第十八話:ケモ娘は儲け話を見つけたようです。
休みなので捗りますね。
「あ〜、おなかすいたわぁ〜」
アニーがそういって店の中に入り席に座る。
「アコ、今日は何を食べようか。」
「マスターと同じのがいいのっ」
「いいのか?好きなの食べていいんだぞ?」
「マスターと同じのがいいのっ!」
ニッコリと笑ってそう言われたらもういうことはない。
「アニー、ここ飲み物はどんなのがあるんだ?」
「ラーカ以外にはシーダかしら。あとはお酒とフルーツ系のジュースじゃないかしら。」
「シーダ?」
「ラーカの透明になったような飲み物よ。」
サイダーか。
「じゃあ、俺はそれにするか。アコはフルーツジュースがいい?」
「オレンジジュースみたいのがいいの…」
「オレンジジュース?」
アニーが不思議そうに聞き返してくる。
「オレンジ色の果物を絞ったジュースだよ。」
「ジオの実のジュースのことかしら?」
「甘い果物なら多分それだ。」
「甘いから多分あってるわよ、でも、アコちゃんあんなのが好きなのね。」
あんなの…?
飲み物の話が一区切りついたところでちょうどタイミングよく店員がくる。
「注文はきまったー?」
ちょっと活発系の日焼けしているかわいい女の子の店員だった。ウェイトレス服から覗く生足が素晴らしい。
「マスター…。」
「い、いや、アコ、み、みてない!みてないぞ!」
慌ててアコに弁解する。
「そういうのは注文してからにしましょう。」
アニーが助け舟を出してくれるのでこれに乗らない手はない。
「今日は豚行ってみようかな。キングボアと言うくらいだしきっと美味しんだろう。」
「べつに豚を売りに出してるわけではないんだけどね。じゃあ、私もそれにしようかしら。」
「じゃあ、豚を3つで。あとシーダとジオの実のジュースを。」
「ほいほ〜い、豚3つにシーダとジオジュースね。」
「私はラーカでお願い。」
「あいよ〜」
日焼け店員が気軽な感じで返事をする。
「じゃあ、しばらくまっててくれ」
そういって生足ちゃんが帰っていく。
「またみてるの…。」
「あなたのご主人も大変ねぇ。アコちゃん。」
「い、いや、これは…そ、そう!アコに着せる服のことを考えてみていたのであって生足を見るためではないんだぞ!」
「アコちゃん、昨日はあんなに頑張ってマスターに応えてあげたはずなのにね」
アコが真っ赤になる。
これ、アニーはもうアコの恥ずかしがる姿が見たかったのでは…という疑念が湧いてきた。
「そ、そうだ。アニー、今日はこのあと時間はあるか?アコの服をもうちょっと揃えてやりたいんだ。買い物に付き合ってくれないか?」
このままアニーにいじられるのはやばいと話題を無理やり切り替えようとする。
「アコちゃんの服?」
アニーの目が光った気がした。
「ああ、男の俺だといまいちなにを買えばいいかわからなくてな。アコに任せるにしても遠慮したりしてまともに選べないかもしれないしな。」
「なるほどね。確かにアコちゃんを着せ替えるのは楽しそうだわ。」
ん?なんかおかしい。
「でも、今日はこれから資料はまとめないといけないのよね。夕方あたりには終わるからその時じゃダメかしら?」
「それでもいいが、夕方だと店を回る時間がなくないか?」
ここの世界の夜は早い。夕方にはもう家に帰り夕食の準備をしている。
ロウソクやランプ、魔法具だって安くはないのだ。
「実は私の実家、服屋なのよ。」
「そうなのか?」
「えぇ。だから、母も可愛い子を着せ替えるのが好きなのよ。きっと喜んで手伝ってくれるはずよ。」
「それなら安心か。悪いな、色々世話をかけさせてしまって。」
「いいのよ、私が好きでやってることだもの。」
生足ちゃんが飲み物を持ってきてくる。
「おまたせ〜、ラーカとシーダにジオジュースね。お代は銀貨1枚と32枚ね。」
事前に用意して
そういえばここの飲み物って冷えて出るよな。
魔法具か何かで冷やしているんだろうか。
味はサイダーだが、少し炭酸が足りない気がする。
「そういえば知ってる?ラーカとシーダの元になる炭酸水はダンジョンから取れるのよ。」
「そうなのか?」
「ええ、13層に炭酸水が湧く泉があるのよ。そこから取っているみたい。」
「じゃあ、他の国にはないのか?」
「多分ないと思うわよ。」
「そうなのか。」
他の国に行ったらダンジョンの力でコーラとか出したら儲けられるだろうか?
そんな悪どいことを考えていたら、アコが微妙な顔をしていることに気づいた。
「どうした?アコ?」
「な、なんでもないのっ」
と、いうが、あきらかに嫌な顔をしている。
もしかして昨日のアレでどこか具合が悪くなってきたのだろうか…。
「ほんとになんでもないのか?俺は小さなことでもちゃんといってもらいたい。」
アコの目を見て、しっかりと言う。
「ほ、ほんとになんでもないのっ…その…このジュース、マスターのオレンジジュースより美味しくないなって…」
なんだそんなことか…
ホッとした。
「ちょっと飲んで見てもいいか?」
「はいっ」
アコが両手で渡してくる。
受け取って一口飲んで見るとわかる。
これは嫌な顔にもなるな。
オレンジジュースのような感じもするけど、オレンジジュースほど甘くなく、そして、苦い。
青汁とオレンジジュースを足して二で割った感じだ。
「アニー、ここの人はこんなものを飲むのか?」
「ええ、てっきりそれが好きなのかと思っていたけど、アコちゃんが飲みたかったのは別のものだったらしいわね。」
「アコ、おれのシーダ飲むか?」
「いいの…?」
「ああ、もしそれを飲めるならもう一杯頼むつもりだ。」
「ありがとなの」
ニッコリと天使のように微笑むアコ。
むしろアコが天使なんじゃないだろうか。
アコがサイダーをちょびちょび飲み始めた時に、
「はいは〜い、ぶた3つおまちど〜。」
生足ウェイトレスちゃんが器用に3つ同時に運んでくる。
それを受け取ると銅貨4枚を渡して、
「シーダ、もう1つちょうだい。」
「まいど〜」
シーダをもう1つ頼む。
「じゃあ、食べましょう。」
アニーがそういってナイフとフォークを持つ。
そういえばここにはお箸がないな。
まあ、あたりまえか。どう見てもそんな文化はなさそうだしな。
探せばどこかにあるのかな?
まあ、別にお箸でたべたいこだわりなどがあるわけではないのだけれども。
料理は豚のステーキ、安定の野菜炒め、黒色の固いパン、スープ。
スープが昨日と違っていた。
日替わりらしい。
今日のスープはベジタブルスープといった感じだ。しっかりと煮込まれていて野菜がホロホロと口の中で崩れるのがたまらない。
「このスープおいしいな。」
「そうでしょう?私がこの店のスープの中でも一番気に入っているもののよ。」
「そんなに種類があるのか?」
「ええ、ここの亭主がいろいろ挑戦好きでね。でも、1回もまずいスープは出したことないのよ。」
アニーが少し意気込みながら語りかけてくる。
スープ、好きなのだろうか。
「そうなのか。このスープはどのくらいの頻度で出るんだ?」
「そうねぇ、週に1回出ればいい方かしら。見ないときはとんと見なくなるわよ。」
「そんなもんか。」
そう相槌を打ちながら食事を進める。
アコが夢中でスープを飲んでステーキを食べて野菜炒めを食べてと忙しそうだ。
耳がちょっと自己主張しているのでハラハラする。
まあ、あんだけ頭を動かしていたらフードが揺れるのもしょうがないか。
「アコちゃんおいしそうね。」
「うまいもんは人を無言にするってな」
食事が来てからアコは本当に一言も喋ってない。
そのあとはアコを見習うように2人も無言でご飯を食べ進めた。
「おいしかったのっ!」
満足そうなアコと手を繋ぎ店を後にする。
「じゃあ、夕方前にそっちに顔を出すようにするよ。」
「わかったわ。」
「じゃあ、俺たちも行こうか。」
「はいなのっ!」
とてもご機嫌なアコと並んで道を歩いていく。
「よお、アル。」
「おお、カケルじゃないか。嬢ちゃんに腕輪なんかさせて。景気いいみたいだな。」
最初はいくところもないしアルのところへ来てみた。
銅貨を10枚渡して、
「とりあえず串焼き2つくれよ。」
まずは串焼きを買う。
「おいおい、嬢ちゃんに腕輪を買うくらいに景気がいいのに一本づつかい?」
アルが皮肉を言いながら銅貨を受け取る。
「昨日はダンジョンに行ってみたんだが、なかなかうまく行ってな。」
「嬢ちゃんもつれてか?」
「この子もなかなかできるんだぞ」
「そんなこと言ってたらすぐに死んじまうぞ。嬢ちゃん、こいつが死んじまったら俺んとこに来な。」
「ま、マスターは簡単には死なないのっ」
「俺はアコと寿命になるまでしなねぇよ」
「へへっ、そうかい。ほら、できたぞ。」
そういってアルが串焼きを2つ渡してくる。
俺に渡した方は少しレアっぽくいい感じだ。
アコが美味しそうにお肉を食べる。
「そういえばこれボアウルフの肉なんだっけ、昨日倒したけど魔石しか取らなかったんだが素材はどんなところが売れるんだ?」
ダンジョンの資料に特徴などがあったがどこが売れるかなどは書いてないなかったんだよね。
「まあ、食べている通り肉と、他には皮と牙だな。皮は刀傷が付いていないほど値打ちがある。牙はおまけだな。」
「なるほどな。他にはあるか?ミノタウルスやレッドボアとかも肉は食べれるのか?」
「食べれるがボアウルフの方が値打ちがあるな。ミノタウルスは筋張ってて牛の方がうまい。レッドボアは油がすごいんだ。牙は売れるけど嵩張るから持ち帰る奴は少ないな、大した値にもならんし。オークは最悪だな。肉は筋張ってるし油ある。ただヤツの玉を食べると精力がつくとかでそこだけいい値段がする。」
指を二本立てながらそういう。
銀貨2枚ということか…でも、さすがにそれは遠慮しておきたい。
「それならボアウルフを倒したら肉はここに持って来てやるよ。」
「そんときはオマケで2本焼いてやるよ。」
「他に何か変わったことはないか?」
アルに銀貨を渡してもう一本焼いてもらう。
アコが食べ終わったのだ。俺はまだ半分しか食べてないのに。
追加で買ったのに気づいたのか少し赤くなっているが、背中の尻尾が嬉しそうだ。
アルがなにやら銅貨が詰まったケースのようなものから5枚だけ銅貨を抜き取り残りをわたしてきた。
なるほど、銅貨数えるのめんどくさそうだなと思っていたけど、あれなら簡単だな。
「そんなおもしろいのはないなぁ、東側にゴブリンが出たってんで騎士様が動いて、ライルの街からの定期馬車が止まってるんだ。」
「ライルの街からの馬車が止まると何かあるのか?」
「あそこにはこの国唯一の薬師がいてな。ポーションはそこからしか作れないんだ。だから、消費する一方でな、しばらくは値上がりだろう。」
そういって串焼きを渡してくる。
「ほぅ…」
ポーションというものがあるのか。異世界だな。
相槌を打ちながらアコに串焼きを渡しつつ、そっとメニューを開きポーションで検索をかけると、
・レッドポーション 3ポイント
・ブルーポーション 3ポイント
・ハイレッドポーション 10ポイント
・ハイブルーポーション 10ポイント
・グリーンポーション 5ポイント
・グレーターポーション 50ポイント
と、出てくる。
レッドポーションは飲むと傷が治るとか。ゲームとかによくあるけど飲むだけで傷とか治ると怖くない?いざとなれば飲むけど。
ブルーポーションは飲むと魔力が回復するらしい。魔力ってやっぱりあるんだな。魔法も使えたりするのかな?明日アニーに聞いてみるか。
ハイとなのつくのは上位互換らしい。
グリーンポーションは状態異常を治せるらしい。
グリーンポーションは全てが回復する伝説の薬らしい。
他にもないのかと下にスクロールしていって気づく。
・レッドポーション製造書 30ポイント
・ブルーポーション製造書 30ポイント
と、製造書が10倍のポイントで売られている。
「この街に薬師はいないのか?」
「ああいう魔法のポーションは基本エルフたちの一子相伝のものだろう?人間の薬師がいるだけでもすごいんだ。ライルの街の薬師も作れるのは下位の3種類だけだしな。」
「エルフはいないのか?」
「50年ほど前まではそこそこいたらしいんだが、この国がエルフ狩りをし始めてからは逃げ出してな。」
まあ、そりゃ逃げるわな。
「ダンジョンの宝箱からも取れるがそれは微々たるものでな、年々値上がりしていくよ。グレーターポーションなど金貨5枚はするぞ。」
「金貨5枚…」
ここでダンジョン魔力を使いグレーターポーションを売れば儲かるのでは…。
それはいざという時にしよう。
魔法ライターではなくこっちを出せばよかったなと若干後悔する。
「下位のポーションはどのくらいするんだ?」
「なんだ、ポーションに興味があるのか?」
「ちょっと心当たりがあってな」
「今は銀貨で5枚ほどか。落ち着いたら2~3枚くらいだな。」
宿3日分か。
「そんなもんか。」
「下位のポーションはまだ供給されてるからな。ハイになると時価だな、高いときは金貨1枚でも売れる。貴族や王族がこぞって買うんだ。」
まあ、そんなものがあるなら手元に置いておきたいしな。
「ポーションはライルから荷を運んでるところの独占販売みたいなところがあるからな、もし手に入るなら俺に売ってくれ。悪くはしないぞ。」
もし手に入れられるんだったらながははと豪快に笑う。
これは製造書、交換してみてもいいかもな。
いいことを聞いたぜ。
「ありがとな、次来たときは4本くらいは串焼きを買ってもいいな」
「今買っていけよ…」
アコが食べ終わるのを待ち、2人で宿へ向かう。
「アコ、ちょっとやりたいことができたから、夕方までは宿で休憩でいいかな?」
今更だが、アコの体調を心配してダンジョンを休んだのに街を連れ回そうとしていたことになるんだが、まあ、宿に戻るのだし結果オーライということで。
終わりよければすべてよしだ。