クローン人間Aさん
僕はなんのために生まれて、
なんのために生かされて、
なんで?なんで?なんで?なんで?
僕はクローン人間A。
どうやら、クローンと言うのは誰かと全く同じ遺伝子で作られたその人そのものな人間らしい。
ただ、「オリジナル作品」ではない。
どうやら、航という男の子のクローンらしい。何故、僕は生まれたのだろう。
まぁ、生まれたからには意味があったんだろうな。
考えることも、好きなものも、或は好きな子やタイプも一緒なのか。
起きたベットの隣にクローンについての本があったから少し読んで見た。
字も、読めるんだなぁ。
ページを全て読み終える前に「生みの親」博士?が来た。
「気分はどうかね?」
「ふ、ふつう、で、す。」
「それは良かった。本来ならば直ぐになのだが、あちら側の理由があるからな。一週間、自由に世界を見て来なさい。ただし、必ず帰ってくるんだよ?」
「は、い!」
一週間、なんで一週間?一週間後に僕は何かをしなければならないのか。
まぁ、いい少しだけだけど見てこよう。
「行って、きま、す!」
「行ってらっしゃい」
ぼくは、一週間という短い期間だったが沢山の人から助けてもらい、いろんな物をたべたり、いろんな事をしたり、それはもう楽しかった。人の暖かさ、優しさに感激した。
そんな僕に気になる子も出来た。理沙と言う名前の彼女は、ここ数日僕に案内をしてくれて居た。
「航、だっけ?」
「うん、一応、ね。」
「どこら来たの?それに記憶喪失なの?」
「僕は目が覚めたらベットの上に居たんだ。なんか僕はクローンっていうのらしい。」
「クローン!?」
「そう、最後までは読まなかったん、だけど僕は「オリジナル作品」ではないらしい。」
「そ、そうなのね。それなら、何故、航はここに居るの?」
「「生みの親」の博士が、一週間、世界を見、てこいって」
「そっそれなら!一緒にもっと世界を見に行こうよ!」
「どう、したの?理沙、また逢えるでしょう?」
「(知らないのね...)そ、そうね。でも私、もうすぐ、やだ休みが終わるのよ!夏休み!」
「夏?」
「とても暑いでしょう?」
「うん」
「暑い季節を、夏っていうの。他にも、寒いのが冬、少し肌寒いのが冬で、生暖かい、清々しい季節が春っていうの!」
「へぇ…いいなぁ。僕も、体験して見たいなぁ」
「っ!?あぁぁぁ、もう、行こう!」
「うん!」
「いつまでだっけ?帰らなきゃいけないの」
「もう、明日だよ。」
「明日...か。(助けてあげたいけど、どうしようもない。だから、少しだけでも楽しく終われるように...)行こ〜う!」
今日一日は、どの日よりも凄く楽しかった。このキモチが楽しい。嬉しい!
また明日、用が済んだら逢えるかな。
逢えたらいいなぁ。
「航、もう、バイバイの時間だよ。」
泣いてる。
「なん、で泣いてるの?」
「もう、貴方と逢えないから...」
「え?きっと逢えるって!ほら、笑って!僕はなんともないよ?」
「航、貴方はクローンなの。クローン人間の運命、知ってる?」
「え?し、らない」
「帰ってから、本を読んでみて。私、航が好きだったよ。この一週間、本当に楽しかった。ありがとう。私の初恋の人になってくれて。」
「うん、ありがとう。」
「そうか、初恋、知らないんだね」
「ハツコイってなに?」
「知らなくていいよ!恥ずかしいし。じゃあね。また、いつか逢える時があったら。」
「うん、また逢いに行くよ!必ずね!またね!」
楽しかった。また、あいにいくんだ。
僕達の約束だ。
「帰りました。博士、ハツコイってなんですか?」
「初恋と言うのはね、人を初めて好きになることだよ。胸が高鳴るんだ。」
「へぇ、」
「楽しかったかい?」
「はい!それはもう楽しかったです!」
「良かった。それでは一時間後、また部屋に来るからそれまでおとなしくして居るんだよ」
「わかりました。」
そういえば、本。
___クローン人間の運命...
「え?死ぬ、」
__人工授精で生まれたら人間ではない、クローン人間はもちろん人間ではない...
「ん?」
”臓器移植”?
オリジナルの方の僕が、病気で、ドナーが見つからないからクローン人間の僕を作ったと。
なら、僕は死ぬために生まれたの?
嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ!嫌だ、嫌だ嫌嫌!
約束したんだ、理沙にまた逢うって...
『もう、貴方に逢えないから...』
そう、言うことだったのか。知って居たんだね。
でも、伝えてない!
理沙に、僕も、好き、だったって!
初恋だったって、言ってない言ってないのに...
死にたくない、博士、どうして?
死にたくないよ。
たくさんの優しさを知った。暖かさを教わった。生きることの喜びがわかった。
人を愛する心を教わった。
この素晴らしい世界にもっと生きたかった...
なんで。
一週間の命だなんて。
命が、あまりにも尊いものなんて。
死にたくないよ。
理沙に逢いたい。せめて、伝えたかった。
ねぇ、理沙、ありがとう。
もっとちゃんと言えば良かった。
「クローン人間A、時間だ。ほら、行こうか。」
「....嫌だ」
「おまえは、そういう運命なんだ。君が臓器を提供すれば、元の航君が助かるんだ。さぁ」
博士に、腕を掴まれた。
抵抗すら出来ない位締め付けられ、痛い。
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
死にたくない!!!
強制的にふくを剥ぎ取られ、注射を打たれ。
メスを向けられた。
必死に逃げようとした。でも固定されて動けない。
「嫌だ!死にたくない!博士、助けて」
「...五月蝿い。早死にするぞ。」
「僕だって、人間なんだ!」
「お前は人間ではない。私が作り出したものだ。人権すらないんだ。」
「嫌だ、いやだ!いゃだ…ぃ」
意識が遠のく。
彼女に、理沙に伝えたかった。
僕だって、
僕だって、皆みたいに...
___僕だって、生きたかった。
社会で習いました。
『クローン』
クローン人間だって人権はあるんだ。
人間なんだ。
クローンの少年Aから見た風景というか、
視点を、助かる人間ではなく、
視点を、死ぬクローンに向けてみました。
不快な想いをさせてしまったらすみません。
でも、命を大切にしよう。
命の尊さを知ろう。
読んで頂きありがとうございました。