02.来た、漫画と同じ展開!
その日の夜会で、ライナ様が国王陛下と話をしている、ほんの一瞬の隙を見て、私はルート様に声をかけた。
漫画の展開通りに。
「私と、踊っていただけますか?」
漫画の中で私は、ルート様が私を選んでくれるか、最後の賭けに出たのよね。
その言葉に、ルート様はわずかに目を見開いた。
まるで、私からそんな言葉が出てくるとは思っていなかったかのように。
よしよし、漫画で見たのと同じ反応だわ。
「……はい」
ほんの少しの間の後、ルート様は静かに頷いた。
私から積極的に誘ったことに驚いてはいるようだったけれど、拒まれる気配はない。
ルート様は、いつもライナ様のそばにいる。
けれど、二人が踊ることはない。
だから、やっぱり婚約者は私だし、彼は私を選んでくれた――そう思い、安堵した私が彼の手を取ろうと、そっと指先を伸ばすと――。
「――ルート」
来た!!
低く、静かで、それでいて美しくはっきりとした声が、夜会のざわめきの中を切り裂く。
振り向かなくてもわかった。
ライナ様だ! 漫画と同じ展開!!
「悪いけど、少し来てくれる?」
「はい、ただいま」
迷いのない返事。
ルート様は「後ほど、また」という言葉だけを私に残し、すぐにライナ様のもとへ行った。
私は思わずにやけてしまいそうになるのを、必死に堪えた。
駄目よ、私はこれから婚約者に浮気される、悲劇のヒロインなんだから……!
興奮を抑えて、二人の背中を見つめた、そのとき。
ライナ様がちらりと私を見て、ほんの少し口元を緩めた。
それはまるで、勝ち誇ったようにも、何かを面白がっているようにも見える、静かな笑み。
……ほう。ほほう。
やっぱり、あの女が、婚約者をたぶらかす悪女なのね。
そういう展開ね。わかるわ。
本当はこの後、私は泣き出してしまう。
婚約者が私ではなく、王女を選んだことに絶望して。
そういうかわいそうなヒロインの前に現れる、スパダリヒーローに溺愛される話も好きだけれど……私はどうしても我慢できなかった。
このまま二人の後を追って、私が直接二人をざまぁしたい。
漫画の展開とはちょっと違うけれど。
でも、せっかく主人公に転生できたのよ?
婚約者が王女と浮気するところに突撃するチャンスなんて、もう二度と訪れないかもしれない。
大丈夫。私はこの物語の主人公。最後はハッピーエンドに決まっているわ!
「……よし!」
興奮で震える拳を、ぎゅっと握りしめる。
意を決した私は、一滴も涙を流さず、スキップしてしまいそうなほど軽い足取りで二人の後を追った。




