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第二十六話:ケモ娘は弓の才能もあるようです。

宿に戻るまでアコは無言で手を繋いで歩いていた。

アコの猫耳も心なしか萎れている気がする。


「アコ、おわかれはいやか?」


宿に戻り、ベットに腰掛けるアコに声をかけてみる。


「せっかく仲良くなれたのに、もう会えないのは寂しいの…」


俯くアコ。


「別に一生会えなくなるわけじゃないよ。また会えに来ればいい。」


「また、会えるの?」


「会えるさ。それに、アニーとの思い出は消えないだろ?」


アコには、これからもいろんな出会いと別れが来ることだろう。


「そういう今を大切にしていこう。先のことで悩んでいたらなにもできないぞ。」


アコの頭を優しく撫でてあげる。


「わかったのっ」


顔をあげて、まだ少し暗いけれど、それでもにっこりと笑ってくれた。


「それじゃあ、アコは弓の練習してみるか?」


「やるのっ!」


元気を出すように応える。


2人でダンジョンに入り、寝床にしている隣の大木に短剣で丸い円を描いていく。


「まずはここを狙ってみようか。」


「わかったのっ!」


アコが1人で弓の練習を始めたので、こっちはポーションを作り始める。


大きい鍋でレッドポーションを作りながら、ブルーポーション製造書を読む。


ーブルーポーションー

沸騰させた魔力水に乾燥させ細かく砕いた水魔草を入れ、完全に溶けきるまで混ぜる。完全に溶け切ったら集魔草を入れ光るまで混ぜる。水魔草と集魔草の比率は1:1である。魔力のある場所や魔力を込めながらやると効果が上がる。完成度の高い魔力があるものほど光る。

集魔草:周囲の魔力を集める効果がある。そのまま食べると周囲の魔力を身体が吸収し、魔力中毒にかかる。

水魔草:水の中の魔力を溜め込めることができる。


作り方がちょっと違うな。

水魔草を砕くのは手で大丈夫かな?


ポイントを消費し隣にもう1つ竃を作り、小さい方の鍋を火にかける。


とりあえず手で砕いて試してみよう。

水魔草をできるだけ手で細かくしていく。パサパサに乾燥しているので結構簡単だった。けど、量が多くなれば手で砕くのは辛くなるんじゃないかな。


沸騰し始めて来たのでそちらに水魔草を入れる。

レッドポーションの鍋を混ぜるのも忘れず手を抜かない。


混ぜていると水魔草が溶け始め、しばらくすると魔力水が淡い青色になる。

そろそろかな?

念のためにもう少し混ぜてから集魔草を入れる。

するとみるみる光初めた。

なんだこれおもしろい。

理科の実験とか思い出す。

魔力が濃い場所だからすぐに魔力が集まるのかな?


完成した。と、思う。

布を被せ瓶に詰める。

こちらも2瓶できた。

水魔草を砕く手間があるけど、完成は早かった。時間がある時に水魔草を砕くようにしておこう。


そのあとレッドポーションができるまでは時間がかかった。

今回レッドポーションは鍋の8割ほどでやっている。50本づつ薬草を入れて100瓶ほど作るつもりだ。


ちょくちょくアコにオレンジジュースやブドウジュースを差し入れしたりして鍋を混ぜた。


アコの弓はそこそこ速く、3回に1回くらいはマトの真ん中に当たっている。

正直結構うまいと思う。

もうちょい練習したら実践もいけるんじゃないかな?


レッドポーションの完成まで結構時間がかかってしまった。

3時間くらいだろうか?

瓶に詰める時間もかなりのものだったけど。

今回は全部で98本のレッドポーションが出来た。

1つが5センチほどの瓶でも約100本は持てるかな…?

これ、運ぶのに2往復で足りるかな?


「つかれたの〜」


少し汗をかいたアコがこちらへ来る。

湿ったシャツがアコの白い柔肌に張り付いて透けている。


「ま、ますたー?アコ何かついてる?」


アコがジロジロ見られて気になったのか尋ねてくる。


「い、いや、なんでもない。それより水浴びしておいで、少し休憩したらアルのところにポーションを売りに行こう」


「わかったの。」


扉の外に出てアコを待つ。

外はまだ明るい。日が落ちるまで1〜2時間はあるだろう。

ポーションは15本をアコ、35本を自分で持つことにした。

50本は保存だ。


「おまたせなの」


最初の日に買った白いワンピースを着てくる。ちゃんとズボンもつけているようだ。


「いこうか」


「はいなのっ!」



「よぉ、今日はいい肉入ってるぞ。」


アルがあって早々そう切り出してくる。


「いい肉?」


「ああ、今日はキングボアの肉なんだぜ!1本銅貨5枚な。」


「おお!それは食べてみたいっ」


「おいしそうなのっ」


普段外ではあまり喋らないアコまで喋り出す期待値。

確かにいつもより香ばしい匂いがする気がする。

銅貨を10枚渡す。


「ポーションは肉を食べてからだな。」


「ああ、そこらへんに置いとけ置いとけ。」


カバンを置き屋台の横にある椅子に座ると。


「キングボアはなかなか卸してくれる奴がいないから手に入れにくいんだよなぁ」


「そうなのか?」


「でかいから生命力もあるし、持って帰るもの大変だしな。」


「俺たちが5層まで行けたら毎日食えるのにな。」


アコの目が光る。


「ハハハっ、あんなのと毎日戦ってたら疲れるだけだぜ。ほら、できたぜ。」


いつもより脂が乗って綺麗に輝くお肉が渡される。

鼻を刺激する肉の香りがたまらない。


「た、たべていいの?」


アコが我慢できないとばかりにこちらをみる。


「火傷しないようにな。」


そう言った瞬間に齧り付く。


「おいひいのっ!」


確かに美味しい。

昨日食べたボアウルフの肉より断然美味しい。

しっかりと脂が乗っているけど脂があまりしつこくない。

アコがもう半分食べ終わりそうだ。


「もう二本焼いといてくれないか」


「あいよっ!」


自慢げな顔のアルが頷く。

これは5層にいくたのしみが増えたな。


「これはキングボアのどの部位なんだ?」


「これはヒレ肉だな。」


「もし討伐したらヒレ肉を取ればいいんだな。」


「ああ、もし取れたならおいしく焼いてやるよ。」





「今回は50本だ。ほんとは100本作ったんだが運べなくてな。」


「2人ならそれくらいが限界か。」


「明日の朝、また50本持ってくるつもりだ。」


「わかった。明日の朝だな。」


場所は変わりアルカード商会執務室。


「お前のポーション、なかなか話題になったぞ。昨日仕入れた奴はもう売り切れそうだ。」


「そんなにか?」


「ああ、もともと数が少ないポーションだ。いつでも供給より需要が上回るからな。」


「いくらで出したんだ?」


「銀貨8枚だ。」


「かなり攻めたな。」


「だが売れる。こんなに光るポーションはなかなか手に入らないからな。これからも本当に銀貨3枚でいいのか?」


「ああ、いろいろお世話になっているしな。」


「今回の分だ。銀貨150枚。」


そう言って細長いケースを15本渡してくる。

中の銀貨を取り出し10枚あるか数え、机にタワーとして置き、次のケースの銀貨の高さが同じか確かめ財布にしまっていく。


「このケースはいいな。わざわざ数える手間が省ける。」


「考えた奴は相当設けたらしいぞ。」


アルがそう言って笑う。

銀貨を数え終えて席を立つ。


「帰って晩飯だ。誰かのおいしい肉を食べたから物足りなく感じそうだ。」


「そらゃあ、俺の肉は最高だからなっ!ハハハっ!」


「じゃあ、また明日の朝に」


「おう、気をつけろよ」


アルカード商会を後にする。


アコと手を繋ぎ、口の中にまだ残る美味しさを思い出しながら、


「おいしかったな。」


「とってもおいしかったのっ!」


「これからもいろんなもの食べていこうな」


「たべるのっ!」


2人でオレンジ色の街を歩く。


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