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11.銀髪のヒーロー

「……」


 今日も、マレーネ・フォークト嬢はライナ様と親しげにしている。

 今日も俺は、出るタイミングを逃してしまった。



 俺の名は、セドリック・エーレンベルク。

 銀の髪に、紫の瞳。

 エーレンベルク公爵家の嫡男だ。

 家柄も、容姿も、立場も――正直に言えば、悪くない。

 だが、婚約者はいない。


 理由は簡単だ。

 俺には、気になっている令嬢がいるからだ。


 マレーネ・フォークト。


 淡い髪色に、やわらかな雰囲気。

 どこか控えめで、それでいて芯のある眼差しを持つ令嬢。


 しかし彼女には、婚約者がいた。

 炎の騎士と称される、ルート・ヴェルナー。


 ……だがその男は、王女ライナ様と親しい関係にあった。


 社交の場でも、夜会でも、いつも隣にいるのはライナ様。

 言葉を交わし、視線を交わし、息が合いすぎている。


 マレーネは、それを見ていた。

 必死に笑顔を保ちながら、胸を痛めていたのだ。


 俺はそんな彼女の心に気づき、決めた。


 マレーネを、悲しみから救おう。

 浮気の証拠を押さえ、真実を突きつけ、そして――。


 俺が、彼女に求婚しよう、と。


 公爵家の嫡男として、誠実に。

 彼女を一人にはしないと、悲しい思いはさせないと、伝えるつもりだった。


 あの日の夜会までは、完璧だった。


 王女と婚約者が、二人きりで部屋に消えていくのを見たとき、


 ついに来た――。


 と、思った。


 これで決まる。

 悲しむマレーネに手を差し伸べ、寄り添い、そして求婚する。


 ……はずだった。


 だが。


 そのときのマレーネは、なぜか浮かれていた。

 泣くどころか、「来た!」とでも言いそうな勢いで、弾む足取りで二人の後を追っていった。


 いや、待て。様子がおかしい。


 今までの彼女なら、視線を伏せていたはずだ。

 胸を押さえ、震えていたはずだ。


 確かに少し、震えていた。

 しかしそれは、悲しみからくる震えには、見えなかった。


 嫌な予感がして、俺も少し距離を置いて様子を窺った。

 部屋に突撃する彼女。

 扉の向こうから聞こえてくる声。


 何を話しているのかまではわからなかったが、なぜか三人で談笑しているのが聞こえた。


 本来なら、泣き声や怒声が聞こえてきてもおかしくない。

 そうなれば、すぐに飛び込もうと思った。


 しかし、部屋の中は想像以上に静かで、和やかそうだった。


 結局その日は、三人で楽しそうに部屋から出てきたため、俺は出るタイミングを完全に失ってしまった。


 さらに、後日。


 それから、マレーネはライナ様の側付き侍女になった。


 ……おかしい。一体、どういうことだ?


 王女とも、護衛騎士とも、距離が近づいたように見える。


 どう考えても、おかしい。


 浮気は、誤解だったのか?

 いや、あの距離感はどう見ても普通じゃない。


 なのに彼女は、落ち込むどころか、日に日に表情が明るくなっていく。


 俺は……俺は、どうすればいいんだ?


 助ける予定の彼女は、自力で事件に突撃し、なぜか当の二人と仲良くなり、毎日楽しそうにしている。


「…………」


 彼女が幸せなら、それでいい……の、だが。


 俺の気持ちは――!?


 浮気をしている婚約者からマレーネを救い、俺が求婚しようと思っていたのに――。


「……出番が、ない」


 今さら現れて、「実はずっと君を心配していた」などと言える空気ではない。


 マレーネが婚約者に馬車乗り場まで送ってもらっているところも見ていたが、二人の仲が破綻しているようにも見えなかった。


 少なくとも、あの騎士はマレーネに気持ちがあるのが、俺にはわかった。


 おかしい。本当に、おかしい。



 マレーネが先輩侍女に呼び出され、人気のない庭で嫌味を言われている現場も、見ていた。


 ここだ――!!


 いじめられているマレーネの前に颯爽と現われ、格好よく彼女を助ける。


 そして、これまでの想いを告げる――!!


 そう思い、張り切って登場しようとしたのだが。


 マレーネは、なぜか楽しそうだった。

 また、自分で立ち向かったのだ。

 彼女は強くなった。そんな彼女もやはり魅力的だが……。

 俺の出番が、ない。


 そうしている間に、先に王女と騎士がマレーネを助けてしまった。


 結局俺は、いつも間が悪い。



 ――こうして俺は、今日もまた、名乗る機会を失った。




不憫な銀髪ヒーロー。ずっと見ていたようです(なんか怖いね( ◜ω◝ )笑

彼も応援してくれたら嬉しいです!!

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― 新着の感想 ―
銀髪仮ヒーロー、めっちゃ不憫過ぎて申し訳ないけど、笑ってしまいましたww
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