6.アリア、自分の成果を“たいしたことない”と本気で思っている
午後の陽光が差し込む、アリアの研究室。
机には“水分補給の導入後”の報告書が積まれ、その一番上には大きく――
《魔力事故:ゼロ》
と記されている。
しかし当の本人は、頬をかきながらぼそり。
アリア
「べつに、世界を救ったわけじゃないし……
ちょっと整えただけなんだけどなあ」
まるで“階段の手すりを直した”ぐらいの気軽さで言う声である。
だが周囲の書類はどう見ても国家レベルの改善を物語っていた。
そのとき、軽やかなノックとともにルチアが入ってきた。
彼女はどこか誇らしげに、香り立つティーセットを慎重に運んでくる。
ルチア
「お嬢様。“ちょっと”で世界を平和にできる方は、そうそういませんよ」
にこりと微笑むその表情は、完全に信頼と尊敬に満ちていた。
アリア
「う、うう……褒め過ぎ……」
顔を赤くして項垂れるアリア。
だがルチアはくすくす笑いながら、温かいお茶を注いで続ける。
ルチア
「でも事実ですから。
お嬢様の“ちょっと”は、他の人の“奇跡”なんですよ」
アリア
「やめてぇぇ……そういう言い方……!」
本人は本気で“たいしたことはしていない”と思っている。
だが、積み重なった報告書の成果は――
彼女が誰よりも国を変えていることを、静かに証明していた。




