十話
「何が秘湯だ! 宿の風呂の大元だっただけじゃないか!」
秘湯を見つけた由利は、その秘湯からパイプが繋がっているのを発見、その先は、ルリティ山脈側にある宿泊所の風呂に続いていた。
最初はご機嫌で風呂に入った由利だったらしいが、その事実を知って憤慨している。
しかも秘湯と言いつつ、仕切りがあるし、入浴料まで取られる始末だったらしい。
見晴らしは良かったそうだけど。
「今日は宿泊所に泊まるよな」
「ああ」
一週間近く、狩場で宿泊していた俺達は久しぶりにゆっくりと休むことにしていた。
部屋に入ると、途端に疲れがドッと押し寄せ、泥のように眠ってしまう。
気が付いた時には夕方を過ぎて、夜になっていた。
「しっかし……お前は女らしさが無いよなぁ……」
女子と一緒に生活して二週間は過ぎるというのに、興奮するという事がまったく無い。
「それはお前が私を女として見ていないだけだ! どうだ、このプロポーション!」
色目を使いながら悩殺ポーズを取る由利。
うん、こんな台詞の後じゃ色っぽいもクソも無い。
「さっさと飯にしようぜ」
「あ、貴様! 私に魅力が無いと言うのか!」
「うん」
「貴様ーーーーー!」
なんて馬鹿なことをやりながら酒場に顔を出すとフラティアが優雅に食事をしていた。
「あら、野蛮人じゃありませんの、最近見なかったら死んだかと思いましたわ」
「勝手に殺すなよ」
由利はフラティアの顔を見るなり不機嫌になり、そっぽを向いていた。
ロロはキョロキョロと辺りを見渡している。おそらく幼馴染のタヌポヌを探しているのだろう。
「アナタ、まだタヌポヌなんて使っているんですの? アナタのLvは?」
「16」
「16!! 16ですって、幾らなんでも怠慢ではありませんの?」
「そうか?」
「私は27になりましてよ」
「ほう、そりゃあ高くなったな」
「何余裕を見せてますの!」
「誰が余裕を見せたよ」
「あなたよあなた! 異世界人だというのに、その程度のLvで恥ずかしくありませんの?」
「Lvが高い=偉いって訳じゃないぞ?」
俺の返答にフラティアはウッと声を詰まらせる。
「ギルドの評価とか、数値上では見難い部分だってあるだろうに……そりゃあ高位のモンスターを使役するのは良いだろうけど」
あれだよな。
コイツ、この世界出身なのに感性が異世界人なんだ。
古来から存在するオンラインゲームで如何に他人を出し抜くかとか考えているタイプに近いか。
きっとコイツ、オープンベータサービスの最初の日は走り出すぞ。
「俺は世界を救う勇者でも、みんなを元の世界に帰す英雄になるつもりは無い」
なろうと思ってなれる訳じゃないけど、俺は自分のやりたいようにこの世界を楽しく過ごしていたいだけなんだ。
だというのに、この女は一体、俺を何だと思っているというんだ。
「まったく、呆れて物が言えませんわ」
「あっそ、で、お前の連れていたタヌポヌはどうした?」
「あら? こんな所で出しているほど私は馬鹿ではありませんことよ」
……完全にアンデット化してしまったわけか。
それなら食事をする所に出すわけにもいくまい。
「それに、そろそろ不要になってきましたし、同個体内では優秀でしたが、アンデット化させても所詮はタヌポヌですわね」
ロロがそれを聞いてがっくりと肩を落とした。
精一杯頑張って、これでは浮かばれるものも浮かばれない。
「お前……」
由利が不愉快そうに睨みつける。
「なんですの?」
「やめておけ」
俺が由利に注意を促す。
「もう別のメンバーが揃いましたの」
ポンとフラティアは三匹のモンスターを召喚した。
一匹は小鳥、レイバとは近い種のホウバ。
おそらくルリティ山脈で手に入れたのだろう。
一匹はトカゲ、ゲガザーの上位種、デガゲガザー。
サフィエット湖の奥地あたりが生息地だったはずだ。
最後の一匹は白い……キツネ? これは知らない。
「そうか……じゃあさ――」
チャンスだと思った。
この機会を逃せば、おそらく次は無い。
「アンデットタヌポヌ、使わないなら俺にくれない?」
「なんでアナタにあげなくてはいけませんの?」
「使わないんだろ? それとも魔石化させるのか?」
「魔石化させようかと考えていましたが……」
「ならその分の魔石をやるからくれない?」
「……それでも何故アナタにあげなくちゃいけませんの?」
不愉快そうにフラティアは俺の提案を拒む。
「そこをこう……Lvの低い俺を思って譲ってくれない?」
「嫌ですわ」
やっぱりダメか。
とはいえここで引き下がるわけには行かない。
なんでも良い。
どんな手を使ってもロロの幼馴染を手にするんだ。
魔石になんてさせてたまるか!
その為なら……。
「じゃあどうしたら譲ってくれる?」
「なんですの。どうしてそんなに私のモンスターを欲しますの?」
「手ごろな戦力が欲しいんだよ」
「……呆れてものが言えませんわ。そんなに欲しいなら地に頭を付けなさい」
「黙って聞いていれば貴様――」
由利が怒りを露にする中、俺は座っているフラティアの前に立つ。
「な、なんですの?」
そして地面に頭を擦りつけて頼み込む。
「どうか俺にお前のモンスターであるアンデットタヌポヌを譲ってください」
「「「な――」」」
酒場は騒然となった。
ざわざわとこちらに向けてざわめきと視線を感じる。
「だ、ダメですわ!」
「ダメなのか?」
「う……ど、どうしても欲しいというのなら、顔を上げて、私の足を舐めなさい」
俺は顔を上げ、フラティアの組んでいる足に手を伸ばし、舌を出して靴を――
「や、やめ――」
拒絶の言葉が出てくる前に舐めた。
「これで良いか?」
「……はぁ……分かりましたわ、あなたの腐った根性に見かねて譲って差し上げますわ」
フラティアは諦めたように声を絞り出し擬似魔結晶を弾いて、俺にアンデットタヌポヌの結晶を手渡す。
「ありがとう! これだけの魔石があれば釣り合うか?」
「渡さなければ、私の言ったことを何でも実行しそうだからですわ。しかも約束を反故にしたら何をされるか……勘違いしないでくださいまし!」
「マスター……」
「貴様……」
ロロと由利の視線が痛い。
「今日は気分が悪いですわ。私、部屋に帰りますわ」
顔を青くしてフラティアはふらふらと酒場から出て行った。
よし! 今日は大収穫だ!
「最低だ」
由利が何やら俺を軽蔑の眼差しで睨みつける。
「どうしたんだ?」
「お前は同業者が不要だと捨てる強いモンスターを狙っていたんだな」
「は? 何を言っているんだ?」
「お前が今、持っている結晶が何よりの証だ!」
「マスター……幾らなんでも……」
ロロも一緒に俺を蔑む。
何を勘違いしているのやら。
由利と同じ言葉が酒場内で聞こえてくる。
知ったことか、俺には俺のやりたいことがあるんだ。
「目的は完遂したし、次は隣国にでも行くとするか」
あそこまで行けば問題は無くなる。それからあの作戦を決行すれば。
「マスター……僕は由利さんと一緒に行きたいです」
「は?」
「そうだな、勇、ロロの結晶を寄越せ」
……どうしてそうなる?
「ボクは由利さんと一緒に部屋で待ってますね。出来れば早く、由利さんに渡してください」
「何言ってんだ。お前が来なきゃ始まらないだろ」
俺はロロの手を掴んで歩こうとする。
しかし、ロロは嫌がって拒む。
「嫌です! どうしても来て欲しかったらボクを使役モンスターにすれば良いでしょう」
「良いから来い」
「嫌ったら嫌です!」
何をそんなに嫌がっているのか。
俺がそんなに信頼が出来ないというのか?
幼馴染のタヌポヌを所持しただけで嫌悪されるというのは感情が爆発しているんだな。怒りの捌け口を俺にぶつけてしまっているんだ。
「良いから来るんだ!」
ラチがあかないのでロロを抱き上げ、無理やり連れて行く。
しょうがない。本当は後でやらなきゃいけない事だったんだがなぁ。
「嫌です嫌です! 放してください!」
「ロロを放せ」
由利が剣を向けて俺にドスの聞いた声で命令する。
「悪いがそれは出来ない相談だな。俺はこれから仕事をするんだ」
「魔物使いとしてか?」
「ああ、魔物使いとして――」
返事をしきる前に由利は俺に剣を振りかぶっていた。
剣の軌道を読み、流れるように由利のみぞおちに蹴りを加える。
「ガハ――」
「邪魔しないでくれよ」
二週間も一緒にいれば攻撃の癖くらい見えてくる。魔物使いは魔結晶の加護は無職より低いけど戦えないわけではないんだ。
「貴様……」
「由利さん!」
なんかロロが由利の事を心配して声を掛けている。
「邪魔しないならついてきても良いから、行くぞ」
「うるさい! 早くロロを放せ」
「一緒に来ないからだろ。あ、そうか」
魔結晶を弾いて、ロロを結晶化させる。
ポンッと音を立てて、ロロは結晶に戻った。
俺はそれを魔結晶に戻して走り出す。
「待て! 逃げるなーーーー!」
由利は鬼のような形相で俺を追いかけてくる。
一体どうしてこうなった?
宿泊所を抜け、人もまばらになるまで走り、振り返る。
「はぁ……はぁ……」
「待てーーーー!」
疲れを知らないのか……魔結晶の加護による差が恨めしい。
そのままサフィエット湖に向う丘を走り、人がいないサフィル森林地帯で藪を掻き分けて進む。
やがて森の中である程度のスペースを確保できる広場を見つけたところで足を止める。
「やっと観念したか」
「だれが……」
俺は魔結晶を弾いて、ロロを呼び出した。
ポンッとロロは現れ、辺りを見渡す。
「な、何をするつもりですか!」
「まあ、まってろ」
俺はフラティアから貰ったアンデットタヌポヌの結晶を登録する。
使役モンスター欄
● ● ○
そしてアンデットタヌポヌの状態を確認するため、召喚した。
ポンっとロロと同じように音を立てて、結晶からロロの幼馴染が姿を表す。
「ヴー……」
「これは……」
「う……」
由利とロロがそれぞれ顔を歪ませて呻く。
瞳は曇り、一つは崩れ落ち、耳の一つは無残にも契り取れ、筋組織が露になり、骨にまで達している。
口からは常に涎を垂らし、うめき声を上げている。
腕は半分が腐りきって、右腕は完全に骨と化している。
腹部も無残に切り裂かれた痕があり、尻尾にいたっては半分から先が無い。
アンデットタヌポヌ
ステータスはロロと比べると確かに倍以上ある。
進行は完全に終わり、属性は不死。使えるスキルは強打。まあ悪くは無い攻撃方法だ。他に毒噛みつき等、状態異常系のスキルがある。
「23456……」
命令を棒立ちで待つ幼馴染の末路にロロは詰め寄りながら涙する。
「貴様、これを見せ付けて何をするつもりだ」
俺は所持している魔石を出し、あたりにばら撒く。
「本当はもう少し後になってからやろうと思っていたけど、どうもロロは俺を信じようとしないからなぁ」
そして、ロロの幼馴染を結晶化させて手に収めた。
「ロロ」
「……なんですか?」
「この子の意識だけでも戻ってきて欲しいか?」
「へ?」
不快そうな顔をしていたロロは俺を見上げてキョトンとする。
「お前が望むなら俺は叶えてやろうと思う。もちろん、成功するか分からないけど」
「ほ、本当なのか!」
由利が俺の方へ駆け寄ってくるが、睨みつける。
「良いから黙っていろ。俺はロロに聞いている」
「どうやって……」
「変換合成を使う」
「変換、合成? 普通の合成じゃないのですか?」
「普通の合成ってギルドに申請して作ってもらう奴だろ? あれは自我のあるモンスターは審査を通れない。だが、俺の師匠がくれた手帳に載っていた方法はモンスターを合成し、別のモンスターを作り出す。作り出されるモンスターの自我は素材となったモンスターの意識を基にするんだ。」
「そんな方法が? ギルドじゃ教えてくれなかったぞ」
「……まあ、ちょっとな。もしかしたら……意識だけでも取り戻させることができるかもしれない」
俺は魔石化させていなかったレイバの結晶を取り出してロロに見せる。
「不死属性となると光か聖属性で打ち消すのが良い。どうだ。試して見るか?」
「……なんでボクに聞くんですか」
「大切な仲間だからだ。俺個人だけで決めて良い問題じゃないと思っている」
「仲間……道具じゃないのですか?」
「これまでの間に、俺がお前を道具扱いしたことがあったか?」
ロロは首を振る。
「マスターは今までボクをずっと、大切にしてくださいました」
「だろ? もしも、この儀式が成功したら仲間が増える事になる。それはお前に相談しなくちゃいけない事だし、この子をエゴで助ける必要があるかも聞きたかった」
「エゴ?」
「魔物は肉体を失ったら生まれ変わるんだろ? 意識を取り戻させるというのは大事な主に捨てられた事を知るんだ。それなら何もかも忘れて生まれ変わるのも一つの選択だ」
それに、これはとても重要な問題だ。
「しかも完全に成功するとは限らない。成功しても、自我が、レイバの物である可能性があるんだ」
そうなったら、新しく生み出されたモンスターは俺の仲間になってくれなどしないだろう。
自分を封印した敵に体を組みかえられた。
そんな意志しか持たない。
何よりロロの友人の意識が蘇ったとしても仲間になってくれるかわからない。
かなり無理をして手に入れたアンデットタヌポヌだが、所詮は俺のエゴでしかないんだ。
あの時頭を下げれたのだって、俺程度の小さなプライドを捨てるだけでロロの幼馴染を助けられる可能性が、1%でも増えるなら安いもんだ。
「どうする。それでも、試してみるか?」
ロロは俺をまっすぐに見つめ、それから視線を外して考える。
「……もしも、成功して、23456が帰ってきても……フラティア様に捨てられた事を知って悲しむ……」
そうだろうな。
とても信頼してアンデットになると分かってなお、忠義を尽くしたんだ。
戦力外で捨てられたと知ってとても悲しむかもしれない。
「だけど、ボクは、戻ってきて欲しいです。それで23456が悲しんで、死にたいと思っているのなら……その時こそ、引導をマスターに頼むことになります。お願いします! どうか、どうか23456を呼び戻してください!」
「分かった! じゃあ少し下がっていてくれ」
ロロは由利の足元まで戻って俺の方を向く。
俺は、右手と左手、それぞれに結晶を持ち、意識を集中する。
そして魔結晶のスキルに記載されていない、範囲外スキルを詠唱する。
「――我願う、完全なる魔、完全なる意志、完全なる魂の存在の創生。その礎たる生贄をここに供物として捧げん」
辺りに散らばった魔石が俺の詠唱と魔力の流れに反応して発光しだし、頭に浮かべた魔方陣を地面に刻む。
とてつもない魔力の消費を感じる。
数字化した俺の魔力が凄い勢いで減少していく。
本当は魔石なんて必要無いけど、今の俺には無くてはならない物だ。
範囲外スキルだとして、おそらく必要最低Lvは35前後だろう。
「故に、我、ユウ=ミウラの名の下に、不死たる獣アンデットタヌポヌと光たる翼レイバを完全なる生命の礎として理を捻じ曲げ、新たなる形としてここに創り上げん」
アンデットタヌポヌの結晶とレイバの結晶が俺の手の上で高速で回りだす。
辺りに風が吹き、魔方陣が一層輝く。
バチバチと俺の視界にウィンドウが現れ、モンスター名が揺らいでは刻まれていく。
……何個かあるのだろう。
だけど、今の俺には一つしか読み取ることができなかった。
「朝を告げる霊鳥! チェスバヌ! ここに創生!」
バシン! と、音がして俺の前で結晶が一つになった。
そして煙が辺りを覆う。
「はぁ……はぁ……」
魔力が限界ギリギリの数値で止まっていた。
相当、無理をしただろう。体中が悲鳴を上げている。
「マスター……」
「す、すごい煙だ」
「ど、どうだ? 成功した……か?」
合成によって作り出されたモンスターは最初、実体化している。その実体化を解くにはモンスター自身の意志が必要なのだ。
風が吹き、煙が晴れるとそこには一匹のモンスターが佇んでいた。
そこにはニワトリの鶏冠があるカラスのようなモンスターがいた。
確か名前はチェスバヌ。
「あれ? ここ……は?」
「23456!」
「あれ? 23466じゃない……私は」
「成功か!?」
「アナタ達は!? 私を殺し――」
失敗か!? レイバの意識も存在するよう――
「あれ? ん?」
ロロの幼馴染は翼を頭に当てるように考え込む。
「手が私の手じゃない」
「それは、ボクがマスターにお願いして、23456に特殊な合成を試してもらった所為です」
「フラティア様は?」
「それは……」
ロロは顔を背けて暗に事実から遠ざける。
だけど、ロロの幼馴染はそれだけで全てを悟ってしまった。
「そう……」
薄っすらと涙している。
「ロロの幼馴染……えっと、製造番号23456なんだよな」
「分からないです。なんか、野生のモンスターとして生きていた記憶もあるし、あなた達へ殺意も湧いてくるのですけど」
複雑な表情で俺達を見つめる。
えっと、チェスバヌ。
「でも……私を助けようとしてくれたんだと思って、良いんですよね?」
「ああ、ロロ……23466が自我を失って苦しむお前を辛そうにしているのを見かねて……ね」
「フラティア様から私を奪ったのですか?」
俺は首を振る。
「拝み倒して譲ってもらった。もう、使わないと聞いたから」
俺の問いに、チェスバヌは悲しそうに表情を曇らせた。
「なら……私は所有者の物です。どうぞよろしくお願いします」
「物じゃない」
「え?」
「一緒に、力になってくれるならお前は仲間だ」
チェスバヌは俺を指差しながらロロにパクパクとくちばしを動かして尋ねる。
「こんな方なんですよ。どうか、仲良くしてあげてください」
ロロは微笑んで頷いた。
チェスバヌは俺に視線を戻し、礼儀正しくポーズを取って顔を上げる。
「ではお名前を……」
「勇、三浦勇だ」
「ユウ様、よろしくお願いします。私の名前は――」
「ああ、実は前から決めていた名前があるんだ」
「というと、私を最初から欲していたのですか?」
「不死化薬を投与されていたと聞いてからね。どうにかして助けたくて、その時から考えてた」
「では教えてください」
「ああ、ステアだ」
「ステア……分かりました。どうぞこれから、よろしくお願いします」
ポンッとステアは結晶に戻り、俺の手に乗る。
俺は魔結晶を開いて、使役モンスター欄に乗せた。
即座に実体化したステアは俺の肩に乗る。
「いずれ元のタヌポヌに戻すから今はそれで我慢してくれ」
「いいえ……別にタヌポヌである必要はありません。私は、ユウ様が望む強さの形を取りましょう。ね。23466、いえロロ」
「はい」
二匹は顔を合わせて笑いあう。そこに由利が近づいて、微笑む。
「23456……stairsからステアか」
「日本語に訳すなよ」
「なんでだ? 階段だろ?」
「あーもう……」
「ストレートとかポーカーの役で呼ぶよりマシだろう? 良いじゃないか」
さて、と由利が区切り。
「休憩所に戻るか、ステアの歓迎会をしなくちゃな」
「そうだな」
「はい!」
「楽しそうな方々ですね」
こうして、俺達に仲間が一匹、増えたのだった。




