もその1つで、八属性のどれにも当て嵌らない。今回挙げた5つの魔術の他にもこういった魔術は存在する。それらの魔術は独立属性魔術と呼ばれることもある。ただ、治癒魔術は光属性魔術に当たるという説が提唱されたが、光属性魔術の定義に完全には当て嵌らないという理由で採択されなかった。話を戻そう。ネーラはその毒魔術に才能を見出した。彼女は毒魔術を学び、修行し、体得した。そして彼女は彼女だけの毒魔術、固有毒魔術、悪魔の薬を編み出した。悪魔の薬は毒魔術に因る魔術毒を体内に注入し、それに因る苦痛に屈した時に発動する。発動すると対象者は術者の命令に決して逆らうこと無く、忠実に命令を熟すようになる。仮令それが仲間の殺害だろうと、自らの死だろうと。残酷な魔術。非人道的だ、人倫に悖る、悪魔の所業だ、など方々の魔術師たちからの嫌悪や揶揄は多々あるが、彼女の持論は、対象者は苦痛から解放され、命令に従う事を至福と思うのだから良いじゃない、だ。そんな彼女は今では旭日興国団の欠かすことの出来ないメンバーにまで登り詰めたのである。
「おい、ネーラ。」
「何かしら、ジノ?」
「俺の獲物を横取りするなよ。ったく今日はツイてないぜ。」
「別に誰が何人殺ろうが、旭日興国団は関係無いでしょ。」
「ストレス発散だよ。」
「それは、ごめんなさい?」
「何で疑問形なんだよ。」
「お詫びに悪魔の薬射ってあげるわ。」
「冗談じゃねー。」
2人は軽口を叩き合っていた。
「コールドレイン。」
「があっ。」
「ぬぅわっ。」
ハガルのコールドレインが炸裂。雨霰と降り注ぐ氷針が、魔術師2人の身体を剣山の様にさせ屠った。
ラオスは雷属性魔術が大得意だ。
「サンダー。」
「僕に雷属性魔術で勝とうなんて考えるとは何と愚かなことか。格の違いを教えてやる。プラズマレイW。」
超電の雷光線を放つプラズマレイ。それをプラスとマイナスの電気に二分し、反発させ更に強大になった超電の雷光線を放つプラズマレイの強化版。それがプラズマレイW。魔術師は叫ぶ暇も無く感電死した。
「ふぁ~あ。」
「戦闘中に欠伸する奴が何処に居る。」
「ここ?」
「舐め腐りやがって。」
「私は舐めてないよ。飴もアイスも。」
「貴様ーっ!」
クーヤの小学生の様な屁理屈染みた、いや完璧屁理屈なウザイ発言に冷静さを失った魔術師は魔術を乱射した。
「こんの小娘があっ。熱水弾。」
水弾の応用魔術だ。熱々の水弾が20、クーヤに迫る。が、
「私は貴方を舐めてない。」
そうだけ言ってクーヤは20もの熱水弾を炎弾で蒸発させ無効化した。
「おのれ小娘。欠伸しよってからに。何処までも舐め腐りやがって。」
「私が欠伸したのは退屈だから。貴方は何も出来ない。レイアーク。」
彼女は何処からとも無く、月の様な輝きを放つ弓を顕現させた。これを目の当たりにした魔術師は驚愕に目を剥き、彼女が本当に自分を舐めて等いない、只純粋に戦いを楽しむことが出来ないほどに、自分と彼女に隔絶した実力差があることを悟った。
「魔術弓。これは勝てんな。」
「解れば宜しい。月光弩射。」
キラキラと光り輝く白銀の弓矢が魔力光の残滓をも纏わせ、ジャイロボールの様に螺旋状に回転し、空間を削るようにして魔術師を射抜いた。その魔術師は魔術弓士と交戦出来た歓喜と、クーヤに対する憧憬に満ちた表情で死んだ。彼にとって僥倖とも言える死に方だったのではないだろうか。
討伐隊隊長二グマと魔術師7人は屠殺された。これでブリオ・ウェネーシア・ナバル討伐隊壊滅という旭日興国団の任務は見事完遂されたのであった。
ブリオ討伐隊と旭日興国団の戦闘を観察していた者が居た。ブリオ・ウェネーシア・ナバルその人だ。
「ふぅっ。良いものを見た。私は確信したよ。この国は変わる。彼等なら必ずしや皇帝ライデルハイムを討滅出来る。」
興奮冷めやらぬ様子でブリオは屋敷に戻って行った。
剣人とリアは無事任務が終わり、家に帰って来た。
「ただいま。」
「ただいま。もうお腹ペコペコだよ。」
「お帰りなさいませ、リア様、ケント様。夕食は既に出来上がっております。」
「流石ビルス!ありがとう。」
この楽しい日常を守りたい。剣人は皇帝を討つ覚悟を決めたのだった。
翌日。帝城玉座の間。皇帝ライデルハイム・ドルトリンド・ウェネーシア・ギルファンゼールスはブリオ・ウェネーシア・ナバル討伐失敗の報と討伐隊の全滅の報を聴き、思索に耽る。討伐隊を全滅させたのは何者かと。
「反逆者か?まあ、まだ良い。」
そう呟いて皇帝は不敵に口を歪めた。反逆の狼煙は上がった。剣人たちは今後更なる強敵たちと熾烈な戦いを繰り広げることとなる。