70/99
古代文明の“健康オタク魔法書”が登場
北方遺跡の中心、巨大な石室。
そこで調査隊が慎重に布をめくると――
横たわっていたのは、堂々たる一枚の石板だった。
石の表面には古代文字がぎっしり刻まれ、
魔力を帯びた淡い光が脈打つようにきらめいている。
ヴァルノは震える指で表面をなぞった。
「……これは……! 古代文明“アスレリウス”式の文字体系……!
まさか現存するとは……!」
レオンも身を乗り出す。
「早く解読を」
学者たちが魔力ライトで照らし、
ヴァルノが読み上げ始めた。
「――『一日八杯の水を飲め』」
レオン「ん?」
「――『腸の巡りを整えよ』」
ヴァルノ「ちょ、腸……?」
「――『朝夕、体を伸ばせ』」
レオン「伸ばせ……?」
「――『十分に眠れ、魔力の濁りは睡眠にて晴れる』」
……沈黙。
レオンは石板とアリアを交互に見た。
「これ……生活改善じゃないか?」
「完全に……生活改善ですね……」
弟子がポツリ。
ヴァルノは頭を抱えた。
「古代文明が……“健康特化型”だったと……!?
これは魔術史に革命が……!」
アリアはぽかんと口を開けたまま、そっと石板を見下ろした。
(いや、普通の……健康アドバイスよね……?
なんでこんなに皆、騒いでるの?)
古代の叡智――その実態は、驚くほど“健康オタク”だった。




