プロローグ
暗い廃ビルの中。1人の女性と3人の男が“取り引き”をしていた。壊れかけた机の上に座っている赤髪の男と、埃を被ったソファーに寝ころんでいる黒髪の小さい男。そして女性と向き合って話をしている長身の黒髪の男。唯一の共通点は3人共とても若いことかった。
「今回はどこなんだ?」
長身の男が口を開いた。この3人の倍ぐらい歳を取っていると思われる女性は、手に持っていた資料を長身の男に渡した。
「埼玉私立城石高校。生徒数325人だ」
10枚ぐらいある書類に目を通している長身の男に向かって女性は言った。
「300人って……。少ないね〜。大丈夫かなあ?」
一番小さな男がソファーに寝転んだまま言った。
「知るか。つか、浅川さん。俺ら2週間前に仕事したばっかなんだけど」
机に座っていた赤髪の男が、長身の男の後ろから資料を覗き込みながら言った。
「そう言うな。依頼があるってのは良いことじゃないか」
「あんたらにとってはな」
長身の男が資料から目を離し浅川と呼ばれた女性のほうをまっすぐ見ていた。
浅川はその言葉には何も返さず軽くため息をつくと続けた。
「その代わり今回の潜伏期間は3日だ。制服などは送っておいたからな。あとは資料に書いてあるからよろしく」
そしてそのまま何も言わずにビルを出て行った。
「俺らはいつまで飼い犬なんかねぇ」
赤髪の男が苦笑いに似た表情を浮かべながらどことなくそう呟いていた。




