第五話：ケモ娘はあまり物知りではなかったようです。
メルリア大陸。
それが今、俺たちがいる場所の名前だ。
メルリア大森林を中心に3つの大国と1つの小国が囲むような形になった丸い大陸だ。
3つの大陸の中で一番人間が多いらしい。
この星？、世界？にはメルリア大陸を含め3つの大陸があるらしい。
アルザート大陸。
3つの大陸の中でもっとも人間が少なく、しかし、一番大きな大陸である。そんななか龍人族の小国があるのみらしい。それにも理由がありアルザート大陸は魔物の強さが段違いで人間程度では太刀打ちできないらしい。
そして最後の魔人領ガイル大陸。
大陸自体はメルリア大陸の半分ほどしかない一番小さな大陸だが、その大陸全てを魔人の国が治めているらしい。
アルザート大陸がメルリア大陸より東にあるらしいが詳しい位置関係をアコは知らないとのこと。
それよりもやっぱり魔物…いるんだな。アコがいう限りでは大森林の以外ではあまりいないらしいが、本人が大森林から出たことがないらしいのであってるかはわからない。
今いるこの国はラーカイル王国と言うらしい。王国と言うくらいだから王様がいるのだろう。
100年くらい前までは小国だったらしい。100年ほど前に王都にダンジョンが出現し、そこから取れる資源で大きく発展していったらしい。
ダンジョン…王都にそう都合よくダンジョンなんてできるのか…？
そして問題なのが、発展したあとだ。
ダンジョン産の魔装などを軍備に取り入れ大きな軍事力を誇るようになるまで半世紀ほどだった。
そこからは近くの小国を取り込みさらに大きくなり今のメルリア三大大国と言われるまでに成長した。
それまでは二大大国と10個ほどの小国だったらしい。
そして周りの小国を全て取り込み接するのが二大大国のみとなってから、その持て余す軍事力が向いた先がメルリア大森林の獣人族だ。
メルリア大森林は雄大で人間の勢力ですぐにどうこうということはなかったがそれでも確実に侵略を進行させていたらしい。
そして泥沼化して今に至ると。しかし、状況は悪くなる一方で獣人族は躍起になっているらしい。
その関係で現在ラーカイル王国は獣人族を人間と認めておらず、国にいる獣人族はみな奴隷のみらしい。
早めにこんな物騒な国はおさらばしたいな…。
しかし、持ち金ほぼ0、魔力ポイントもない。
ラーカイル王国以外の国に逃げたいところだがどうやっていけるのか、近いのか遠いのかもわからない。
とりあえず近くの町か村までいって情報やお金集めだな。
現在の所持金は銅貨23枚。銀貨3枚。
ちなみにアコはお金の価値を知らなかった。銅貨何枚で銀貨1枚分なのだろうか。
所持品は毛布、魔法ライター。
奴隷商人の皮袋にはお金以外にまともに使えそうなものはなかった。
「ここまで話し合ってみてとりあえず馬車が向かっていた方に行こうと思うんだけどどうだろう。捕まったアコが馬車に乗せられて最後の村を出たのは2日前なんだろう？それなら戻るよりも進む方が早く町か村につけるはずだ。」
「まち…」
「人間が怖いか？」
「だ、だいじょくぶだとおもいます…。」
「安心しろ、どんなことがあってもアコを守るし、ずっとそばにいるから。」
「マスター…」
「でも、とりあえず今日はここでもう一晩だな。」
おしゃべりをするだけでもう夕方である。
アコがしどろもどろだったってのもあるし、急ぐ旅でもなかったしな。ゆっくりとおしゃべりしたり時たま軽く散歩したりもした。
「何か食べたいものあるか？そんな豪勢なものは出せないが…」
そろそろポイントも危ない。
残りは56ポイント分だ。おしゃべり中に結構飲み物を飲んでしまった。
「マスターと同じものがいいです。」
可愛いことを言ってくれる…。
さて、アコも満足できる食べ物か…
大皿のチキンの丸焼きなんか出せないだろうか？
ポイントがないなんて言ってた奴がこれである。
いや、これはどんな料理が出せるか試すための偉大な挑戦だ！
出てこい鳥の丸焼き！
《ダンジョン魔力5ポイント消費。現在51ポイント。》
「す、すごいおいしそうなの…」
でてきた、大皿に乗ったチキンの丸焼き…？チキン？
なんだこれは、鳥…ではあるんだ。うん、鳥だな。鳥なのはいい。
顔が3つもある…
い、いや。匂いはすごく美味しそうだ、身体に毒とかそんなことはないはずだ！たぶん。
「いただきます！」
手羽をちぎり頬張る。
これは美味しい。お肉を食べてるって感じだ。お肉本来の味がすごいでてる。とっても濃厚で、でも意外とさっぱりとしていてとてもいい。
こっちを見ながら耳をピクピク尻尾をフルフルしてるアコがとっても可愛い。
「ほら、アコも食べていいんだぞ」
「で、でも…」
「ご飯は一緒に食べるものだ、ほら、口を開けてみろ、美味しいぞっ？あーん？」
アコが小さく開けた口にちぎったチキンを入れてあげる。
アコの顔が満開の笑顔になる。
5ポイント、安いですね。
この笑顔のためにも明日からはポイント集めを頑張らなくちゃっな！
それからはアコも俺も一心不乱に肉を食べた。
とても美味しかった。
「しあわせなの…。」
よかった。人間に攫われてもう手遅れなまでに精神が壊れていたりしたりとも心配したが、こんな笑顔になれるのならひとまずは大丈夫だろう。あとはゆっくりと俺が傷を癒していこう。
お昼くらいにだした大きめの革袋に入った水(1ポイント)を全部つかい手などを洗ったあとにアコに扉を開いてもらう。
「今日はダンジョンで寝てみようか、アコ、とびらだせるか？」
「は、はい、マスターっ！」
さすがに3度目にもなると慣れてくるもので、あっさりと扉が出てくる。
中に入り一番近くの木の根の間に床のみを出す。
残り43ポイントか…。
飲み物が地味にポイントを持っていくな。
おそらく、人間を殺さなければポイントは増えないよな。
沼は消費魔力10ポイントだった。
普通に頭に思い浮かべたら消費魔力がわかることが判明した。なぜ気づかなかったんだ。
つまり沼を出した時の魔力量はおそらく100ポイント。
始めてポイントを確認した時が120くらいだったか？
つまり人間を倒したら10〜15くらいの魔力ポイントが手に入るのか？
この魔力ライターは人間3〜4人分の価値だと考えると重く感じる。
毛布を広げ、寝っ転がりながら考え事をしていたら、アコが棒立ちなことに気がついた。
そういえば朝は一緒に寝たことに恥ずかしがっていたな…。
たがここで毛布をもう一枚出すともう一緒に寝れる機会がないのではないか…。
こ、こういうのは最初が肝心なんだっ！
「ほ、ほら、アコ。はやくおいで。」
「は、はい…。」
少し迷いながらぎこちない動きで毛布に入ってくる。
「…………お、おやすみ」
「お、おやすみなさい、マスター」
あかん、これ、今日眠れないのではないだろうか。
