大人になるということ
※この小説を読む前に。
ここに書かれている内容は素人である私の私見です。読者の方と意見が違う部分があるかもしれません。
そのような点がある事を理解した上で判断下さい。
今年度はテロ事件が多かった。オーストラリア、フランス、デンマークで人質・銃撃事件が発生し、ベルギーでもテロ計画が未然に阻止された。そして日本も例外ではなかった。
70年前日本は戦争に負けた。
日本が戦争に負けた2年後、大日本帝国憲法に変わり、現在の日本国憲法が施行された。その後約70年という年月で日本はあの焼け野原から現在に至るまでの発展を遂げた。
これは賞賛に値するものだと思う。しかし、この発展の影で実際にどれだけの人間が犠牲になったのか知る者は少ないだろう。
「日本は太平洋戦争後、憲法9条のお陰で戦争に巻き込まれなかった。平和だった」と言われる方がいる。
それは本当だろうか・・・
1月にISIL(様々な訳があるが、国連等が使用しているこの訳を使う)が日本人2人を殺害すると宣告し、解放して欲しければ2億ドル支払えと要求してきた。残念ながら2人共に殺害されてしまった。お2人のご冥福をお祈りいたします。
この事件が発生後マスコミは連日のように2人の情報やISILについて報道してきた。その中でレポーターが待ち行く人にこのようなインタビューをしていた。“日本でテロが起きることを考えますか?”という質問だ。何組か質問していた中の1組、20代半ば~後半とおぼしきカップルが質問に答えていた。主に答えていたのは男性の方で、
「日本でテロが起きる事を考えた事がありますか?」
「考えた事無いですね。そんな事。遠くの出来事なので非現実的です。日本は平和なので」
と言っていた。最後の“平和なので”部分は半ば笑って・・・
人間は人それぞれ物事に対する考え方と意見、関心度が異なるが、それは良い事であり悪い事でもある。
私は現在の状況を“日本は平和なので”の一言で片付けられないと思っている。
正直に言って腹が立ってしまった。本人はそれほどよく考えずに言ったのかもしれないが、本気で言ったのではないのかもしれないが、その部分のみで判断するなら、不謹慎だと思う。
私たちが今、こうして生活しているのはその“平和”が続くようにと願い、行動している人たちがいるからだ。平和は大変脆いものだ。現に第一次世界大戦はオーストリア=ハンガリー帝国の皇位継承者であるフェルディナント大公と妃ゾフィーの暗殺により始まった。2発の銃弾が2人の命を奪った事で、1914年から1918年まで続いた戦争は900万人以上の兵士が亡くなった。
その脆く、壊れやすい平和を護ることがどれだけ大変で難しいことなのか・・・
他にも「この事件は戦後初めて日本人が国際テロ組織に狙われた事件だ」と言われる方がいるが本当だろうか・・・
日本は戦後、平和でテロとは全く関係ないように見えるが、そんな事は無い。
上記のような事を言われる方たちは一昨年のアルジェリア人質事件を忘れたのか?
僅か20年前に東京の地下鉄で何が起こったか覚えている人もいると思う。宗教団体のオウム真理教が地下鉄千代田線、丸の内線、日比谷線に神経ガスのサリンがばら撒かれた。この事件で約6300人以上が死傷した。
それよりもっと前の1970年代~1990年代までに日本人が関わったテロは宗教、左翼、右翼、アナーキスト等が起こした物が多々ある。約40件近いその中で何人もの民間人が死傷した。また日本人が海外でテロリストとしてテロを起こした事件もある。テルアビブ空港乱射事件を最初に、クアラルンプール事件やダッカ日航機ハイジャック事件を日本赤軍が起こした。特に最後のダッカ事件は日本警察に特殊急襲部隊を創設させるきっかけとなった。
こうしたテロ事件には北朝鮮による日本人の拉致も入るものと考えるが、いかに日本がテロに脆弱か、同時に自らの事を自ら行えないか・・・3.11の時も今回のISILの件にしてもそうだ。
3.11の福島第一原発事故はある意味でテロリストに原発の弱点を教えてしまったようなものだろう。あの事故で福島第一原発は地震には耐えていた。しかし津波で非常用の電源まで失われた。こうなると核燃料を冷却する事が出来ない。その結果水素爆発が発生してしまった。これは自然災害だけではなくテロリストによる攻撃でも電源系統が破壊されれば原発は危機的状況になるということだ。使用済み核燃料貯蔵プールが破壊されれば水素爆発ではすまないだろう。勿論、警察を始め、政府は対策を講じていることと思う。
話が少しずれてしまったので元に戻す。
今回のISILの件に関して、テロリストの目的の1つは達成されたと思われる。
特定秘密保護法 第12条2項を参照させて頂くとテロリズムとは以下のことを示す。
ーー政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動ーー
今回の事件により社会に対し不安や恐怖を与える宣伝と心理戦、これらをISILは達成させた。
一昨年のアルジェリア人質事件もこの事件もこの国は忘れてはならない。再発防止に努めていかなくてはならないだろう。その後、自衛隊の邦人救出が再び議論されている。その邦人救出を行う部隊として陸上自衛隊の特殊作戦部隊である特殊作戦群の名前が挙がっていた。
特殊部隊による人質救出には様々な意見がある。いざ投入しても必ず人質を救出できるという保障は無い。現にアメリカやイギリスも特殊部隊を投入しても失敗する事も、成功する事もある。“どちらがいい”とは単純に言えない。
素人が口を出すなと言われればそれまでだが、特戦群が今回救出作戦を行えたかというと私は無理だったと思う。
ーー特戦群の錬度が低いと言うことではない。むしろ創設されて11年目を迎えた。いつ命令が発せられても任務を完遂出来るように錬度を維持・向上されていると思う。装備品等に関しては分からないが予算をより割くべきだと思うーー
それはアルジェリアの際にも問題視された情報収集体制だ。特戦群にしろ、海自の特別警備隊にしろいざ命令されても、作戦を行うために必要な情報が無ければ意味が無い。1度たらず、2度・・・いや関係者の方たちは今まで散々味わってきたかもしれない。素人の私が言わずともと思うがあえて言う。人間やメディアを媒介とした、つまりはヒューミントを行う対外情報機関が日本には必要だ。この問題は何度も意見として出されているが、未だに具体化されていない。
そして、これは情報を収集する部門とその情報を元に行動を起こす部門、双方に言えることだが、結局、政治が決めるか否かということだろう。
特殊部隊を投入すれば犠牲になるかもしれないのは人質だけではない、隊員が犠牲になるかもしれない。しかし特別警備隊で先任小隊長を務められた伊藤祐靖氏や特殊作戦群初代群長の荒谷卓氏が取材等で述べているように隊員の方々は既に覚悟を、肚を決めていると思う。ならば政治が覚悟を、肚を決めるだけだ。
対外情報機関にしてもそうだ。このような事件が起きるたびに日本は米英等に情報提供を要請する。自らも情報を情報を収集しなければ要請した国々の、他国からの情報だけよって約1億3000万人が暮らすこの国の運命が左右される。勿論、すぐにCIAやSIS、モサド等に匹敵するだけの機関が作られる訳無いが、しかるべき人員と予算と時間を掛けて創設し、成長させていかなければまた類似した事件が発生した場合に対応できない。
この国と国民を本気で護るつもりがあるならば、それ相応の肚を決める必要がある。
私の祖母が以前言っていた。
“自分の事を自分で、自分からしなければ大人じゃない”と。
この国の国内総生産(GDP)は世界第3位だ。とても素晴らしい事だ。しかし、安全保障・危機管理は言ってしまえば他人任せ。自分でやろうにも少ししか出来ない子供だ。
自らに力がある。ほんの微力かもしれないが力がある。にもかかわらず、いざという時に問題を解決することを他人任せにして自らは何もしない。
以前、自分たちが生活する上で依存していると言っていいものを護る為、安定して供給されるようにするために、関係ある国が力を出し合っているのにこの国は金で解決しようとした。
ダッカ事件の際に当時の総理は“一人の生命は地球より重い”と言われ、身代金を払った。
という事は人の生命>身代金という事になる。
どこの国も人の生命が大事だという事は分かっている。しかしそれでも、護る為に1番大事なものを各国は協力して出しているのに日本は出さないのか?
子供でも一定の責任はある。そして大人になれば責任は重くなる。そろそろこの国も大人になり、いざという時はそれ相応の責任を負うべきではないだろうか?
勿論、そのような事態が発生しない事を心から願う。