28.どう考えてもおかしい
「はぁ……」
会場から戻ってきた私は、寝る前にベッドに倒れ込み、盛大な溜め息をついた。
仮面舞踏会で、やっぱり事件は起きた。
事件というには大袈裟だけど、私にとっては大事件だった。
だって、ついに銀髪の正ヒーローと出会ってしまったのだから。
しかも色々ぶっ飛ばして、いきなり告白された。自己紹介よりも先に、告白された。
……待って待って待って。
やっぱりどう考えても、おかしくない???
最初に、私が漫画の展開通りに動かなかったせい?
本来ならば、もっと早い段階で私たちは出会っている。
ルート様がライナ様と浮気していると思い、落ち込んでいる私の前に、彼は現れる。
そして私を慰め、二人は徐々に気持ちを通わせる。
いきなり告白されるなんて、どう考えてもおかしい。
そしてあの夜会の日、ライナ様と二人で部屋に消えたルート様に、婚約の解消を申し付けるのが――銀髪の正ヒーローだ。(そこまでは読んでいないので、たぶんだけど)
けれど私は落ち込まなかった。
だから正ヒーローが慰めにくることはなく、浮気現場(だと思った部屋)にも自ら突撃してしまった。
結果、浮気は誤解だったということと、ライナ様の秘密がわかったわけだけど……。
私は慰めてもらっていないのだから、銀髪が私を好きになる理由も、ない気がする。
私たちに接点はないのに、彼は〝ずっと君を見ていた〟と言っていた。
つまり、落ち込んで慰めてもらう前からずっと、銀髪は私のことが好きだったということ?
どうして?
……よくあるのは、実は幼い頃に一度会っているだとか、私が知らぬ間に彼を助けていただとか……そういう〝きっかけ〟があったりする。
でも、今世の記憶もちゃんと残っている私に、そんな心当たりはない。本当に、一ミリも。まったく、ない。
「……となると、これはヒロインチート的な? 正ヒーローは絶対にヒロインを好きになるって、決まっているの?」
じゃあ、私は?
正ヒーローに会って、ビビビッとくるものがあったかと聞かれると……。
「別に……ないな」
自分の胸に手を当てて心の声に聞いてみるけれど、ときめきは感じない。
確かに、さすが漫画の正ヒーローだなと思うルックスではあったけれど、それを言うならライナ様も、ルート様も……完璧なルックスの持ち主だ。
銀髪に出会った瞬間、〝運命を感じた〟とは思わなかった。
むしろ、その後のルート様の様子のほうが、ずっと気になっている。
そう、誰がこの漫画の正ヒーローであったとしても、今の私はルート様に惹かれている。
銀髪の正ヒーローに出会ったおかげで、むしろそれを自覚した。
婚約しているのだから、このまま何事もなくいけば、いずれ私はルート様と結婚できる。
「……何事もないことを祈りたい」
そんなことを口に出して、あのとき私の手を握ったルート様の手の熱を思い出す。
正直、それだけで胸がドキドキしてくる。
「でも……」
このまま何事もないとも――思えない。
仮面舞踏会では何かが起きる。
その予想もある意味当たったし。
漫画では、一体どうなったのだろう?
「せめて、それだけでもわかればなぁ……」
もう一度、深い溜め息をついて。
疲れていた私は、そのまま眠りに落ちていった。
今回短めでごめんなさい……ハァハァ(必死)
次回、ルート視点です!




