04.予想と違う
これはまさに、見事なざまぁ展開。
「マレーネ!?」
予想通り、ぎょっとした視線を私に向けて、驚いた声を上げるルート様。
ふふふ、焦ってる焦ってる……さぁ、浮気現場は抑えたわよ……って、
「え――?」
けれど、目に飛び込んできた光景に、私は言葉を失った。
そこにいたのは、ライナ様の背後に立ち、その腰に手を回し、コルセットの紐を締めあげている、ルート様の姿だった。
……ん?
ちょっと予想していたのと違う。
二人はベッドの上で、あられもない姿になっていると思っていたから。
ルート様はとても焦っているように見えるけれど……服は一切乱れていない。もちろんベルトも、しっかりと彼の腰に締められたままのようだ。
一方ライナ様のほうは、冷静に見える。
「……一体、何をしているのですか?」
「マ、マレーネ、なぜ君がここに……!」
まさか本当に、着替えを手伝っていただけなの?
確かに、そう見える。
けれど、胸の奥に残る、拭いきれない違和感。
どうして、護衛騎士である彼が。
どうして、侍女ではなく、ルート様が――??
それに、ここは二人が浮気をしていて、ざまぁされる展開でしょ? それがお約束でしょう!?
混乱する私に反し、少しも動揺した様子を見せないライナ様が、静かに口を開いた。
「あーあ、見られちゃった」
わざとらしく溜め息をついて、ゆっくりとこちらに近づいてくるライナ様。
その言葉とは裏腹に、そのお顔には余裕の笑みが浮かんでいる。
「ねぇ、マレーネ? このことは、誰にも言わないでほしいんだけど?」
「……っ」
目の前まで迫ってきたライナ様。
間近で見るそのお顔は、本当に美しい……。
切れ長の目、金色の長いまつ毛。高い鼻梁。
女の私でもドキドキしてしまう。この顔で迫られたら、どんな男もいちころだわ。
「殿下!!」
そんなライナ様を、後ろから咎めるルート様。
少し苛ついた様子で、ライナ様に声を荒らげるなんて。やっぱり二人はとても親しい仲なのね……って、あれ? ちょっと待って、なんか変。
「ライナ様、あの……」
「ああ」
王女に感じる違和感を口にしようとしたとき。
「そろそろ限界だったんだ」
「……」
そう言いながら、ライナ様は豊かに膨らんでいる自分の胸元に手をかけた。
そして、次の瞬間。
ぽろり、と。
丸い詰め物が二つ、床の上に、音もなく転がり落ちる。
「……え?」
思わず、私から間の抜けた声が漏れた。
露になった胸元は――ぺったんこ……ううん、それどころか、薄く浮かぶ筋の入り方は、どう見ても女性のものではない。
引きしまった鎖骨ライン。無駄な肉がない肩、腕。そして女性にはないはずの、喉ぼとけ。
布の下に隠されていた、しなやかで鍛えられた身体はまるで――。
「お、男の身体……!?」
「驚いたか? マレーネ・フォークト」
ライナ様はその引きしまった上半身をこちらに向け、堂々とした佇まいで言った。




