1 嫌われ者の獣人を愛した一人の少女。
この国はいつまでも理不尽だ。
僕たち、獣人は生きていることを許されない
それでも、僕達は生き延びようと、人間に見つからないように密かに過ごしていた。
そう、あの時までは。
僕の名前は、キラ。
人間に見つからないように、人里から遠く離れた森に家族四人、父、母、妹とその他、獣人達で小さな村を作り住んでいた。
勿論、人間が絶対に来ない場所に。
僕等は人間との交流を試みたのだった。ある日、ミサと言う偉大な獣人族のリーダーが人里に下りた。共存できる道は無いのか?と話し合うために。
だが、ミサの話を聞くや否や捕らえて殺してしまったのだ。
人間とは何て小さいものなのだ。なんて醜いのだろうか。
その日から、僕は人間を嫌った。
周りの仲間たちは、まだ共存の道を考えている。何故気づかない?最早、無謀な事だろうに。何故、そこまでして人間と共存して行きたいのだろうか。僕には理解出来なかった。
「何で、お前にはわからんのだ!」
「何もわかってねぇのは父さんだろ!?いつまでこんな無駄なことを続けるつもりなんだよ!唯、仲間が殺されていくだけじゃないか」
「お前は、努力というものを知らんのか。先代様が仰ったのだ。私達獣人と人間は、いまから遠い昔共に仲良く暮らして居たそうだ。考えてみろ。そのほうが、幸せではないか。」
「父さんは間違ってる。それは、あくまでも過去の話だ。僕たちが幸せを掴む前に、僕達はもう消えているだろう。一匹残らず。皆、殺されて終わりだ。父さんがしていることを続けても、幸せは訪れない。ここで皆と暮らしているほうが、殺されるよりよっぽど幸せだ。」
ここにいる、皆はどうかしている。
そんなに、殺されたいのか。
いや、殺されるのが好きなのか?
怖くはないのか。
毎日のように、家族とはこんな言い合いを繰り返して、いつしか僕は家族の中でも独りで居る時のほうが多くなった。
口数も、友人と話す時や父さんとの喧嘩の時だけだ。
いつもなら、感情が高ぶっては直ぐに静まったのだが今日はどうも落ち着かない。
乱れたまま、ムシャクシャしたままだった。
感情に任せて、僕は家を飛び出し暫く走り続けた。
…………
「此処は...」
気がついたら、全く知らない所まで来てしまって居た。随分遠くまできてしまったみたいだ。無意識で、只管走り続けてたから、今気づいた。疲れた。息が苦しい。
それにしても、流石に帰らなくてはまずいな。
日も傾いてきたし、少しゆっくりとかえろ...
「パパ...ママ...!何処へ行ったの?ねぇ、帰ってきてよ!パパ!ママ!」
人間の、子供...?
どうゆうことだ?
「どこに居るの?わかったわ!見て居るんでしょう?きっと、私に悪ふざけをして居るのね!早く出てきて!もう悪ふざけは疲れたわ!」
あの子は、、親とはぐれたのか?
まぁ、人間とは関わりたくない。帰ろう。
ーガシャッ
ま、まずい!
「誰!パパ!?ママ!?....ヒィ!‼︎」
「や、やぁ...一体全体どうしたんだい?」
「貴方は、獣人ね...お願い!私を殺さないで!」
見つかってしまった。はぁ...子供だからよかったものの
…殺さないで?殺す...そのてもあるか。
こいつらに散々殺されてきたんだ。逆もいいか。
「貴方、私のパパとママを知らない?」
「悪いな、生憎、僕は君のパパとママを知らないんだ。」
「そうなのね...」
この子は捨てられたのか?
「僕も、少し待ってやるよ。」
「いいの!?獣人さんって見かけによらず優しいのね。聞いた話と全然違うわ。」
「皆が皆、優しいってわけではないよ。」
「貴方は、優しい人!」
「え、あぁ...それはどうも。」
なんだこいつ。
人間の子供は皆こうなのか。
ん、、まぁ、殺すのは後でもいいか。まず僕にそんな趣味はなかったはず。
「なぁ、人間」
「人間はよして!私の名前はマリーよ。貴方の名前は?」
「僕はキラだ。マリー、今日はもう遅い。もう夜だ。僕の家にいこう?両親を探すのはまた明日だ。」
「で、でも。」
「大丈夫。殺しやしないよ。そんな趣味はない。」
「わかったわ!貴方は優しいものね。」
「ただ、気をつけるんだ。僕以外の獣人にはなるべく見つからないようにしろ。見つかった場合、どうなるかは...わかっているな?」
「う、うん!」
「よし。僕以外の獣人の言葉を信じるな。僕だけを信じろ。」
「はい!」
あんな奴らに、マリーを紹介したらこの子が可哀想だし、何されるかわからない。危ない。
ってか、僕っていうとなんだか弱々しく見えるな。俺に、変えてみよう。
「なんだか、告白みたいね。」
「こっ告白!?んなわけない、だろ!」
「嘘だよ。出会って早々そんなこと言う人には見えないし。」
「あ、当たり前だ!というかマリー。君は何歳なんだ?」
「私は、5歳よ。」
「ごっ...さい、5歳!?なんで流暢に話せるんだ?5歳にしては語彙力はたかいし、きっと頭もいいんだろう?」
「私のパパとママに、生まれてから、少し経って一歳になった頃から、家庭教師を付かせてもらって平仮名の勉強とか、言葉の勉強とかして居たからよ。多分。」
「何て親だ。子供をそんな最初から。」
「なんで怒って居るのよ。」
「おかしいだろ!?お前位の歳は寝てりゃぁいいだけなのに。」
「そうかしら。貴方は何歳?」
「俺は、155歳。人間で言う、まぁお前ぐらいの歳だ。獣人族のなかだったらまだまだ餓鬼だよ」
「まだ子供なのね!」
「お前に言われたかねぇが、まぁそうだ。」
「パパとママ…」
「此処だ。着いたぞ。」
「わぁ...森の中の家だなんて御伽話のようね!」
続きは近々投稿いたします。
読んで頂きありがとうございました。