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05.ざまぁは??

連載版はタイトルを変更しました!

「そう、私は男だ」


 ライナ様の後ろで、ルート様が頭を抱えるようにして立っている。

 そんな……まさか、王女様が実は、王子様だったなんて……!

 そんなの聞いてない! そんな展開読んでない……!!


「このことを知る者は限られている」


 ライナ様はいつもよりも低い声で続けた。これが地声なのだろう。


「妾の子として生まれた私は、王位継承争いに巻き込まれないよう、女として生きていくことになった」

「女として……?」


 ちょっと待って、それじゃあ二人は浮気してないの!? ざまぁ展開は!?


「日に日に身体つきが男性らしくなってきて、隠すのも一苦労ですよ……」


 観念したかのように、ルート様がぽつりと呟く。


「悪いな。この秘密を知るルートには、いつも助けてもらっている」

「はあ……」


 そう告げられて、ようやく点と点が繋がっていく。


 ああ……そんな。

 でも確かに、もしライナ様が男だと知られれば、ライナ様が第一王子ということになる。

 いくら正妃の子ではなくても、それは争いの元になるだろう。

 でも、だからって……。


「これまで黙っていてすまなかった。君にも言えないことだったんだ……」


 ルート様も一歩こちらに近づき、申し訳なさそうに視線を伏せた。


「だから……着替えも侍女ではなく、あなたが手伝っていたんですね」

「ああ、侍女にも話せないからな」


 ……なるほど。


 コルセットがきついのも、いつも肌を隠すドレスを着ているのも、人前であまりしゃべらないのも、婚約者がいないのも。

 すべて、男であることを隠すためだったのか。


 私はゆっくりと息を吐いた。


「……よく、わかりました」


 二人の浮気現場を押さえて、主人公自らざまぁしようと思っていたのに。まさかこんな展開になるなんて、そんなのあり?

 一体この後どうなるのよ? どうすればいいのよ?

 っていうか銀髪のヒーローは? 私が自分で来ちゃったから、現われないの??


「……このことは他言いたしません」

「よかった」


 とりあえずそのことは約束すると、ライナ様は美しい笑顔を見せた。


「……今後、私にもお手伝いできることがあれば、なんでもおっしゃってください」


 その笑顔に思わずそんな言葉を付け足すと、ルート様がどこか安堵したように小さく息を吐いた。


「マレーネ……」

「……手伝えること、か」


 そしてライナ様は、じっと私を見つめた。

 その目が、どこか楽しそうに細められる。


「それじゃあ――」


 一歩、距離を詰めてきて、にやり、と口角を上げるライナ様。


「ルートとは別れると言っていたな。なら、私と付き合ってくれないか?」

「……はっ!?」


 思いもよらない提案に、思わず不敬な反応をしてしまう。


「で、殿下!? 何を……!!」


 ルート様が慌てて声を上げるも、ライナ様は構わず続けた。


「君はこいつの浮気を疑っていたんだろう? 信用のない男より、私のほうがずっと安心できるぞ? 何せ私に言い寄ってくるのは男ばかりだが、私は男に興味がない」


 不愉快そうに眉をしかめてそう言い放つライナ様。

 まぁ……それは、あんなに美しい王女様(・・・)だと思われているのだから、そうでしょうけど。


「ですが、浮気は誤解で、仕方のない理由があったわけで……」


 本当に、この後は一体どうすればいいんだろう。漫画を最後まで読んでいないから、オチがわからない。


「私はこれ(・・)だから、女性経験がないんだ」


 純真そうな、ウブな視線。少し恥じらいを持たせた声。

 ああ……可愛い。美しい……。

 思わず胸の奥がきゅんと鳴る。


「私の正体を知っている君が、色々教えてくれたら――」


 からかうような、けれどとても美しく、色気のある視線を向けて、また距離を縮めてくるライナ様に、心臓が跳ねる。


「助かるんだけど、な?」

「……!!」


 そして、私の髪を一束手に取り、そっと口づけるようにして甘く囁く。

 本当に美しい方だけれど、その声は確かに男性のものだった。


「殿下!! 彼女は私の婚約者です!」

「……はいはい、わかってるよ」


 ルート様の言葉に、ライナ様はつまらなそうに息を吐き、私から一歩距離をとった。


「本当にわかっていますか……?」


 ルート様はいぶかしげにライナ様を見つめている。それに、なんだかとても不機嫌だ。


 っていうか、ざまぁは? 銀髪のヒーローの出番は??


 ライナ様も、楽しそうに笑っているけれど。


 私は二人を交互に見つめながら、予想のつかないこの後の展開に、頭を悩ませた。




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