4.“城全体”のゆるくて幸せな生活描写(モンタージュ)
――王城に、やわらかな午後の光が差し込む。
誰かが大きなくしゃみをする音すら聞こえないほど、空気は清らかで穏やかだ。
●侍女たち
城の厨房裏、昼食の準備を終えた侍女たちが休憩所でお弁当を広げている。
「今日の野菜スープ、すごく美味しかったですね」
「最近、肌がつるつるしてきて……鏡を見るのが楽しくなりました!」
頬を染めた侍女Aが、ぽつりと言う。
「アリア様って……もしかして美の女神なのでは?」
周囲の侍女たちが「それな……!」と妙に真剣にうなずく。
ただ野菜を食べて水を飲んでいるだけなのに、勝手に美しくなっていく不思議。
アリア自身は聞いたら絶対困惑するだろう。
●兵士たち
訓練場では、甲冑のこすれる音だけが鋭く響く。
「いけぇっ!」
「踏み込みがぶれねえぞ!?」
最近の兵士たちは、とにかく調子が良かった。
魔力暴発事故はゼロ。
深呼吸と適度な水分補給で姿勢が整い、剣の軌道はどれも美しい。
「なんか……仕事の効率、良くなってないか?」
「健康って怖ぇな……」
彼らが知らず知らずのうちに「アリア式コンディション調整」を実践しているとは、誰も気づいていなかった。
●魔導師たち
魔導研究棟では、久々に“徹夜明けのふらつき”を見ることがなくなった。
老魔導師が、書庫からゆるりと本を抱えて出てくる。
目の下のクマも薄く、表情はやけに穏やかだ。
「睡眠……良い……。健康……すごい……」
若手魔導師が苦笑しつつも、自分も深くうなずく。
研究の精度は上がり、魔力の枯渇感も減った。
魔導師たちの間では「寝るのも研究のうち」という謎の合言葉が広がっていた。
王城全体が、ほわっとした安らぎと活力に包まれていた。
魔物も陰謀も、今日この瞬間だけはどこにも見当たらないような――
“ただ、健康で平和。”
そんな空気が、城をまるごと優しく満たしていた。




