ゆる不和シーン ― 水を飲ませたいアリア vs 侍女
ゆる不和シーン ― 水を飲ませたいアリア vs 侍女
生活習慣の壊滅を確認したアリアが、最初に取り組むべき対策として選んだのは――
**「水分補給」**だった。
部屋に戻ってきたアリアは、ちょうどティーセットを片付けていた侍女ルチアに声をかけた。
「ルチア、まずはあなたからよ。
今日、どれくらい水を飲んだ?」
「え? 水……ですか?」
ルチアは一瞬、質問の意味を測りかねて固まり、
やがて思い出したように指を折った。
「ええと……昨夜、徹夜の魔術師様に紅茶をお持ちした際、
余った分を半杯……」
「それ、水じゃないから!!!」
アリアは勢いよく突っ込んだ。
ルチアが「ひゃっ」と肩を跳ねさせる。
「紅茶は水じゃなくて、飲み物だけど水分補給とは別なの!
というか、半杯って……ほぼ飲んでないじゃない!」
「そ、そうでしょうか……?」
完全にきょとん顔のルチア。
その反応がもう、この国の問題点を物語っている。
(本当に……誰も“水を飲む”文化がないんだ……!)
■真剣なアリアの説明
「いい? 水分をこまめにとることで――
・疲れにくくなる
・頭が働く
・魔力の通りもよくなるのよ!」
「ま、魔力が……?」
「そう! 魔法の暴走、寝不足だけじゃなくて脱水も大きいの!
だから、まずは水!」
アリアは熱心にジェスチャーしながら説明する。
しかしルチアは、
“未知の文化に遭遇した人”の顔をしている。
「お嬢様……“水をこまめに飲め”なんて……
そんな奇習、どこで覚えたのですか?」
「奇習じゃないわよ!! 常識よ!!!」
アリアの叫びが部屋に反響した。
■周囲のメイドたちの反応
いつの間にか、廊下で仕事をしていたメイドたちが
ドアの隙間からひそひそしている。
「き、奇習……らしいですよ……」
「貴族が、水を……飲む……?」
「え、水って……飲んでいいものだったの……?」
ざわ……ざわ……。
(ちょっと待って……この国の健康レベル……本当にやばい……!)
アリアは頭を抱えたくなった。
■だが、これが後の大改革の第一歩
ルチアはまだ不安げに水差しを見つめている。
「お嬢様……お腹、壊しませんか?」
「沸かしてあるから大丈夫! ほら、一口でいいから!」
「ひ、一口だけ……」
おそるおそる口に運ぶルチア。
飲んだ瞬間、彼女は小さく目を見開いた。
「……あの……なんだか……頭が少し、すっきりしたような……?」
「でしょ!!!」
アリアの声が勝ち誇ったように弾む。
――この瞬間、城における“水分補給革命”が、
静かに幕を開けたのであった。
もちろん、このときのアリアはまだ知らない。
この“奇習”が、後に国全体を巻き込む
大規模健康ブームの発端となることを――。




