3.王太子執務室:レオンの体調が最強に良くなっている
午前の陽が差し込む王太子執務室。
机に向かっていたレオンは、ふと手を止めて、掌に魔力を集めた。
青白い光がふわりと揺らめき――まるで湖面のように静かだ。
「……安定している。以前と比べものにならないほどだ」
自分でも驚くほどの、なめらかな魔力の流れ。
深い呼吸をひとつ入れると、胸の奥からさらに澄んだ魔力が満ちてくる。
――その呼吸法が、完全に“アリア式”であることに気づかぬまま。
「殿下、いますかー……って、あ。いた」
そっと扉が開き、アリアが顔をのぞかせる。
「アリア、ようこそ。ちょうど良かった」
レオンは笑みを浮かべ、彼女に近づく。
密かにアリア式の深呼吸をしていたせいか、実に調子が良い。
「殿下、ちゃんと水分摂ってます? 最近忙しいから心配で……。あと寝てます?」
「もちろん。きみのおかげでね」
にこ、と優しい笑顔。
あまりにも自然体で距離が近く、アリアは思わず後ずさる。
「ひ、ひとが来ますよ……っ」
「別にやましいことはしていないだろう?」
「そ、そうですけど……!」
レオンは肩の力を抜いて、もう一度魔力を操る。
穏やかで、ぶれず、迷いのない光。
(……本当に、彼の魔力……安定してきてる)
アリアはひそかに胸の奥でほっと息をつく。
そんな彼女にレオンがちらりと視線を向け、柔らかく言った。
「アリア。きみの教えのおかげで、僕は“最強”の体調を手に入れたよ」
「そ、そんな大げさ……!」
赤くなるアリア。
その反応に満足げなレオン。
王太子の執務室には、魔力の光よりも温かい空気が静かに満ちていった。




