第一三話:ケモ娘は文字を読めるようになりたいようです。
時間ができ、結構かけたので本日3話目です。もう1話投稿します。
探求者ギルドにつくと、探求者たちがちらほらとおしゃべりをしたり、壁に貼られた紙を見たりしていた。
夕方より人が少ないのはもうダンジョンへ向かったからだろうか。
「おはようございます。」
「おはようございます。探求者ギルド登録ですね?」
昨日と同じ美人のお姉さんに声をかける。
アコが少し不機嫌になったの気がするのは気のせいだといいな…。
でも、この少し高くなって、若干見上げる形になるのはどうにかならないのだろうか?
なんで高くなっているんだろうな?
視線を前に持っていくとどうしても大きく育ったものが視界に入って釘付けになってしまうっ。これが、これが目的なのかっ!
「はい、これで銀貨10枚。お願いします。」
「確かに銀貨10枚お受け取りしました。こちらの紙にお名前をご記入してください。」
丁寧にそういいながら、銀貨10枚を受け取り、紙を手渡してくる。
「名前…ですか」
そういえば字ってどうなんだろう。
とりあえず書いてみるか。ダメなら誤魔化せばいい。
そう思いながらペンを持つと不思議と名前がかけた。
日本語ではなく別の文字だ。
でも、不思議と意味が理解できる。
そういえば街とかの看板の文字もちゃんと認識できてな。
こういうところにすぐ気づかないあたり、俺ってかなり鈍いのでは…。
「はい、ありがとうございます。探求者ギルド証ができるまでしばらくお待ちいただけますか?」
「あ、それなら二階にある資料室を見せてもらってもいいですか?」
「はい、もう大丈夫ですよ。では、お帰りの際にまたお声がけください。」
「わかりました。」
「資料室は階段を上がって右手の一番奥の部屋です。」
そういって受付の横にある階段を示す。
軽く会釈をしながら階段へと向かう。
「マスター、また胸ばかり見てたの。」
ボソッとアコが呟く。
「こ、今回は見てないぞ!ふ、不可抗力だ!」
「んーっ!」
ぐっ…どうしろというんだ…。
若干いつもよりもアコが近くを歩きながら資料室へと向かう。
「いらっしゃい。こんな朝からお客さんなんて珍しいわね。」
資料室の中に入るとそう声をかけられる。
メガネの赤髪の女の子だ。
すこし垢抜けない感じで、髪の毛が若干ボサッとした理系なイメージを受ける。
歳は17か18あたりだろうか。
そして、断崖絶壁だ。
「マスター…またみてるの…」
っ!?
「ダ、ダンジョンについての情報が知りたいんだ。」
聞かなかったことしてそのまま女の子に話しかける。
「そう、私はアニー。ここの資料室の管理をしているの。ダンジョン関連の資料はそこにあるわ。あまり汚さないでね。」
「どうも。」
そういいながら示された方へ行く。
資料室の中はあまり広くなく本棚が4つ、壁際と窓際に置かれ、椅子と机2つのが2セットづつと、受付のアニーさん用のカウンターのみだ。
「初めてなら、まずはその資料からみるといいわ。」
カウンターからそういいながら指を指し示してくる。
ダンジョンのあれこれ。著アニー・ブラウン。
あの子が書いたのか…。
とりあえずその本を持ち机に向かう。
「そういえばアコは文字は読めるのか?」
机に座り聞いてみた。
「読めないの…ごめんなさいなの…。」
「いや、気にしなくていいさ。」
そう言ってポンポンとアコの頭を叩く。
「その子、文字が読めないの?」
アニーがそう声をかけてくる。
「読めないらしいです。」
そう応えると、ゴソゴソと何か探し、紙とペンを何枚か手にこちらへきた。
「私の名前はアニー。あなたの名前は?」
膝をおり、アコに視線を合わせて問いかけるアニー。
「あ、アコ、なの。」
「そう、アコちゃんっていうの。お姉さんと字を読む勉強する?」
「い、いいの?」
そういいながらアコはアニーと俺を交互にみる。
アニー。ぼっち気質かと思ったら意外と子供好きか…?
それとも案外暇なのだろうか。
「ここは資料室。ダンジョンの新しい情報が来ないともうあらかたやることはないのよ。」
そう笑いながら応えるとアニー。
「字、読めるようになりたいの。」
アコがそういいこちらをみてくる。
俺はアコが自分のしたいことを言ったことにすこし嬉しくなりながら、うなずいて肯定する。
「ありがとうなの。」
「ふふっ、お礼を言うのは最後よ。」
そう笑いながら、アニーは椅子を1つこちらへ運びアコの隣へ座る。
「こんな室内じゃそのフード邪魔じゃない?とらないくていいの?」
アニーがそう聞いてくる。
「あ、あの…これは…。」
アコが慌てる。
俺が口を挟もうとしたら、
「大丈夫よ、私は獣人だからって別に嫌悪したりしないわ。午前中は他のお客さんなんてこないしね。」
笑ってアニーがそう応える。
「き、気づいていたのか。」
「私、獣人の子って好きなの。可愛い耳、見せて欲しいな?」
そう言ってアコに笑いかける。
アコがおそるおそるとフードを脱ぐ。
「やっぱり思った通りにかわいいわ。素敵な毛並みね。」
「あ、ありがとうなの。」
「じゃあ、早速文字を読む練習をしましょうか。」
そういいながら紙を何枚か出してくる。
そのあとはアコとアニーが文字を読む練習をするのをBGMに資料を読むのに集中した。
ダンジョンは今から100年ほど前に出現したらしい。3代前の国王が、竜を地下に封じ込めダンジョン化した。ということになっている。
ダンジョンは現在32層まで攻略されているらしい。
各階層は小部屋と廊下でできており、小部屋には魔物が1体づつしか出ないらしい。
小部屋に入ると中の魔物を倒すまで、外からは入れなくなるらしい。でも、中からは出られるという親切設計。
倒した者たちが小部屋から出ると、少しするとすぐに次の魔物が湧くらしい。
回収しなかった死体などは部屋を出たらすぐに消えるらしい。
5階層ごとにボスフロアになりここも同じような仕様らしい。
一番驚く情報がこれ。
なんでもたまに小部屋のなかに魔物が湧かず魔法陣のみがある部屋があるらしく、その魔法陣に乗るとダンジョンの入り口へと戻れるらしい。
なんと魔法ちっくな…
そして、各階層の階段を降りた最初の場所にも同じ魔法陣があるらしい。しかも、その階層の入り口の魔法陣は一度使うとダンジョンの入り口にあるらしい魔法陣から飛べるようになるらしい。
なんという親切設計。
なんだろうな、このモンスターを安全に倒すために作られたかのような設計は。
人間を狩るために作られた設計ではない気がする。
三代前の国王がダンジョンマスターだった?
うーん、しかしそんな長生きするものだろうか?
ダンジョンマスターが死んだあとそのままダンジョンが残っている?
最初の1〜4階層には、ボアウルフ、レッドボア、オーク、ミノタウルスのどれかが出るらしい。なんという豚推し。どんだけ豚が好きなんだ。
ミノタウルスは牛か。
なんというか、肉を取ってくださいと言わんばかりのメンツ。
ボアウルフはイノシシと狼が混ざった見た目をしているらしい。どんな見た目だ。
突進して倒れたところを噛み付くらしい。
しかし、足が短く飛びついたりなど狼のような素早い動きはないらしい。
レッドボアは赤いイノシシだ。
突っ込むことしかしないらしい。
オークとミノタウルスは二足歩行の豚と牛でどちらも突進しながら棍棒を振り回すらしい。
このチュートリアルのような優しい敵、嫌いじゃないです。
もう落とし穴に入れてくれと言っている気がする。
「お腹すいてきたわね」
そうアニーが呟く。
「そろそろお昼か。」
「お腹すいたの。」
「お昼にしようか。アニーも一緒にどうだ?アコに教えてくれたお礼に奢るぞ。」
「いいの?じゃあ、ご馳走になろうかしら。」
本を片付けて、アコにフードを被せ手を繋いで歩く。
「あなたたち、いつも手を繋いで歩いているの?」
「ああ、はぐれたら大変だしな。」
「とんだ過保護ね。」
「大切なアコが迷子になるなんてことあったらいけないからな。それよりも、いいお店知らないか?俺たち街に来たばっかりでな。」
「わかったわ。いつも行ってるいきつけがあるからそこにしましょう。」
高くないと祈ろう。
街はお昼時だからだろうか、結構な人があるいている。
「あなたたちはどうしてこんなところに?特にアコちゃんもいるのに。」
アニーが歩きながら質問してくる。
「いろいろあってな。」
さすがに気が付けば異世界に飛ばされててなんだかんだアコをダンジョンコアにしちゃったんだなんていえない。
「そう。」
アニーも深くは追求してこなかった。
5分くらい歩いてたら一軒の食堂につく。
「ここよ。量も多いし、値段も良心的なの。品数が少ないけどね。」
「そうなのか。」
キングボア食堂というらしい。
どんだけこの街の人はボアが好きなんだ。
中は結構広くかなりの人が食事をしている。
品数が少ない分回転率がいいのだろう。
ご飯もかなり美味しそうだ。
そういえばアコが食堂で食べても大丈夫だろうか…。
「ここのオーナーならうるさくもないし、フード外さなくても何も言わないわよ。」
顔に書いていたのだろうか…
「それはよかった。」
3人で席に着く。
席に着いたらすぐに店員のウェイトレスがくる。
ウェイトレス服のスカートがかなり際どい。なるほど、客が多いのも頷ける。
「マスター…またみてるの…。」
「最低ね…。」
「め、珍しい格好をしているなとおもっただけだ!」
あわてて取り繕う。もう何を言っても遅い気もするが。
「いらっしゃいませ!豚と牛とチキンと魚、どれにしますか?」
「この店、4種類のセット料理のみなのよ。」
なるほど。
「アコはなにがいい?牛食べてみるか?」
「ま、マスターと同じので…。」
アコが可愛いことを言ってくる。
「じゃあ、牛を2つ。」
「私は魚で。それとラーカもちょうだい。」
「ラーカ?」
「飲み物よ、最近この街でできたものらしくて流行ってるのよ。」
「へー。じゃあ、俺たちもそれください。」
「はーい。牛2つに魚1つ、ラーカ3つですね。少々お待ちください。」
パタパタと厨房へ入っていくウェイトレス。
「料金、あの子が飲み物持ってくるときに支払いよ。たぶん銀貨1枚と銅貨32枚くらいね。」
「わかった。」
銀貨1枚に銅貨32枚か、ラーカが銅貨4枚で、料理が40枚か?
そのくらいだろあな。
お金を用意し終わったところにちょうどウェイトレスがくる。
黒い炭酸の飲み物を配る。
「はい、ラーカ3つです。それと料金銀貨1枚に銅貨32枚ですね。」
ぴったしだ。
「これで。」
机に並べたものを示す。
わかりやすく5枚づつに並べて配置していたのだ。
「まいどー。料理はもうちょっと待ってね。」
軽く数えてお金を受け取って他のお客さんの元へといく。
「これがラーカか。」
どうみてもコーラだ。
瓶に入っている。これ、俺が召喚した時と同じ瓶だ。
やっぱりこの世にあるものが召喚できるって説が濃厚だな。
味は普通にコーラだ。
アコが炭酸に驚いていた。
ケホケホと少しむせているのが可愛い。
アニーも口元が緩んでいるのできっと同じことを考えているのだろう。
「あなたたちはどのくらいこの街にいるの?」
「考えていないけど、しばらく入るつもりだ。お金が溜まれば隣の国にでもいくつもりだが。」
「そう、国を移すならここから北東側にあるライナス帝国にいくといいわよ。獣人も暮らせる場所だと聞いているわ。」
後半は周りに聞こえないように声を落としてそう言った。
「でも、しばらくあとならもうすこしアコちゃんに文字を教えられるわね。私基本は午前中はやることないから暇なのよ。」
「そうか、時間があるときは通うようにするつもりだから、そのときはよろしく頼む。」
「えぇ、ご飯も楽しみにしとくわ。」
そう言って笑ってくる。
ご飯まで勘定のうちか。まあ、獣人を嫌わない人が近くにいるのはアコにとってもいいことだ。
そうこうはなしているとご飯がくる。
「結構早かったな。」
「この店、それが売りだからね。」
結構量が多いな。
宿の倍くらいある。
俺のは牛肉のステーキのようなものに、野菜炒めと、パンに、これはホワイトスープか?
アニーのものはステーキが魚になった感じか。
「いただきます。」
「い、いただきますなの。」
パンをちぎりながらスープに浸して食べているアニーが気になったのか聞いてくる。
「今の、あなたの故郷か何かの文化なの?」
「ああ、食べるときに言うんだ。」
「そう、アコちゃんのところのじゃないのね。」
興味がなくなったかのように魚を食べ始める。
とことん獣人が好きなやつだな。
「アコちゃん、お魚食べる?」
「いいの?」
「いいわよ、ほら、あーん」
アニーから魚をもらい美味しそうに食べるアコ。
「かわいいわぁ」
お互い満足そうだ。
おれもかわいいとおもう。
それにしてもこのスープは特別美味しいな。
「ここのスープ、美味しいでしょう。」
俺が美味しそうに食べるからだろうか、そう声をかけてくる。
「ああ、これだけでもきた甲斐があった。」
「ふふっ、そう言ってもらえると紹介してよかったわ。」
「ありがとうな。」
「いいのよこのくらい。」
「アコのことも含めて、だ。」
「それこそ気にしなくていいわよ、私が好きでやっているんだもの。」
そのあとはアニーがアコに、パンに肉を挟んで食べさせたりと、楽しそうに食事をした。
「ふー、ごちそうさま。」
ごちそうさまは言うんだな。
アニーの呟きのそう思う。
いや、それっぽい言葉を勝手に翻訳したってのもありえるな。文化ではなく、それらしい言葉だ。
まあ、どっちでもいいか。
3人で食堂を後にしアニーに質問を投げかける。
「俺たちはこのままダンジョンにいくつもりだが、アニーは資料室か?」
「そのつもりよ。」
「武器屋を見たいんだがいいとこ知らないか?」
「それならこの通りをもう少し行けば鉄屑工房って場所があるわ。」
「わかった、そこへいってみる。」
「じゃあ、またね。ダンジョン、気おつけなさいよ。」
これはアコを心配してのことだろうな。
「ああ、アコを傷つけさせるなんて真似、させないよ。」
そういってアニーが歩いていく。
俺たちも武器屋に行ってやっとダンジョンに行けると思ってそこで大事なことを思い出した。
「お、おい!アニー!」
声を出して呼び止める。
アニーが振り返る。
「なに?」
「ダンジョン、どこにあるんだ?」
きっとそのときのアニーの呆れ顔は、これから忘れることができないだろう。
新キャラ登場です。