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第三十七話:ケモ娘は異世界娘と出会うようです。

「わ、わたしは厨二病なんかじゃ…ないもんっ…。」


素が出てるぞ、素が。

しかし、そんなのも気に止める余裕がないのか

だんだんと溢れる涙が増えてくる。


「あーあー。カケルが女の子を泣かしちゃってるぅ〜。」


アニーがこちらを責めてくる。


「マスター、ひどいのっ」


アコまでもが責め立てる。

ぐっ…。


「わかった! わかったから! ここにいていいから! 泣き止んでくれ!」


「いいの…?」


「ああ、アニーも一緒に旅いこう。 アニーなら御者もできるだろうし。」


「まかせて! それじゃあ、馬車を買うところから始めなきゃねっ!」


アニーが1人あれも必要これも必要と頭の中で旅支度を始め、


「マスター、ちゅーにびょーってなに?」


アコがそう聞いてくる。


「あ、それ、わたしも気になってたのよね。 カケルの故郷の言葉か何かかしら?」


アニーもそれに乗ってくる。


「あれ?」


おかしいな、でもさっき確かにミルには通じたよな?

疑問に思ってミルをみると、


「や、やっぱり。カケルってもしかして転生者?」


驚いた顔でそう言ってくる。

だから口調が。素が出てるぞ、素が。


「転生者なの?」


アコがこちらを見つめてくる。

アコには別段秘密にしていたわけじゃないんだけど、言う機会がなかったからな…。


「ああ。 元は地球の日本という国にいたが、気づけばこの世界にいた。」


バレる形になったが、ダンジョンのことも話すつもりだったしちょうどいい機会だったのかもしれない。


「異世界転移って奴ね。」


ミルがまた設定を忘れてる。


「ミル、設定が消えてるぞ。」


「なっ!設定いうな!」


顔を赤くして反論してくる。

だから設定が消えていると。


「我は前世の記憶を魂に刻みこの世に生を受けたのだ。」


「つまりお前は前世の記憶を持ったまま赤ん坊からこの世界で2度目の人生をやり始めたと。」


「その通りだ。」


偉そうに無い胸を張りながら頷くミル。


「前世で夢だった剣と魔法のファンタジーに来て憧れの吸血鬼になったはいいけど、魔法は使えない落ちこぼれになったと。」


「それは言わないで…。」


ミルの顔に影が刺す。


「ちょ、ちょ、ちょっと待って。 つまりあなたたち2人はこの世界の人間じゃないの?」


アニーが我慢できずに聞いて来た。


「そういうことになるかな?」


怖がるかな?と少し心配したが、


「嘘みたい! そんなの本の中の話だと思ってたわっ!」


逆にテンションが上がっていた。


「俺は気づけばこの国にいたんだ。 そして、なぜかダンジョンマスターになっていた。」


「「ダンジョン…マスター…。」」


ミルとアニーの声が重なる。


「それでたまたま通りかかった奴隷商の馬車に乗っていたアコをダンジョンコアにしてしまってな。」


「ど、どういう状況なのよ…それ…。」


ミルが呟く。

簡単にキャラがブレるな。


「じゃ、じゃあ、ここはダンジョンのなかなの?」


アニーがそう問いかけてくる。

良い感しているな。


「そうだ。 扉はアコが出せる。 さっきから椅子やら飲み物やら服やらを出しているのはダンジョン魔力のおかげだ。」


「だせるのっ」


アコがどこか誇らしげにそう言った。


「どこから出しているか不思議に思っていたけどそういうことだったのね…。」


「我もチカラが開放されればそのくらい造作もないこと…。」


なぜそこで張り合う。


「そんなこと聞いたら余計にあなたと旅をしたくなって来たわっ!」


アニーは結構夢を見るタイプだったようだ。将来悪い男に引っかからないか心配だ。


ミルにもう少し聞きたいことがあり問いかけようとしたが、それよりもミルのお腹が静かなダンジョンの中に響いた。


「わ、我はお腹など減らん…。」


真っ赤になり下を向く。


「吸血鬼って何食べるんだ? やっぱりニンニクは食べれないのか?」


「ニンニク? 吸血鬼の食べ物は人間と同じらしいわよ。」


アニーが教えてくれる。

この世界には吸血鬼のニンニク嫌いや十字架に弱いなどの弱点はないらしい。

それもそうか。


「じゃあ、適当に食べるの出すか。」


「我はラーメンを所望する。 混沌にまみれ世界の理を乱す魔の食べ物。」


確かにギトギトラーメンのカロリーってそんな感じだよな。

食べたくなって来たな…。


「出せないな、それはさすがに。」


出せないものは出せないので、食べることも食べさせることもできない。


「なんだっ!ダンジョン魔力とやらで出せばよかろう?」


「なぜか制約のようなものがあって、この世界のものしか出せないようなんだよな。」


「ならば素材を出すがよい、我の導きに不可能はないっ!」


「作れるのか?」


そもそもラーメンって家庭で作るものなのか…?


「幾星霜も昔に、禁書に魅入られたことがあり、1人、暗い闇の底で禁呪を試行錯誤していたのだ。」


なるほどわからん。

作ってもらうのも良いけど、さすがにもう夜も更けて来ている。


「作りにしても今日はやめよう。 もう夜だし軽く食べて寝ることにしよう。」


「そうしましょう。 他にも色々聞きたいことはあるけれど、急いでも良いことはないわ。」


「おなかすいたの。」


そのあとはオーダーを受け、出せるものを出し好きなものを食べた。

最初は不満を言っていたがすぐにおいしさの魅力に憑かれたミルも最後は満足そうだった。


ご飯の後、ミルとアニーの温泉を見た時の歓声と、その後に続く遠くから響くような3人の桃色ワールドの音声に頭を悩まされるのはまた別のお話。


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