逢いに行こう。
僕の恋する彼女は、今じゃ遠い存在。
話しかけたい。
その艶やかで、たなびく黒い髪は澄むように綺麗でいて、美しかった。
学年の違う彼女とは、昔はちょこちょこ会話を交わしていた。1年が経ち、僕らも一つ学年が上がった。僕は2年。彼女は3年。そう、受験が、彼女を待っているのだ。生真面目だから、教室から出ることなく勉強し、すぐに家に帰って勉強、連絡手段の携帯すら今年は使わないと、「使ってくださいよ!」っと言っても断固拒否。
拒否されたのは悲しかったけど、その真面目さも僕は好きだった。
たまに、移動教室ですれ違う時がある。
目が合う度に優しく微笑む、その美しい顔はどこまでも健在。
言葉は交わせないが、それだけでもすごく嬉しかった。
日が巡るのは早いもんで、あっという間に卒業式。僕と、彼女との別れの時。
見事、彼女は偏差値の高い、第一志望の高校へ進学することになった。僕は、3年になる。
何時ものように、目が合うと、優しく微笑んでくれる。そんな彼女が僕は好きだ。
でも、もう「何時ものように」とはいかないんだ。これっきり、会えなくなってしまうんだ。ほぼ、言葉を交わしていなかったが、伝えたい。僕は僕の言葉で、美しい彼女に。
賑わう人混みを掻き分けて、声をからして叫んだ。
「......先輩っ!!!!」
僕が呼ぶと、何時ものあどけない表情で振り返る。風にたなびき、髪が揺れる。
「......え??」
僕の言葉で、精一杯
「僕は、先輩が好きでしたっ!ずっと、ずっと、好きでした!」
僕がそう伝えると、彼女は何時ものように
優しく微笑み、はにかんだ。
「私は、待ってるよ。ずっと。」
クルリとふりかえり、先へと進んでいった。
その姿を僕は、呆然とみていた。
彼女の言葉を理解するまでに、時間がかかりそうだ。
ただ、一つ気づいたことがある。
また、逢いに行かなくてはと。
綺麗な恋物語をかきたかったのですが、
うまくいけたかな。