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魔獣戦記ブレイブスター(仮)  作者: アネコユサギ
異世界、魔物使いになる
1/16

一話

「妙にリアリティのあるダイヴゲームだなぁ……」


 ダイヴ型オンラインゲームが出て五年。


「……そうだな」


 様々なゲーム会社は商売競争、弱肉強食の世界を生き抜き等々、SFの世界に足を伸ばす躍進を見せた。

 確か……ダイヴ型ゲームが出来たのは、五十年前のとある大国の戦争が原因だとか言われている。

 兵士の教育プログラムにFPSを使った仮想現実演習が発端であるらしい。


 当時はとても大きな機材が必要だったのだけど、戦争終結後、面白さに目を付けた国は小型化に着手。日本の技術者と協力して現在の小型ダイヴ端末が生まれたというのは周知の事実となっている。

 SFの世界にあるデータの海の中へと入ることができるのだ。

 もはや現実での距離など無意味に、人はネットの海を渡って意識だけ外国へと行くことが出来るようになってしまった。


 ただ、まだ技術の向上の余地があり、触感が無い。

 夢の中にいるような感覚程度の技術とは誰の言葉だっただろうか。

 うそ臭いポリゴンで形成された世界であったが、確かに……そこに世界があったのだ。

 やがて完全ダイヴゲーム作られが世界的に大ヒット。様々なアップデートを重ね。有名なタイトルの一つとなっている。


 ブレイブスターオンラインという名前だ。

 そして一つの会社がダイヴゲームの開発に成功すれば、その物真似をする会社が現れるのは簡単に想像が出来る。

 俺はその開発競争の果てに出来たゲームをプレイするユーザーの一人だった。



 その日、俺はネットの中をペット型のアバターで探索しながら新しいダイヴ型ゲームを物色していた。

 気まぐれで変えるアバターのデザインはネコをモデルにしたものだ。限定アイテムの王冠を被り、気楽なネットサーフィン中。

 自分で言うのもなんだけど、気に入っている。


「おい……あそこ」

「やだ、四天王――」

「ん?」


 不意にネット内を友人と歩いていると、


「エイウェリアオンライン……」


 本日の正午にサービス開始と書かれた広告に目を向ける。

 無数に存在するダイヴ型オンラインゲーム。

 最近では基本料金無料! とか、アイテム課金は致しません!

 とかを歌い文句にユーザー獲得を目指す、ダイヴが付かなくても変わらない商法のゲームだ。


 俺のオンラインゲームプレイ方法はオープンベータ期間に遊べるだけ遊び、正式サービスと共に撤退するという、些か飽きっぽいものだ。

 ブレイブスターオンラインとネットアバターは別だけど。

 ただ、俺にも持論と言うものがある。


 根底的に、オンラインゲームとは、オープンベータサービス中に如何にユーザーを定着させるかに掛かっている。

 これは過去も未来も変わらない宿命と言えよう。

 そして、この宿命を受け入れて生き残るには、そのゲームの特色をオープンベータサービス中にユーザーに理解してもらう事に掛かっている。


 いずれ実装、始まりから最強。

 みんなを出し抜く新機能!


 こんなのでは絶対に売れない。


 騎乗ペットが存在します!


 どこのオンラインゲームにもあるような機能を売りにするゲームが多いこと多いこと。

 まあ、業界の愚痴はおいておいて、


「どんなゲームなんだ?」

「さあ? 見に行くか?」


 俺はエイウェリアオンラインの広告に触れてサイトに店舗に飛んだ。

 ああ、ちなみに一緒に居る友人と言うのはブレイブスターオンラインで知り合った奴だ。その後はネットアバターという基本ゲームでの対戦相手として仲好くなった。

 前はソロ思考のちょっと痛くて、あんまり強くなかったけど、一皮むけたようで人間的にも成長して強くなっている。


 何があったのかを聞いても答えてくれない。

 今のゲーム内広告と言うのは、ゲームショーの店舗のようにネット内で店が開かれている。

 その店舗にはゲーム内のスクリーンショットが展示され、美術館の絵を見るように俺は店舗内を歩き回る。

 そして店舗から配布された説明書を呼び出し、内容を確認する。


 全てはアナタの決定に委ねられています。


 その一文だけで、店舗内のスクリーンショットと同じ写真がアルバムとしてデータ化してある。


「どんなゲームなんだ?」

「幻想的ではあるな」

「そうなんだよな」


 広告をクリックしたらしき人たちが続々と店舗内を物色しつつ、言葉こそ違えど意味は同じ感想を述べる。

 些かサービスが不明瞭な気もする。

 しかし、スクリーンショットには綺麗な景色やモンスターと戦うプレイヤーの映像。

 そして、職業欄のような物が書き込まれている。


「よく読めないが、一日の暇つぶしにやるにはよさそうなゲームだな」

「まあ、そうだが……」

「お前、暇か?」

「暇と言えば暇だが」

「じゃあ少しやってみよう」

「……わかった」


 無料の会員登録を……って良く見たら管理会社が一度やった事のあるゲームの会社と同じだった。保存されていた登録情報が呼び出される。


 登録情報

 ユーザー(実名) 三浦 勇

 アカウントネーム **********

 年齢 17歳

 性別 男

 住所 **********************************************

 メールアドレス *************************************

 ログインID ***********

 ログインパスワード *************


 サービスを開始しますか?

 はい いいえ


 サービスの受諾を選択。規約に目を向け……というか読み流す。ゲーム内プログラムはサービス中にダウンロードとインストールを行うのが当たり前の世の中である。面白くなかったら、後で端末内にあるプログラムを削除すれば良い。

 ウィルス対策に大切なデータはクラウドシステムが保管している。

 端末なんて一日に一回初期化される世の中だ。

 ポン、っとログインをしてスタートボタンに指を乗せる。


 それではサービスを開始いたします。よろしいですか?

 はい。


 本当によろしいですか?

 はい。


 何だろう。妙に手の込んだログイン承認だ。

 本当に……後悔はありませんね?

 なんだ? 本当に面倒な方法を使っているな。これでは始める奴が減るぞ。

 はい。


 4度目の『はい』を押した俺は、ダイヴ型オンラインゲーム独特のフラッシュに目が眩みながらゲームの世界に入って行く。


「あれ……?」


 薄っぺらい嘘の世界なのにログインするときに風を感じる……?

 本気で認識しないと感じられない錯覚のはずなのに?


「まさか……いや、そんなはずは!」


 友人の表情がアバターなのに焦っているように聞こえた。


「異世界の……」


 これが、まさか異世界の扉だったなんて誰が信じるだろうか……この時の俺はまったく理解をしていなかった。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

今日の10~19時まで一時間更新です。

以降キリの良い所まで毎日更新予定です。

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