レオンの“さりげない気遣い”
資料室でアリアは、積み上がった書類の束を抱え上げた。
魔力健康管理室の報告書、ヴァルノの研究計画案、騎士団の姿勢改善記録――
どれも必要な資料だが、まとめて持つには少々重い。
アリア
「ん……っ、これ……もうちょっとで……」
ふらり、と身体が傾いた。
その瞬間だった。
レオン
「危ない」
気づけば、彼の腕が書類ごと軽く支えていた。
アリアの手から重みがふっと抜け、書類の山はすべてレオンの腕の中に収まっている。
アリア
「れ、殿下!? 大丈夫です、私――」
レオン
「重いものは僕が持つよ。
アリアは手を痛めたら大変だろう?」
さらっと、淡々と。
押しつけがましさも、特別扱いの気配もなく、ただ自然に手を差し伸べる。
けれど――自然すぎて、逆に心臓に悪い。
アリア(心の声)
(な、なんでこんな自然に優しいの……!?
この人……紳士力のステータスが高すぎるんだけど……!)
少し距離が近い。
息を呑むほど落ち着いた微笑み。
レオン
「この資料室は足場が悪いからね。
アリアに怪我をしてほしくないだけさ」
アリア
「……っ……あ、ありがとうございます……」
自分でも驚くほど小さな声がこぼれた。
レオンは特に意識した様子もなく、書類を抱えて歩き出す。
けれどアリアは――
(ちょっと待って、心臓がうるさい……!!)
自分の胸がわずかに跳ねたことを、必死でごまかすしかなかった。




