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双子の姉に悪戯目的で拉致されました

ちょっとセクシーな表現が含まれます。不快にさせたらすいません。

 全てを知ったからと言って、ディアナに何か出来るわけではないが、少なくとも自分が生きているせいで国を滅ぼす様な事は無いとわかって安心した。シーラも同様に、自分達の選択は間違っていなかったとわかり安堵していた。


 翌日、ディアナは少年の服装で城の図書室へ向った。ジークが居るだろう場所に行くが、まだ早すぎたのか彼の姿は無かった。別にジークに会いに来たのではないと気を取り直し、魔法についての本を探す。魔力は持っていても使い方がわからない。セラフィーナが訓練を受けたと書いてあったのだから、訓練法があるはずなのだ。


 古書フロアの半分ほどを探したところで、若い女性と男性の声が聞こえて来た。なにやら揉めているようだ。その声は静まり返った図書館に響き渡り、徐々にこちらへ近づいてくる。


「だから、ここに美少年がいるなら会わせなさいって言ってるのよ! 私が連れて来るように命令したのに、あの人達、ホント使えないわ。この私が直接会いに来てあげたのよ。もう、離しなさい!」

「しかし、ここは神聖な図書館でございます。アデルハイト殿下の言う少年はまだ年若い学生でございますよ。何をされるおつもりか存じませんが、真面目な少年にまで手出しするのは……」

「黙りなさい! 私が求めたら応じるのが当たり前なの! どいて!」


 階段を下りて来たのは金髪に翡翠の目、垂れ目で幼げな顔に似合わず肉感的な体を持つ、口の悪いその女性はディアナの姉アデルハイトであった。止めに入っていたのは司書の男性だ。オロオロとその様子を見ている侍女と、関心無さ気に付いてきた護衛騎士二名は呆れた顔で黙って見ているだけ。とてもこの国の王位継承者に対するものとは思えぬ態度だ。



 アデルハイトって言った? あれが私の双子の姉だというの? 本当に私と似ていないわ。お父様の姿絵に少し似ているかもしれないけれど、何? 知性の欠片も無いじゃないの。



「あ! 本当に居たわ! 彼で間違いないわね、聞いた通り凄く綺麗な男の子だわ。どうして今まで隠れていたの? 自分に自信のある男性は自ら私に跪いて来るものでしょう? 体の相性が良ければ次期国王の父親になれるかもしれないのに。あなたたち、彼を私の部屋に連れて来て!」


 やる気の無さそうな騎士達はディアナの両腕をがっちり掴み、アデルハイトの後を付いて歩き出した。



 え? ちょっと、何よ? 私拉致されてしまうの? てゆうか、私とは子供出来ないから! 女同士じゃ無理なのよ! いや違う、その前にこの状況凄く不味い。色々不味いわ。どうしよう、誰か助けて。司書のお兄さん、ああ、走ってどこかへ行ってしまった……。シーラ助けて。ジーク! 今すぐ図書室に来てよ! 


 ディアナの心の叫びは誰にも届かず、アデルハイトの私室まで引きずられて来てしまった。声を出せば女だとばれてしまう危険性が高い。終始無言で青ざめたディアナを護衛騎士達は哀れんだ目で見下ろし、ぼそりと呟いた。


「諦めろ。一度相手してやれば、気が済んで解放してくれる。下手に抵抗したら命が無いぞ」



 ちょっとぉぉ、もう本当に無理だからぁぁぁぁ



 ディアナは泣きそうな情け無い顔をしてアデルハイトを見る。

 彼女は既に臨戦態勢に入っていた。艶かしい男を誘う表情で舌なめずりして、優雅に腰を振りながらこちらに近づいてくる。

 室内に入った時から気になっているが、何かの香を焚いているのか、むせ返るほど甘ったるい匂いが充満していて、頭がクラクラしてくる。窓を締め切り、昼間だというのに分厚いカーテンは下ろされたまま。小さな照明器具がぽつりぽつりと点在するだけで薄暗く、怪しい雰囲気を演出している。豪華な装飾の室内は暗い赤と黒を基調とした、お姫様の部屋とは思えない色使い。奥の部屋に見える天蓋付きのベッドに掛けられた赤いカーテンは向こうが透けて見えるほど薄く、なんともいやらしい部屋だ。

 

 ディアナはごくりと唾を飲み込む。助けを求め室内を見るが、護衛騎士達は壁際に下がり、侍女はベッド脇で準備を始めた。何に使うのか解らない物を台に並べ終えると壁際で待機している。ツウッと背中に汗が流れる。


 目の前には初対面の姉がいる。頬は紅潮し、目は潤んでいる。その様子から興奮している事が窺える。ディアナの首筋に顔を寄せ、すんすんと匂いを嗅いだ。


「うふふ、瑞々しい美少年は、まだ雄の匂いがしないのね。まるで甘い果実のような匂いだわ。あなたの体は一体どれほど甘いのかしら?」



 イヤイヤイヤ、甘い匂いはこの部屋の香のせいでしょ、どう考えても。匂い嗅ぐとか変態なの? 胸を擦り付けて来るのやめてよ。悪いけど私の方が大きいわよ。って何張り合ってるの。違う違う、どうする? 押しのけて逃げる?


 ガチャッバタン!

 突然後ろからドアの開く音がしたと思えば、ぐいっと腕を引かれ、誰かの腕の中にスッポリ納まった。


「ちょっと、邪魔しないでちょうだい。あなたの事なんて呼んで無いわよ。結婚相手の候補というだけで、我が物顔でこの部屋に入らないでちょうだい。早く出て行きなさい」

「こいつに手を出すのは止めて下さい。怯えているのがわかりませんか」

「そんな事ないわ。彼も私を見て興奮しているはずよ」

「こいつ、女はダメなんです。悪いがこいつは俺のなので、連れて行きますよ」

「嘘おっしゃい! そんな嘘で騙されないわよ! あなたまで男色だって言うつもり?」


 ディアナは誰の腕の中にいるのか確かめようと上半身を反るようにして上を見た。そこに居たのはジークだった。ジークは体を屈めて小声でディアナに話しかけた。


「ちょっと我慢しろ」

「んむっ!?」


 突然唇を合わせ、ディアナの口を吸う。初めはチュッチュッとリップ音を何度かさせるだけの軽いものだったのに、次第に舌で唇を抉じ開け、顎を掴んで口を開かせ口内に舌を侵入させて来た。

 何が起きているのかわからないディアナは香のせいか意識が朦朧として心臓がどきどきと早鐘を打っていた。ジークは角度を変え、もっと深く口内を弄る。舌を絡ませディアナの舌を絡め取り、吸い上げる。ディアナがそれに答えて舌を絡めた時、ジークはビクッとして動きを止めて、唇を離した。二人の口の間には透明の糸が伸び、ぷつんと切れた。ジークは荒くなった息を整えようと深く息を吸い、ゆっくり吐き出す。

 ディアナは浅い息を繰り返し、頬を紅潮させてジークに寄り掛かった。


「ちょ……と何、私の部屋で盛り上がってるのよ。まぁ、見ていて悪くなかったけど? ちょっとだけドキドキしたわ。あなた達位美しければ男色も悪くないわね。んもう、わかったわよ。女に興味が無いんじゃ、私を満足させられないもの。行って良いわ」


 シッシッと犬でも追い払うように手を振って、二人を部屋から追い出した。




 ジークはディアナの肩を抱き、早足で廊下を進む。最短ルートで城を出て、無言のまま湖のベンチへと向う。


「すまない! この通りだ! ディーンを諦めさせる為の演技のつもりが……あまりに甘い唇で思わず途中から本気になってしまった。悪かった、驚いていたよな? 震えている事に気付いていたんだが、止められなかった。殴ってくれ。正気に戻りたいんだ。まだ余韻が残っていて、本気でヤバイんだ、思い切り頼む」


 ディアナもまだ余韻が残っていて心臓がドキドキして、頬が紅潮し、目が潤んでいた。ジークが執拗に攻めた唇は赤く腫れ上がり、薄ら開いた状態だ。その様子を目の当たりにしたジークは本気で男に走りそうな自分を止めようと、ギュっと目を閉じディアナに頬を差し出した。



 殴れって言った? 助けに来てくれたって事は理解しているわよ。ちょっとやり過ぎだったけれどね。だから殴る理由は無いのだけれど。殴って欲しそうだし、思い切り行くわよ。



 ディアナはその華奢な体からは想像もつかない良いパンチをジークの左頬に一発ぶちかました。平手が来ると思っていたジークは思わず膝をつく。


「お、お前意外に良いパンチ持ってるな。口の中切れたぞ。お陰で正気に戻ったみたいだ。ありがとな」


 ペッと血の唾を吐き、ディアナに笑顔を向ける。ジークの唇の端が切れて血が出ているのを見て、ディアナは慌ててハンカチで傷を押さえた。


「ごめん、思い切りって言うから力いっぱいやっちゃった。痛かったよね? せっかく助けに来てくれたのに、恩を仇で返す真似をして、ごめんなさい。それに、ありがとう。ジーク様のお陰であの人から逃げる事ができたわ……けだけど、あんな事して今後大丈夫ですか?」


 慌てたせいで思わず素で喋ってしまい、なんとか途中で軌道修正した。


「気にするな。俺達はアデルハイト殿下から男色カップルとして見られるだけだ。もうちょっかい出してくる事も無いだろう」



 うん、そっか。あれ? それで良いのかな? 結婚相手の候補とか言ってなかった? ジークって何者?

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