1話
白と黒の、モノクロに装飾された我が家。 暗い顔をした参列者達は、ハンカチを片手にすすり泣く人もいて、この場所は悲しみと暗い雰囲気に支配されている。
今まで親戚や家族、友達や知り合いが亡くなったことがなく、葬式なんて経験のない俺は見たことのない、親戚や、おふくろの友人たちが家に訪れ、写真に写る母に向かって焼香し、参列者は宛がわれた自分の席へと着席していく。
俺は半分放心状態で、焼香していく参列者を眺めている。
本来なら家族である俺は、涙を流しているべきなんだろうけど、俺の頬には涙が流れていない。
おふくろが死んでいるのに俺は何故涙が流れないのだろうか………
俺にはいまいちおふくろが死んだ実感が持てていないなのだろうか………
もう何が何だか訳がわかんない状態のまま、母の火葬が進んでいく。俺は広場の隅で母親の遺影を抱きかかえたまま動けずにいて、俺の側を通る親戚はまるでゴミを見るような眼で睨んでくる。当然といえば当然だよな。働きもしない息子の為に母は昼も夜も働き、家事もをもこなして、俺の世話もして過労で亡くなったんだから俺が殺したも同然だよな。
俺はいったいこれからどうすればいいのだろうか、母親にはいつか何かで返せれば、今までのことを許してきっとお応援してくれると思っていたのに………
まさか母親が亡くなってしまうなんて思ってもいなかった。
俺はいつもそうだ。いつも何もかもが終わって手遅れになって、もう何もできなくなってしまってから俺は何度も後悔をしている。そのたびに母親は俺を励ましてくれていたのに。
もう全てが終わってしまった。何も母親に返せない。もうありがとうも、ごめんなさいも伝えられない。
なんで俺はいつもこうなんだ。くそ………
いつの間にか火葬も終わっていて、俺は自宅の母親の遺影の前で声を上げて泣いていた。
もうここ最近の記憶も曖昧だ。大好きなアイドルも、パソコンも、どうでもよくなっていた。
それから俺は何も食べず、飲まずに過ごしている。ここ最近じゃあ記憶も体の感覚もはっきりしなくなってきた。もう何も考えたくない………
ただ叶うなら母親にごめんなさいと伝えたかった。その一言だけでいい誰かこの思いを母……に…つた…