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8.最終シーン:平和でゆるい“締め”
夜の王城。
灯火が点々と浮かぶ静かな渡り廊下に、ゆるい風が流れていく。
昼の喧騒が嘘のように、世界はしんと落ち着いていた。
アリアはその廊下の手すりに寄りかかり、小さな水筒を手にしている。
一口、また一口。
気負いもなく、ただ自然に“水を飲む”という習慣を味わっていた。
アリア
「……健康って、魔法よりすごいわよね」
ぽつりと零れた言葉は、不思議なほど静かな夜に溶けていく。
その横顔は、誇らしさと優しさが入り混じり、
そしてどこか遠くの未来を見ていた。
アリアの知らぬところで、
渡り廊下の影――少し離れた場所から、レオンがそっと彼女を見守っている。
レオン(心の声)
(君の“整えた”世界は、きっとこれからもっと穏やかになる)
彼は声をかけない。
今はただ、アリアが作り出したこの平和な光景を壊したくなかった。
アリアは夜風に髪を揺らしながら、水筒をぎゅっと抱える。
アリア
「……よし、明日もちゃんと水を飲ませようっと」
その決意は、世界を救うほど大げさではないけれど、
確かに人々を幸せにしていく力を持っていた。
――悪役令嬢の改革は、今日も静かに世界を整えていく。
*完*




