転生したら乙女ゲーム最推しキャラの姉になりました
うっかり事故に遭い転生したら乙女ゲームの世界で、最推しキャラクターの姉に生まれ変わりました。
▽▽▽
転生した先は乙女ゲームのなんかあれ、その、あれ、あの、ちょっとタイトルは忘れたけどお金持ちの学園で、性格に難のある生徒会の面々を攻略していく感じの世界観ゲームでした。
どう考えても乙女ゲームじゃなくて人格矯正シミュレーションゲームだったそれはそこそこ人気があったらしいけど、私はストーリーとか全然知らない。いやもう全く。
全然知らないのに何故ここが乙女ゲームの世界だとわかったかというと、激推ししていたキャラクターの姉に転生していたからです。いやもうマジびっくり。
そのゲームはイラストレーターさんが複数いて、各キャラクターのイラストを担当しており、その内の一人のキャラクターがめちゃくちゃ好みでもうそのキャライラストのためだけに毎月十万はつぎ込んだくらいイラストが充実していた。
まだ小さかった弟に「何かこの子めちゃくちゃ可愛いな」と思っていたら、大きくなるにつれ推しの面影を感じられるようになり。
高校生の今、弟は完全に最推しに成長していた。めちゃくちゃ格好いい。
ストーリーそっちのけで育成につぎ込んだ最推しキャラクターの姉に転生し、もう私は今いつ死んでも後悔はないほど充実しています。既に一回死んでるけど。グッジョブ神さま。
▽▽▽
「生徒会の皆様よ!! きゃああ!」
「涼太様ぁ! こっち向いてー!」
「大輝くーん! 素敵ー!!」
「湊様ー!! 今日もなんてお麗しいのかしら!」
時間は授業が終わった放課後、生徒会ファンの子達が移動中の彼らに向かって歓声をあげています。
その気持ち痛いほどわかるよ。だって私も最推しが目の前にいたら我を失い叫ぶ可能性があるもん。いや目の前所か家にいるんだけど。叫んだことあるけど。親にめっちゃ怒られた。弟にも怒られた。ごめんなさい。
そうこうしているうちに現れた私の弟、朝倉夕くん。朝倉なのに夕なんて矛盾した名前がもう可愛いよねわかるわかる。弟なのにくん付けしたくなるよねわかるわかる。それな。
「夕くーん! カッコいー! 今日の晩御飯はオムライスだよー!」
「姉ちゃん何でそっちに居るんだよ! 弟相手にペンライト振り回してんじゃねえよ!」
最近ちょっとした反抗期を迎えた弟くんは今日も元気な私に付き合って元気に返してくれます。めっちゃいい子。好き。愛してる。オムライスは夕くんの好物なので、ちょっと口角が緩んでるとこが高校生らしく大人になりきれない子どもっぽさって感じでめちゃくちゃ可愛いな、おい。
「え、だってお姉ちゃん生徒会じゃないから……そっちには行けないや……ペンライトはさっきファンの子達に渡されて」
良ければどうぞ、と渡されたペンライトを振って答える。最推しの弟は疲れきった表情を浮かべながらも私を構ってくれるあたり、お姉ちゃん思いでお姉ちゃん嬉しいよ。あんたはええ子や。
「そういう意味じゃねえよ。なんであんたファンの中に平然と混じってんだよ」
「お姉ちゃんも夕くんのファンだからだよ!」
「嘘つけ! ファンでもあんただけ方向性が違ぇんだよ!」
「そんな! 一体どこが……」
弟に否定されてショックだった。こんなに毎日愛情を伝えているのに本人である夕くんに気付かれていなかったなんて……うそ……こんなことってないよ……神さま……,
「団扇見てみろよ! 他のやつは『結婚して!』って書いてんのにあんただけ何なんだよ! 読んでみろ!」
「『結婚して!~あんたええ子や妹お越し~』」
「妹ってなんだ何目線だよ!」
「姉目線だけど」
「知ってるよ!! 違ぇんだよ! あんただけ! 推し方がおかしいんだよ!」
地団駄を踏む最推しくん最高。こんなに可愛くてお姉ちゃん思いの優しいいい子なのに、彼女の一人も連れてきやしない。いや連れてこられたらお姉ちゃんめちゃくちゃ泣く自信があるんだけどね。泣くどころか号泣。部屋が海になっちゃう。自分の涙に溺れちゃう。
「あんた家の中にまで何飾ってんのか覚えてんのか!」
「えっ、ただの大旗だけど。国旗と隣り合わせで飾ってたけど不味かった?」
「なんで大真面目に国旗と俺の顔写真印刷した旗飾ってんだよ! 家の中にまで旗立られてる俺の身にもなれよ! 生徒会室じゃねえんだぞ!」
「生徒会室にも飾ってるの!? 凄いよ夕くん生徒会って凄いんだね!」
「そこじゃねえんだよ!」
ああもう! と叫びなから髪をぐしゃぐしゃに掻き回す弟くん。乱れた髪型すら色っぽくて格好いいって一体どう言うことだろうか。真面目に決議したいと思います。夕くんが格好いいと思う人挙手。はい、満場一致で夕くんは優しくて格好良くて素晴らしい子ですね。うん知ってた。
突っ込み属性の弟が今日も元気でお姉ちゃんは幸せです。