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最終話

 私は公式を探さねばならない。

 何故と言えば、それが私の生きる意味だからだ。


 公式を基軸に成り立っているこの世界。例えば放浪癖のある人間が海の端っこまで辿り着き、世界の外へ放り出されてしまうという事案も公式の力が働いているせいで起きているのだ。

 様々な公式が継ぎ接ぎされて成り立っているこの世界は、些か融通が利かないのである。

 私は研究者という立場上、全ての公式を解明し、世界の正体を暴かなければならない。そうして世を改悪するのだ。

 改悪だ。改善ではない。この世の融通の利かぬことは悪のない所にその原因があると言っていい。故に改悪せねばならない。


 世界を荒廃させることに一抹の罪悪感はあるものの、世の中が堕落するということに於いては世間も望む所で、多くの人の意見を前にすれば私の罪悪感などちっぽけなものなのである。出来れば世界に手を下すこちらの身にもなってほしいものなのだが、悪を多くの人が求めているというのならば私は彼らに迎合するしかない。

 現在私が研究させられている不老不死も、悪を求める心がそこにはあるのだろう。


 何にしても全ては公式にかかっている。とは言え、なかなか公式は見つからない。女中にも公式探しを命じているが、見つかったという報告は一向に挙らない。


 私も手元にある絡繰りを駆使して捜索しているが思うような成果は得られていない。


 全く上手くいかないものだ。こんな時、私の愛すべき友人達ならばどうするだろう。公式採掘の現場へと直接出向くのだろうか。行動的な彼らのことだからきっとそうするに違いない。人見知りをするしるべくんだって状況が行き詰まれば行動する。しかし私は行動しない。しているフリをするだけだ。私はここで幾ら研究を続けた所で意味がないと判っていながらも、外へ出ることさえしない。上手くいかないのは私自身のせいなのだ。公式は確かに存在しているのに、私が人との交流を拒み、引っ込んでいるばっかりに何時まで経っても世界の正体は闇の中なのだ。


 己の臆病さを呪いながら研究室の天井を仰ぐ。


 私は何時までここに引き蘢っているつもりなのだろうか。

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