子の“未来への言葉”
夕暮れの中庭には、橙色の光が静かに降りていた。
昼の喧騒が落ち着き、騎士団の訓練音も遠くにぼんやり消えていく。
アリアは資料の確認を終えて帰ろうとしたところで、レオンに呼び止められた。
レオン
「アリア。少し、散歩しないか?」
深い意味はなさそうな、いつもの穏やかな声。
それなのに――なぜか胸がそわつく。
アリア
「え、ええ……少しだけなら」
二人、並んでゆっくりと歩く。
夕陽に照らされた花壇の花々が風に揺れ、
石畳に落ちる影が二人分、長く伸びた。
沈黙。
けれど不思議と気まずくない静けさ。
そんな中で、レオンがふいに口を開いた。
レオン
「最近……考えるんだ」
アリア
「な、何を……?」
レオンは立ち止まり、アリアのほうに向き直った。
その横顔は夕日を浴びて、どこか大人びて見える。
レオン
「きみとなら……王国の未来を、
もっと良くできる気がするんだ」
その言葉は、淡々と、ただ事実を述べるように響いた。
甘い響きでも、過剰な期待でもない。
でも――まっすぐすぎる。
アリア
「えっ!? あ、あのっ、私はただの……健康オタクで……!
そんな、大層なことは……!」
レオン
「うん。知ってるよ」
そのまま微笑むレオンの目は、驚くほど優しかった。
レオン
「だけど、きみの“ただ”が、たくさんの人を救ってる。
僕には……それがすごいことだと思えるんだ」
アリア
「~~~~~っ!!」
頬が熱い。
いや熱すぎる。
絶対に真っ赤だ。
告白ではない。
でも距離が近い。
意味深に聞こえるのに、本人はあくまで“爽やかに言っただけ”顔。
アリア(心の声)
(や、やめて……!
こういうのが一番ややこしいのよ!!
どう受け取ればいいのよ!!)
レオン
「これからも力を借りられたら嬉しいな」
アリア
「……っ、はい……っ!」
消え入りそうな声で返事をすると、
レオンは満足げに頷き、歩き出した。
夕陽の中、二人の影は並んで伸びていく――
それが、未来に伸びる道のように見えたのはきっと気のせいじゃない。




